かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:カイベルトとN響の第九

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、ヨゼフ・カイベルト指揮NHK交響楽団他の演奏による、ベートーヴェンの第九を収録したアルバムをご紹介します。

ある年齢以上の方なら、懐かしい名前ではないでしょうか。ドイツの名だたる歌劇場でタクトを振り、実直な音作りで日本でもファンが多い人です。

ja.wikipedia.org

カイベルトは3度日本に来ており、そのうちの1965年に年末の第九特別演奏会を振ったものを録音したのが、この演奏になります。私もカイベルトの名前は知っていたのですが、そのタクトから紡ぎだされる演奏を聞いたことはなかったので、この演奏を借りたのでした。特にこういう古い演奏は府中市立図書館のライブラリの特徴で、神奈川県立図書館に比肩するものです。多摩地域の市立図書館でというのが凄いところで、やはり首都東京は違うと認識させられるところです。

演奏は確かに奇をてらうものではなく実直そのものなのに、なぜか熱いものがこみ上げてくるんです、不思議ですが。エネルギー満載といった感じで、N響も引きずられて素晴らしいパフォーマンスを出しているように思います。

最もうなったのが、常に私が気にする第4楽章Vor Gott!の部分。漫然と聴いていますとvor一拍にGott!5拍の変体演奏に聴こえるんです。しかし実直な音作りをするカイベルトがそう意味もなく奇をてらうことである変体演奏をするはずがありません。実際にはテンポが速いだけでvor1拍にGott!6拍と普通の演奏なのです。

全体的にもそれほどどっしりというか、重々しいものは感じず、むしろ重厚さを維持しつつも前進力を解釈の中心に据えています。ですのでとても速さを感じますし、そのうえで重厚さも感じるという素晴らしい演奏になっています。それにN響がついて行っているのも素晴らしいです。この時代の日本のオケでは奇跡かもしれません。

ロケーションは東京文化会館。まだNHKホールがない時代です。ライヴ録音となっており、その熱気も伝わってくるようです。

さて、この録音もソニーのMusic Center for PCで聴いています。幸い曲順を調整する必要はなく助かりました。そしていつもの通りDSEE HXを動作させてハイレゾ192kHz/24bit相当で聴いていると、本当にホールで聴いているかのような空気感が伝わってくるのです。これはソニーの技術もさることながら、もともとのレコーディング技術の高さを意味します。おそらくライヴ録音で、NHKで放送したはずですから、余計なものがついていないはずなんです。それでその空気感・・・・・当時のレコーディングエンジニアの魂も感じます。この素晴らしい演奏をなんとかライヴ感あふれるものとして届けたい・・・・・

1960年代の日本は、そういう実直な人が多かったように思います。すべての面において実直さが詰みあがったゆえの、奇跡の演奏と録音・・・・・今の日本でも十分通用する、普遍性を持つ音源だと思います。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱つき」
伊藤京子(ソプラノ)
栗本尊子(アルト)
森敏孝(テノール
大橋国一(バリトン
東京放送合唱団
国立音楽大学
ヨゼフ・カイルベルト指揮
NHK交響楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。