かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:バレンボイムとイスラエルとアラブの若人が紡ぐ第九

今月のお買いもの、今回から6回にわたりまして平成26年12月に購入したものをご紹介いたします。まず第1回目は、銀座山野楽器本店で購入しました、バレンボイム指揮の第九です。

第九は、「マイ・コレクション」のコーナーでも散々取り上げましたし、この「今月のお買いもの」コーナーでもかなり取り上げていますから、今更感満載ですが、なぜか12月から1月にかけて、第九がずらっと並びました。

どうやら、第九を買いたいという想いに駆られているように思います。このCDを買いましたのは中大の演奏を聴く前、コア・アプラウスよりも前です。平塚第九を聴く前でもあったと思います。でも、おそらく、おそらく初めて、第九の演奏を二つも聴くと言う経験をする高揚感が自らにあったためと思います。

まあ、それだけではなくて、昨年末の様々な事柄が、私にこのCDを買う気持ちにさせたのだろうと思いますが・・・・・

とは言え、このCDを買うには伏線があります。ちょうどネットサーフィンをしていましたら、youtubeにプロムスの第九の動画を見つけたのです。その指揮が、バレンボイムでした。

https://www.youtube.com/watch?v=sJQ32q2k8Uo&index=9&list=PLF297AA8014DD2050

この音源を見つけた時、本当にガツンを頭を叩かれたような衝撃がありました。実は今回取り上げるCDは、以前から店頭で見ていたのですが、「いや、もう第九はよほど珍しいものでないと」と思い、その都度棚に戻していたのでした。

そしてこのCD、全集からの分売なのですが、一枚が約1000円なのです。ナクソスですら値上げして1200円するこのご時世に、新しい音源で、1000円で買えるものなのです。全集で購入しても、おそらく1万円しないというものなのです・・・・・

かといって、バレンボイムは実はピアニストです。どうもそこが引っかかり、買うのを躊躇していたのですが、それをひっくり返されたのが上記youtubeの演奏だったというわけです。この動画は、今回取り上げるCDよりも更に1年後に収録されたもので、正直言えばこちらのほうが断然いいです・・・・・

しかし、基本的な解釈はほとんど変わらず、CDがどんな演奏かを想像することが出来る、いい材料であるので掲載しておきたいと思います。リンクが切れてしまったらご免なさい・・・・・

この演奏、注目すべきはオケにあります。ウェスト・イースタン・ディヴァン管弦楽団といい、実は中東和平を願って設立されたオーケストラなのです。

ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%EF%BC%9D%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%A3

本拠をスペインのアンダルシアに置き、合宿だけでなく定期的に演奏会も開いているようです。

バレンボイムがこのオケを設立したのには、中東和平にオーケストラだからこそ役割を果たせるという信念があります。オーケストラは団員相互の音を聴きながら演奏する必要があります(それはアンサンブルするものは全てそうですし、合唱も同じですが)。もしそこで、国家同士がいがみ合っているから個人である自分も音は聴かないよととしてしまったら、アンサンブルはどうなってしまうでしょう?読者のアマチュアオケの方であれば、もう想像はつきますよね。崩壊します。だから、聴かなくてはならない。そこに、意味があるのです。

良い音楽をともに作ろうと思ったら、自分の胸襟を開き、相互に聴かねばならないのです。国家間のエゴを手放し、相手を個人として尊重し、ともに共同体を作りあげていく。それがオーケストラです。でなければ、指揮者の支持も徹底されず、ましてや自分のパフォーマンスも充分発揮することが出来なくなります。それでいい音楽が出来るわけがありません。そんな演奏を、私はかつて様々なアマチュアオケの演奏で聴いてきましたし、また合唱団の一員としてともに経験もしてきました。だからこそ、バレンボイムが意図することを、直感的に理解したのです。

これを避けていたなんて・・・・・自分は何て愚かだったのだろう。今回は即座に手に取りました。ちょうど、イスラム国が跳梁跋扈している昨今、この演奏を聴かずしてどうする?とも思ったのです。

このCDでは、多少アンサンブルに乱れが見られますが、さほどではないですし、ましてや下手なアマチュアオケの聞くに堪えないレヴェルでは決してないので、どうか安心してください。若いな〜と思う程度です。それは視点を変えれば、如何に第九という作品が難しい曲なのかを、聴き手にはっきりと再認識させてくれるということなのです。

一応、彼らはプロです。しかも、イスラエル以外の国の団員は、演奏する機会すらほとんどないのです。かといってレヴェルが低いわけではなく、経験が足らないという人たちです。その人たちに、機会を提供し、その機会によって成長することが、平和に資することを目的としています。

しかも、この演奏、バレンボイムは変態演奏全開です。つまり、第4楽章vor Gott!の部分、vor一拍に対し、Gott!は8拍伸ばしているのです。二拍長い・・・・・明らかに変態演奏です。それはそれだけ、バレンボイムがこのオケで第九を演奏するという事に、思い入れが強いことを意味します。

実は、バレンボイムは以前、シュターツカペレ・ベルリンを指揮して第九を収録しています。現在廃盤となっているようですが、実はそれを長い間買いたいと思っていたのです。なぜなら、そのテノールエバーハルト・ビュヒナーで、なおかつ、合唱団がベルリン放送合唱団だったからなのです。そう、この組み合わせ、以前私が「マイ・コレ」でご紹介した、スウィトナーが指揮したものと一緒なのです。同じ組み合わせを、バレンボイムはどう演奏するんだろうと言う興味をずっともっていたのですが、ついに買わずじまいでした・・・・・

今回、全く別なオケ、ソリスト、合唱団で聴いてみますと、バレンボイムスウィトナーとは少し解釈が異なりますが、基本的に端正さを前面に押し出すことでは一緒です。若干テンポがゆったりなので、スウィトナーと比べれば緊張感という点で劣りますが、喜びの解放感という点では、むしろ勝っているくらいであると言えるでしょう。特に、練習番号Mの部分は、壮大で壮麗、かつダイナミックな演奏で、人の連帯、繋がりというものの霊的な部分を、実に喜ばしく表現していると言えます。

大編成オケを十分に鳴らすことで、第九という作品が持つ大きさ、深さというものを、存分に聴き手に味あわせてくれる、素晴らしい演奏だと思います。それは団員がこのオーケストラで、十分国家の垣根を越えて、分かち合い、聴きあい、尊敬しあって、自分のパフォーマンスを存分に開放した結果であろうと思います。団員から引き出したバレンボイムに、脱帽です!変態演奏は明らかに、そこからいずるものであると判断できるからです。




聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
アンナ・サムイル(ソプラノ)
ワルトラウト・マイヤー(メゾ・ソプラノ)
ペーター・ザイフェルト(テノール
ヴォルフガング・コッホ(バス)
ケルン大聖堂ヴォーカル・アンサンブル(合唱指揮:エバーハルト・メッテルニヒ
ダニエル・バレンボイム指揮
ウェスト・イースタン・デヴァン・オーケストラ
(Decca UCCD-9884)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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