かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:タネーエフ・カルテットによるショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲全集6

東京の図書館から、6回シリーズで、府中市立図書館のライブラリである、タネーエフ・カルテットの演奏によるショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲全集を取り上げていますが、第6回の今回は最後の、第14番と第15番を収録したアルバムをご紹介します。

第14番と第15番は、ショスタコーヴィチ晩年の作品で、特に第15番は死の前年に作曲された作品です。第15番は全楽章12音階という作品ですが、その異様さにむしろショスタコーヴィチが最後の弦楽四重奏曲に込めた想いが伝わってくるんです。

ja.wikipedia.org

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第14番は3楽章制を取っており、一方の第15番は第6楽章まであってしかも繋げて演奏することになっている作品です。しかし第14番は第2楽章と第3楽章はつながっていますし、また第15番はタネーエフ・カルテットは4つに分けて演奏しています。

特に、第15番をタネーエフ・カルテットが4つに分けているというのは、特徴的です。第1楽章から第3楽章をつなげて演奏し、第4楽章~第6楽章は楽章ごとを分けています。特に第15番の初演を務めたのがまさにタネーエフ・カルテットであり、しかもこの演奏は初演から9か月しかたっていないという、まだショスタコーヴィチ存命中に収録されたことが特徴的なのです。

この全集に収録されている作品すべてがショスタコーヴィチ存命中に録音されたわけではありませんが、この第15番はショスタコーヴィチ存命中に録音されたというのが、特徴だと思うのです。それはつまり、明らかにショスタコーヴィチのメッセージを色濃く反映していると言えるからです。

楽譜では通して演奏するように指示があっても、実際には4つに分けてほしい・・・・・それがショスタコーヴィチの本当の指示だったかもしれないのです。確かに、第1楽章はエレジーですし、第2楽章はセレナード、そして第3楽章は間奏曲なので、続けて演奏しても問題はないと思うのですが、第4楽章はノクターン、第5楽章が葬送行進曲(まるでショスタコーヴィチの遺書のよう)、第6楽章がエピローグと、まるで物語の中で一つ一つの章のようです。分けても問題ないように思いますし、実際の演奏を聴いても違和感ありません。

実はこの録音はそもそもは旧ソ連のメロディア盤です。楽譜の指示と実際を変えるということは、当局の目を逃れて発したい何らかのメッセージであるとこちらは受け取る方がいいように思います。そのうえで全楽章12音階を使う・・・・・この上ないメッセージ性の高い作品だと言えるでしょう。しかし、そのメッセージは一体何であるのか?それは私たち聴き手に任されているのかもしれません。僕の人生をふり返ってみて、あなたと何が共通するの?というショスタコーヴィチの「あっかんべー」による問いかけだとすれば、腑に落ちます。

タネーエフ・カルテットは第14番ではかなり強いアインザッツを使っているケースもあるのですが、第15番に関してはそれほど強いアインザッツを使っていません。それは第15番という作品が持つ「振り返り」と「問いかけ」という二つの側面を踏まえた上の様に私には受け取れます。

さて、そんなこの全集ですが、実はメロディア盤のわりには音質がとてもいいんです!この演奏は全部ソニーのDSEE HXを動作させてハイレゾ相当で聴いていますが、クリアな空気感が半端ない!そのために低音部などもはっきり聞こえてきて、その低音部はまるで脈打つ心臓のよう。自分がまるでグリンカ・ホールにいるかのような錯覚に陥ります。それだけ、この録音は旧ソ連が力を入れたものであったとも言えるでしょう。いろんなソ連の事情があっての録音なのでしょうが、しかしタネーエフ・カルテットが演奏することで、ショスタコーヴィチの「秘めた内面」が浮かび上がる結果となっていると思うのですが、どうなんでしょうか。

そんな演奏を、今のロシアの芸術家たちがなし得るか・・・・・それは戦争の行方も左右することなので、注目していく必要があるでしょう。

 


聴いている音源
ドミトリー・ドミトリエヴィッチ・ショスタコーヴィチ作曲
弦楽四重奏曲第14番嬰ヘ長調作品142
弦楽四重奏曲第15番変ホ短調作品144
タネ―エフ・カルテット
 ウラジーミル・オフチャレク(第1ヴァイオリン)
 グリゴリー・ルーツキー(第2ヴァイオリン)
 ヴィッサリオン・ソロヴィヨフ(ヴィオラ
 ヨシフ・レヴィンソン(チェロ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。