東京の図書館から、6回シリーズで取り上げています、府中市立図書館のライブラリである、タネーエフ・カルテットの演奏によるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全集、第3回の今回は第5番~第7番を収録したアルバムをご紹介します。
第5番から第7番の3曲は、1952~1960年の間に作曲されました。その間の1954年に、ショスタコーヴィチは最初の妻ニーナを亡くしています。第5番はニーナが死ぬ前、第6番はニーナが死んで間もない時期(1956年)、そして第7番はニーナが死んでしばらくたって落ち着いた時期(1960年)に作曲されましたが、明らかにニーナをテーマにしたのはそのニーナに捧げられた第7番です。
第5番と第7番が共に3楽章というのも、どこか解放されたいというショスタコーヴィチの叫びが聞こえてくるような気がしますが、特に第7番はとても短い曲でそっけなさすらあります。ようやく言葉を絞り出したかのような・・・・・
この全集は基本番号順に収録されており、ここまでも番号順に来ていますが、第5番~第7番がここにまとまったのはおそらくたまたまでしかないでしょう。しかし、この3曲が、どこかショスタコーヴィチの悲しみを伝えているように聴こえるんです。
同時代性を持つタネーエフ・カルテット。その同時代性という特色から、自然とショスタコーヴィチの「悲しみ」が浮かび上がっているのだとすると、やはりこの3曲にはショスタコーヴィチの底知れない悲しみが内包されていると解釈できるのではないでしょうか。そしてその解釈はタネーエフ・カルテットの解釈でもある、ということです。彼らがショスタコーヴィチの悲しみを譜面から読み取ったからこそ、その悲しみを表現しようとし、私の魂に伝わっているのだろうと思います。
翻って見ると、私自身、母を亡くした時の内面の移り変わりは、この第5番~第7番に近いものがありました。なのですっと共感している自分がいます。だとすれば、やはり第5番~第7番の3曲は、妻ニーナを亡くすかもしれない、亡くしてしまった、ショスタコーヴィチの不安と悲しみを表している、と考えるのが自然だと思います。
抑圧と不安、哀愁、そして悲しみ・・・・・ショスタコーヴィチの魂の叫びが、ここに集約されているような演奏は、「魂をえぐる」という表現こそ適切ではないでしょうか。
聴いている音源
ドミトリー・ドミトリエヴィッチ・ショスタコーヴィチ作曲
弦楽四重奏曲第5番変ロ長調作品92
弦楽四重奏曲第6番ト長調作品101
弦楽四重奏曲第7番ヘ短調作品108
タネ―エフ・カルテット
ウラジーミル・オフチャレク(第1ヴァイオリン)
グリゴリー・ルーツキー(第2ヴァイオリン)
ヴィッサリオン・ソロヴィヨフ(ヴィオラ)
ヨシフ・レヴィンソン(チェロ)
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。