神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ブロムシュテットとシュターツカペレ・ドレスデンによるベートーヴェン交響曲全集を取り上げていますが、今回はその第5集です。
最後はやっぱり、第九になるわけですが、ブロムシュテットの第九と言うと、実は私はあまりいい印象がなかったんです。私のブロムシュテット初体験は、年末のN響第九でした。しかも人生初のエアチェック。
その演奏が何となく受け入れられなかったんですね。当時スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリンの演奏のしかもっていなくて、まだまだ子供だったんですね。ですから、ブロムシュテットの指揮の「味」というものが分からなかったんです。
今でもブロムシュテットのよりはスウィトナーのほうが好きですが、かといって遠ざけるほどではありません。N響定期のカルミナですっかり印象が変わって、リズムとアンサンブルのバランスをどう構築していくかが魅力なのだと分かったからです。
ブロムシュテットは、テンポが実は一定ではありません。ある範囲内では収まりますけれど、意外とゆったりと振る場合もあります。この全集では7番以降の作品に関しては、テンポは比較的ゆったりめになっています。かといってアグレッシヴではないのかと言えば、これがアグレッシヴなんです!
故に生命力あふれる演奏になりますが、この第九でも一緒です。4楽章徹頭徹尾貫かれており、少しブロムシュテットとしてはゆったりめのテンポが全く気になりません。
第4楽章でもそれは一緒です。が、この演奏は私が常に問題にする箇所を上げれば、変態演奏です。vor一拍に対して、Gott!は5拍しかなく、残り一拍が残響になっているからです。東独ならではの解釈ですが、ロケーションがキリスト教会だからでもあるでしょう。こういった点は旧東独のオケの特徴となっていますが、その変態ぶりがこれまた違和感ないんですね、ぜんぜん。
合唱団も中心となっているのが歌劇場オケなのに、ライプツィヒ放送合唱団と、旧東独らしい。でもこの実力のある合唱団がいるからこそ、力強くしなやかで、強いメッセージを持つ演奏が出来上がったと言えるでしょう。こういう変態ぶりは大好きですw
問題点をしいて言えば、ソリストにペーター・シュライアーを起用したっていう点でしょう。アンサンブルとしては違和感ないんですが、テノールと言えば第九ではソロの晴れ舞台が用意されています。そこでの力強さに欠けるんですよねえ。シュライアーもちょっと上手に歌おうとしてしまっていて、もう少し思い切り良くてもいいのなあって思います。プロなんですから失敗したとしてもそれほどの事にはならない気がするんですが、どこか失敗を恐れてしまっている点があるんですね。
その点では、私はスウィトナーでのソリスト、アルフレート・ビュヒナーを推します。この人も晩年は美しさと力づよさのバランスが欠けてしまった人ですが、スウィトナーとのセッションの時は万全で、私はビュヒナー以上のテノールのソロを知りません。リアルでCDは40枚程度保有し、図書館でもその半分くらいは借りてきていますが、なかなかビュヒナーを超えるソリストには恵まれていません・・・・・
それだけ、実は第九のテノール・ソロって難しんです。名指揮者の演奏であっても必ずしも満足できるソリストが起用されているとは限りません。かといってそのソリストが下手なわけではなく、第九ではいいパフォーマンスが出せないってことなんですね。このシュライヤーのそうです。他のソリストは抜群!でも、シュライヤーもモーツァルトでは素晴らしいパフォーマンスを見せてくれています。ですからシュライヤーがと言うのではなく、それだけ第九って難しい作品だってことなんです。
それでも、全体的には素晴らしいできです。全集として何を買えばいいの?と言われば、元音源はブリリアントなので、ブロムシュテットとスターツカペレ・ドレスデンなんかはどお?って薦めたいですね。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
ヘレナ・デーゼ(ソプラノ)
マルガ・シミット(アルト)
ペーター・シュライアー(テノール)
テオ・アダム(バス)
ライプツィヒ放送合唱団
ドレスデン国立歌劇場合唱団
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
このブログは「にほんブログ村」に参加しています。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村