かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:カラヤン ベルリン・フィル ライブ・イン・東京1977

今月のお買いもの、3月に買ってきてまだ紹介していないものを取り上げています。今回は新宿ディクスユニオン新宿クラシック館にて購入しました、カラヤン/ベルリン・フィルが1977年に来日した時の演奏を取り上げます。

実はこのCD、以前から狙っていたもので、新譜で買う予定でいたのですが、すでに中古市場に出回っていることからできればディスクユニオンで購入しようと思っていたものです。

このCDの特徴は、そのマスターテープをTokyo FMが持っていることから、Tokyo FMから出ているという点です。会場はかつてはクラシックの演奏会会場としては大きな会場として知られていた、普門館。クラシックファンからすれば、2年後の79年来日のドイツ・グラモフォンの盤を知っている人もいらっしゃると思います。

私は実は普門館での演奏のものを欲しいと思ったことはありません。それは会場が某宗教団体の保有であるからではなく、単純に残響の問題と、カラヤンの第九が以前はあまり好きではなかったからです。しかし、昨年あたりからこのCDだけはぜひともと思いました。その主な理由がまさしくTokyo FMの音源という点なのです。

FMのクラシック番組といえばNHKというイメージがあるかと思いますが、民放であるTokyo FMも細々ながら「SYMPHONIA」というクラシックの番組を持っています。以前はもっと多かったのですが、最近は早朝のこの一つだけとなってしまいました。朝が苦手な私にとっては、まず聞いたことがありません。

http://www.tfm.co.jp/
※ここから、SYMPHONIAを探してください。

ですので、実はTokyo FMも数多くのクラシックの音源を持っていることは、以前からオーディオファンの間では知られていましたし、実際私は夜に放送されていた番組は何度か聴いたことがあります。

そして、もうひとつこの音源と思った理由が、合唱団が日本プロ合唱連盟と東京芸術大学合唱団という、日本の団体であるということが挙げられます。全体的な印象としては、カラヤンは合唱団の実力を見事に引き出すどころか、日本の合唱団は当時すでに世界レヴェルであったということを天下に知らしめる結果となっている一枚だと言えます。

まず第1楽章はカラヤンらしい快速テンポで入りますが、第2楽章はそれほど速いわけではありません。楽章が進むにつれ、テンポはだんだん下がっていきます。実はこれは、私はすでにスウィトナー/シュターツカペレ・ベルリンで聴いているマネジメントです。それほど驚くに値しません。

其れよりも、第4楽章での合唱団の秀逸さが光ります。特に、二重フーガの後のソリストの予定調和の部分で、オケが先走るなか指揮をよく見て合唱団だけはテンポを守っている点は、さすが組織でやるものでは強い日本人の真骨頂を見ることが出来ます。ブックレットでカラヤンが合唱団を高く評価しているという記述がありますが、それはほぼ間違いなくこの部分からだと私は想像しています。

発音部分では確かに日本人的ですが、アンサンブルも素晴らしく、その上基本に忠実。だからこそ、テンポが全く乱れないわけなのです。ベルリン・フィルウィーン・フィルは最近・・・・・などという論調も一部にあり、しかも日本も最近はなどという意見もありますが、では合唱団もおなじなの?と投げかけますと答えが返ってこないことは誠にさみしいものがあります。この録音をぜひ聴いていただきたい。確かに、アンプが逝ってしまったというアクシデントで再生装置としては不十分かもしれませんが、日本の合唱団がいかに当時から素晴らしかったかがよくわかるCDです。

そう、日本の合唱団は素晴らしいのです。しかし、宗教曲に対する偏見や合唱を卑下する風潮から、日本の合唱団の実力はほとんど顧みられていません。カラヤンはそんな中きちんと「国際基準」で日本の合唱団を高く評価したのです。

その最大の立役者を、カラヤンは見事に見抜いています。合唱指揮者は田中信昭。東京混声合唱団の指揮者としてのほうが有名です。

http://homepage3.nifty.com/TOUKON/conductor.htm

ブックレットでも、この演奏会の当日(1977年11月18日)に終焉後カラヤンはカーテンコールで合唱指揮者を舞台にあげたとあります。カラヤンはキャリアの中で歌劇場を若いころ経験しています。その経験から、合唱がいかに音楽の基礎かを知り尽くしていると思います。カラヤンは守備範囲が広いことで有名ですが、宗教曲も積極的に取り上げていることは案外スルーされてしまっています。

ヘルベルト・フォン・カラヤン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%A4%E3%83%B3

このCDは、そのカラヤンがいかに声楽を重視していたかが分かる一枚とも言えるかと思います。第4楽章をとにかく急がず、ゆったりと振っているのにはカラヤンがフレージングを重視し、合唱団に息継ぎがしやすいよう配慮した結果だと思います(速いほうが息を吐くには楽なのですが、その分息継ぎも大変になるからです)。それは私が常に問題にする、vor Gott!の部分で楽譜通りvorを一拍としてGott!を六拍伸ばしていることからもうかがえます。この曲は交響曲ですが、同時に声楽がオーケストラに入っていることを考慮している結果でもあるのです。

その点で、このCDは重要な一枚だと思います。なぜ保有していた方は放出してしまったのだろうと、私としては首をかしげてしまいますが、とにかく感謝はしないといけないでしょう。それが私の手に渡り、日本の合唱団の実力が日の目を見たのですから。

こういった演奏にNHKだけでなくTokyo FMが当たるというのも何かの縁でしょう。オケの演奏だけに興味がある方にとってはテンポが揺らいでいるベルリン・フィルは高評価ではないでしょうが、合唱に興味がある私にとっては、このCDはまず中古市場に出すことはない、大切な一枚となりました。

日本が「一番でなければいけない!」と思っていらっしゃる方は、是非とも買っていただきたく思います。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)
ヘルイェ・アンゲルヴォ(アルト)
ヘルマン・ヴィンクラー(テノール
ハンス・ゾーティン(バス)
プロ合唱連盟
東京藝術大学合唱団
(合唱指揮:田中信昭)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(Tokyo FM TFMC 0029)



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