かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ケーゲルの「第九」

今回のマイ・コレは、ケーゲルが振った「第九」です。

ケーゲルとは、クラシックファンでは「ケーゲル党」とも言われる熱烈なファンがいる旧東独で活躍した指揮者です。

ヘルベルト・ケーゲル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB

そして、彼は数多くの合唱曲を録音に残している指揮者でもあります。いずれ県立図書館のコーナーでご紹介しますが、彼は特に宗教がアヘンと言われていた社会主義国の中で珍しく古典派の宗教曲を収録していた珍しい人でもあります。

その理由が、ウィキの説明でわかりました。幼いころ聖十字架教会の聖歌隊に所属し、さらに指揮者としてのキャリアはライプツィヒ放送合唱団が最初だったということです。

これは彼にとってとてもいい経験だったことでしょう。初めピアニストとして活きようとしていた彼ですが、第二次大戦によって負傷したことでその夢は断たれるわけですが、ピアニストはどうしても声楽系のフレージングを無視してしまう傾向があります。

伴奏ピアニストですとそのあたりをよくわきまえていますが、独奏ピアニストですとどうしてもピアノを弾くことですべてを判断しがちなのです。そこで「息を吸う」という作業も必要な声楽系とのずれが生じることが多いのです。

これは私も合唱団に入っていた時代、団でよく見かけたことなのではっきりと言うことが出来ます。それが抜けない指揮者ですとこれがなかなか大変でして・・・・・

ケーゲルはその点、みっちりと下積み時代に声楽とはこういうものなのだということを鍛えられたはずです。さらに彼自身幼いころに合唱をやっていたことで感覚的に声楽のフレージングを理解していたことでしょう。彼の声楽曲の指揮を聴きますと、とても息継ぎを考えた指揮をしているのがよくわかります。

ケーゲルと言えば、爆演系にカテゴライズされることもしばしばですが、確かにそういった演奏は数々残されています。しかしこと声楽曲に関して言えば、そういった爆演でも、息継ぎを考えた指揮をしていることがよくわかる演奏ばかりなのです。

この第九でもそれは顕著で、第1楽章から第3楽章はある意味私が好むスウィトナーと同じでありながら、テンポはそれほど爆演していません。むしろ端整です(アーティストもスウィトナーと重複するだけに比較もしてしまいますが)。それが第4楽章になりますと息継ぎを重視した指揮に変わります。歌わせる部分やロマンティックな部分でも、それは実は息継ぎなど声楽のフレージングを重視した結果であることが、合唱経験がありますとよくわかるのです。

その点でケーゲルを評価している人はあまりいないように、少なくともネットで検索した限りでは思われます。ケーゲルの真価は実はそういった「フレージングを意識した指揮」にあると私は思います。

社会主義思想を持っていたとされる彼ですが、この演奏や数々の合唱曲の指揮からしますと、いわゆる「左翼」だったのかなあと疑問に思う点がいくつかあります。むしろ修正社会主義者だったのではないかと思われる節も演奏からはたくさんあります。彼はずっとそういった種を、旧東独で蒔き続けて、ドイツ統一へと向かわせた一人だったように思います。ただ、統一が事実上西独に吸収されることを一人の愛国者として嘆いていた・・・・・そういうことだったのではないかと思います。

このCDでも特に第4楽章は熱いものがあります。ティンパニの鳴らし方からしてもそういったケーゲルの熱き血潮を感じますし、それはある意味だんだん第4楽章へと気持ちが高まってゆく様を見ているかのようです。この演奏では結構抑え気味だと思うんですが、それでも抑えきれない気持ちの高ぶりがそこかしこにちりばめられています。

ケーゲルはもっと合唱曲でこそ、評価してあげたいなと思います。それは実はこのCDを買った時にはあまり気づかなかった点なのですが、うすうす感づいていたことではあるのです。しかしそれが県立図書館で借りてきた演奏で確信に変わった自分がいます。

今度はそういった点を、別コーナーで語りたいと思います。多分、順番からしますと来年あたりを予定をしています。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
アリソン・ハーガン(ソプラノ)
ウーテ・ヴァルター(アルト)
エーバーハルト・ビュヒナー(テノール
コロシュ・コヴァ―チュ(バス)
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:ディートリッヒ・クノーテ)
ライプツィヒ放送合唱団(合唱指揮:イェルク・ペーター・ヴァイグレ)
ヘルベルト・ケーゲル指揮
ドレスデンフィルハーモニー管弦楽団
(DENON Prominent1000 COCO-78674)


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