今月のお買いもの、平成26年12月に購入したものをご紹介しています。今回は銀座山野楽器にて購入しました、ティーレマン指揮ウィーン・フィルの第九を取り上げます。
此れも実は、youtubeで見て良かったため購入したものでした。特にいいなと思ったのは、やはり第4楽章のにあります。特に、男声合唱が終わってからの激しい部分です。
vor Gott!の部分は特に変態演奏ではないんですが、そこからが熱いんです、この演奏。そのため、消されないうちにと思い、CDを購入したのです。
第1楽章から第3楽章までは、それほど特徴があるというわけではありません。熱演というよりも、第九という作品とがっぷりよつにくみ、真正面から誠実に向き合った演奏で、一言でいえば端正です。
それが、第4楽章で一変します。ティンパニはややぶっ叩き気味と言った感じで、それほど激しくはありませんが、それ以外の楽器はここからヒートアップ。まさにそれまでの3楽章をいったん否定するに十分な解釈です。
合唱が入るとさらヒートアップして、演奏は端正さよりも情熱が勝り始めます。しかし、vor Gott!の部分はきちんとティーレマンは手綱をひき、vor1拍につきGott!は6拍伸ばさせています。これは楽譜通りです。その後男声合唱の最後からテンポアップして、練習番号Mで最高潮を迎えます。
二重フーガは幾分速めで、その速めを比較的保ったまま、最後へとなだれ込みます。ですので、全体的にはとても暑い演奏という印象になっています。
ティーレマンという指揮者はよく、ドイツ正統派の指揮者という言い方をされますが、かといってこの演奏には重厚さよりは、壮麗さと美しさが存在し、その上で人間の霊的喜びを存分に表現しています。それはもしかすると、オケがウィーン・フィルであるということと無関係ではないように思います。
同じようなケースを、実は私はこのブログで取り上げているんです。それは、カラヤンとウィーン・フィルのモツレクです。カラヤンは外的美を追求していると言われ、アンチカラヤンファンの人たちからは攻撃の対象となりますが、私もずいぶん同様に思っていました。しかし、当該エントリで私はこう述べています。
「一方で、モーツァルトの短調曲の美しさの極地を見せてくれます。入祭唱とキリエ、そしてその音楽が使われているコンムニオ「絶えざる光もて」。特にフーガの部分は美しく、かつ躍動感に満ちています。快速指揮カラヤンの面目躍如ですね。いくつかほかの演奏をCDで持っていますが、この演奏に匹敵するものはCDではなかなか今でも見当たりません。ヴィデオでは、N響の定期演奏会のものが匹敵します。
特にこの演奏で秀逸なのが、その入祭唱と、続く「怒りの日」。速いテンポとフォルテのまま突っ込む解釈。これはとても譜読みをしているなと思います。今はもう手元にありませんが私は歌ったこともあることから、この部分はヴォーカルスコアでどんな指示があったか覚えています。
よくある演奏が、途中pにするものですが、カラヤンはそれを一切せず、フォルテのまま突入します。それには眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれませんが、歌ったことのある私としては、このカラヤンのようにしてくれないと「嫌」なのです。なぜなら、楽譜には一切音を絞れという指示はないので・・・・・
楽譜のままフォルテで突入すると、どのような音楽になるか、カラヤンが明確に教えてくれています。まさしく、怒りの日らしい、荒れ狂う音楽です。
つまり、とことんノーマルにこだわった演奏なのです。カラヤンがそういった解釈をする人なのだと教えてくれたのが、実はこの演奏だったのです。もちろん、この一枚を買った時からそれがわかったわけではありません。実際自分が歌ってみて、楽譜を広げて、初めてそれに気が付いたのです。なんとカラヤンは余計なことをしていないんだろう・・・・・なのに、これほど悲しく、胸が痛む演奏になる・・・・・
その後、私のカラヤン嫌いは徐々に変わって、今では「カラヤンなら大丈夫」に変わっています。なぜクラシック入門者にはカラヤンがいいのか、それはいくつか理由があると思いますが、私の経験からしますと、それは彼が余計なことをしていないからだといえると思います。」
マイ・コレクション:カラヤン/ウィーン・フィルのモツレク
http://yaplog.jp/yk6974/archive/438
それと同じようなことが、このCDの演奏でも起こっていると言っていいでしょう。ティーレマンがドイツ正統派の重厚な演奏をする人であっても、ウィーン・フィルの豊潤な音が、それを重々しくさせず、むしろ壮麗さを現出させることに成功していると言っていいでしょう。
実は、この演奏の合唱団はウィーン楽友協会合唱団ですので、それほど人数はおおくありません。それでも、アインザッツをそろえるだけで、熱く、しかし壮麗で美しい演奏が実現できてしまう。それを見事に証明してみせたと言えるでしょう。その意味では、外的美を追い求めたカラヤンを超えたと言ってもいいのではないでしょうか。
その意味では、この演奏はティーレマンが楽友協会合唱団の実力を見事に引きだしたとも言えるでしょう。つまり、楽友協会合唱団はそれほど人数が多くないにもかかわらず、ウィーン・フィルはそれなりに第九なので人数が多い編成となっています。本来であればバランスが崩れるところを、みごとに絶妙なバランスを取って見せ、人が霊的なつながりを持った時の喜びを、生き生きと表現しています。
こういう演奏に出会えるのはとても幸せですね。第九のCDは本当にたくさん買ってきましたが、かといってこういう演奏にはなかなかお目にかかれることなどありません。たまたま検索してであった演奏ですが、さすがウィーン・フィルとだけ見てしまうと、この演奏の本当の素晴らしさ、そして指揮者とオケ、ソリストと合唱団がこの演奏で「伝えたいこと」をもしかすると見逃してしまうかもなーと、思っています。
聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
アネッテ・ダッシュ(ソプラノ)
藤村実穂子(アルト)
ピョートル・ベチャーワ(テノール)
ゲオルグ・ツェッペンフェルト(バス)
ウィーン楽友協会合唱団(合唱指揮:ヨハネス・ブリンツ)
クリスティアン・ティーレマン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(Sony music Japan SICC 30023)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
このブログは「にほんブログ村」に参加しています。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村