かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ミルシテインが弾くドヴォルザークとグラズノフのヴァイオリン協奏曲

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はミルシテインが弾くドヴォルザークグラズノフのヴァイオリン協奏曲を収録したアルバムをご紹介します。

ナタン・ミルシテイン。この名を知っている人はクラシックファンなら多いかとは思います。確かに大御所ですし。そして其の名は、このドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲で特に有名になっていると思います。

けれども、実は私にとっては初ミルシテイン。実はミルシテインだから借りたのではなく、むしろカップリングのもう一方、グラズノフが入っているから借りたのでした。録音が1957年と、ステレオ録音の時代ではかなり古い初期のもの。オケがピッツバーグ響なので、かなりアメリカが威信をかけたアルバムであることが想像されます。え?なぜそんなことが言えるのかって?

録音技術は、戦前から実は国家的プロジェクトだったのです。なぜならそれは宣伝に使えるから。ですからナチスはフルベンさん指揮ベルリン・フィルの演奏を最新技術で残そうとしましたし、戦後はアメリカとソ連がそのナチス・ドイツから奪った技術で競争したのでした(カラヤンもその渦中にいました)。このアルバムもそんな渦中に録音されたものなのです。

そんな時代に、実はグラズノフ、なんです。しかも演奏はミルシテイン。ピン!と来るものがあったんです。

グラズノフの作品がコンサートピースに乗るようになってからだいぶ経ちますが、それでもまだまだ我が国のプロオケでは演奏機会が少ない作品だと言えるでしょう。そんな中、東西冷戦のさなかに、ロシア系のヴァイオリニストが弾く、しかもグラズノフ、なんです。時代を感じるなあって思います。この時代、まだショスタコーヴィチソ連)が存命なんですよ?なのに、グラズノフ帝政ロシア)、なんです。

ですから、ヴォリュームとしては遥かに多いドヴォルザークよりも、グラズノフに惹かれて借りたというわけだったのです。で、その結果は、とても満足の行く結果でした。まあ、ミルシテインを知っている人にとってはあたりまえの結末かもしれませんが。

ドヴォルザークでもグラズノフでも、とにかく歌うんですね。それでいて、アインザッツもしっかり強い!其の上で、素晴らしいステレオ。なんと美しんだろう!そう、美しんです!それでいて、力強く、生命の歌を感じるんです。私は生きている!と。

ロシア革命の余波で、ミルシテインは最終的にアメリカへ亡命します。そんなアメリカも、一時は東西冷戦の中でロシア人に冷たくあたった時期もあります。そんな渦中を生き延びてきたミルシテインの、生き延びてきた喜びとその手助けをしてくれたすべての人達に対するメッセージのようにも聞こえます。私は生きている。ありがとう、と。

オケのピッツバーグ響も、なんと豊かな音なんだろうと思います。決してそれほど有名とは言えないオケですが、実に芳醇です。指揮するはウィリアム・スタインバーグ。アメリカという国の底力を感じます。この時代、もっと別にビッグネームはいるのに、それほど有名とは言えない指揮者の、なんとステディかつ芳醇なサウンドという解釈なんだろう!本当に驚きます。

日本のオケの苦手な点は、私は歌えないことだと思っています。今は随分変わってきましたが、それでも海外のオケとの違いを一言で言えば、歌っていないという点だと思います。だから演奏がどこか楽譜を追っているだけに聞こえてしまうんだと思います。楽譜から自分たちが何をすくい取ったのかを表現するのが演奏だと思うのですが、其のあたりの指摘が指揮者から少ないか、あるいは指揮者が言いたいことを完全に理解していないかのどちらかだと思います。

この演奏を聴きますと、ミルシテインとオケが対話しているということはもちろん、オケ、指揮者、ソリスト三者が、自分たちが何を楽譜からすくい取ったのかをどう表現するのかのすり合わせができていると思います。だからこそミルシテインはダイナミックな演奏ですし、オケはそれをサポートする芳醇な演奏になっているんだと思います。

今、下手ながらもアマオケでこういった演奏ができるようになってきています。日本のプロオケを批判するよりも、アマオケをどんどん聴きに行くほうが私は日本のオケが歌い始める近道ではないかなあと思います。




聴いている音源
アントニン・ドヴォルザーク作曲
ヴァイオリン協奏曲イ短調作品53
アレクサンドル・グラズノフ作曲
ヴァイオリン協奏曲イ短調作品82
ナタン・ミルシテイン(ヴァイオリン)
ウィリアム・スタインバーグ指揮
ピッツバーグ交響楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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