東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、トン・コープマンが弾くフレスコバルディのオルガン作品を収録したアルバムをご紹介します。
コープマンは有名な指揮者、というイメージが強いと思いますが、実はオルガニストだった、ということで借りてきたのがこのアルバムです。結構バロック作品の演奏を手掛ける方にはこの手は多いのですよね。鈴木雅明氏しかり、ヘレヴェッヘしかり。特にオルガンなど通奏低音を手掛ける演奏者は指揮者という場合も多いんです。
コープマンもその一人です。とはいえ、私自身あまりそのことを気にしていたわけではありません。だからこそ、興味を持って借りてきた、ということだったのです。鈴木雅明氏は好んで聴いても、コープマンはそういえばそれほどオルガニストとして聴いていなかったな、と。
そのコープマンが取り上げているのが、イタリア・バロックの巨匠、フレスコバルディ。声楽曲よりは圧倒的にオルガン作品で有名な作曲家です。
検索するとき、フルネームで検索することをお勧めします。或いは「フレスコバルディ 作曲家」というキーワードで。そうじゃないと他のジャンルが検索結果として出てきます。言い換えれば、それだけ存在感がない作曲家ともいえます。少なくとも我が国では、ですが。
この検索結果が示すように、我が国ではフレスコバルディは必ずしもメジャーな作曲家ではありません。そんなフレスコバルディをコープマンが取り上げる、ということなんですね。そもそもオルガニストですから、当然だと言えます。
収録されているのは、フレスコバルディのメジャーな作品集である「トッカータ集」第2巻、フィオーリ・ムジカーリ(音楽の花束)の二つからランダムに選ばれています。フィオーリ・ムジカーリはバッハも写譜していた作品としても有名です。それだけ、ヨーロッパ中に与えた影響は大きかったと言えます。
「トッカータ集」はトッカータだけでなくカンツォーナも含まれており、世俗曲としての色彩が強い作品集ですし、「フィオーラ・ムジカーリ」はミサに使う作品集で、どちらもイタリア・バロックを代表するオルガン作品集です。その意味では、意図してコープマンは並べている、と言えるでしょう。オルガン曲はキリスト教の神を押し付けるものだ!という批判がありますが、本当にそうなのか?と問いかけるのがこのアルバムの趣旨だと言えます。
たしかに、オルガンが設置されたのは教会なので、どうしても宗教儀式に使われるケースが多いのは確かです。一方で教会はヨーロッパにおいては公会堂のようなコミュニティの中心を担うものでもありました。その二つの側面を考えることが重要だと思います。フレスコバルディのこの二つの作品集は明らかに当時の教会の二つの役割りを反映したものであり、だからこそコープマンは取り上げていると考えるのが妥当でしょう。
コープマンはことさらにオルガンの響きで圧倒するという演奏をせず、あくまでも響きを増大させるという切り口です。会衆が入れば残響は少なくなるというのはコンサートホールと何ら変わりないわけで、だからこそ圧倒的な音場でホールを満たす必要がある、ということを理解していれば、私はさほど問題にしません。キリスト教に関してはもっと問題にすべきことがあるので・・・・・長くなりますのでここでは取り上げませんが。
少なくとも、宗教音楽も世俗音楽も目的が異なるだけで人間に働きかける点では同じです。教会が権力を握らない現代だからこそ、二つのジャンルを並列して聴き比べ、魂で感じてみる、ということが成立するわけで、私たちはその果実を受け取っている、幸せな世代です。そのことに感謝することが必要ではないかなあと思います。
そう、コープマンはフレスコバルディの芸術をあくまでも一人の人間として噛みしめているのですね。その結果が演奏として私たち聴衆にフィードバックされています。
一つ突っ込むとすれば、CDではロケーションがイタリア、アプルレッツ州、ラクィラ、サン・ベルナルディーノ大聖堂となっているのですが、本当だろうかと思うんです。こういった演奏はヨーロッパの古いオルガンを使っていることも多いので検索してみたのですが、この大聖堂が全くヒットしないんです。ラクイラ県だと、コッレマッジョ大聖堂しかヒットしません。
ラクイラ県も広いですし、アプルレッツォ州も広いので、本当にあるのかもしれませんが、州のカタカナが間違っているので、もしかするとどこかほかと勘違いして記載したという可能性もあるかもです。ラクイラ県ではその後大地震も起きている(2009年)ので、すでに倒壊してないのかもしれませんが、大聖堂って、キリスト教だと重要施設なんです。復興しないわけがないと思うんですよねえ。我が国で例えれば、熊本地震で倒壊したので熊本城そのまま放置しています?絶賛復興作業中ですよね。同じことです。
では大聖堂を教会と間違えたのかと言えば、そうでもなさそうなんですが、実は近いケースかも?とは思っています。ですがそれだけラクイラ県から外れるような気が・・・・・
これは、この演奏がどのオルガンを使ったのかに関する重要なデータなんですが、この辺りがいいかげん・・・・・なんか、輸入元仕事してないって思うのは私だけなのでしょうか?CDの記載は重要なデータなので、間違ってほしくないですね。まあ、公文書を改ざんむにゃむにゃ・・・・・
これ以上は突っ込まないでおきましょう。まあ、仕事してねってことです、はい。お願いしますね、各レーベルの担当者様・・・・・
聴いている音源
ジローラモ・フレスコバルディ作曲
トッカータ集第2巻より
①パレットという名のアリア
②トッカータ第5番
③カンツォーナ第1番
④カンツォーナ第3番
⑤カンツォーナ第6番
⑥トッカータ第2番
⑦カンツォーナ第4番
⑧トッカータ第7番
⑨トッカータ第4番
フィオーリ・ムジカーリより
⑩ミサの前のトッカータ
⑪キリエⅠ、Ⅱ、Ⅲ
⑫クリステⅠ、Ⅱ、Ⅲ
⑬キリエ1、Ⅱ、Ⅲ
⑭使徒書簡のあとのカンツォーナ
⑮信仰告白のあとのリチェルカーレ
トッカータ集第2巻より
⑯トッカータ第3番 聖体奉挙のために
フィオーリ・ムジカーリより
⑰聖体拝領のあとのカンツォーナ
⑱ベルガマスカ
トン・コープマン(オルガン)
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