かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:オーケストラ・ダズビダーニャ 第18回定期演奏会1

今月のお買いもの、3月分でご紹介できていないものを取り上げています。今回はオーケストラ・ダスビダーニャの第18回定期演奏会のCDです。

先日、このオケの第19回定期演奏会のコンサート評を書かせていただきました。

コンサート雑感:オーケストラ・ダスビダーニャ第19回定期演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/930

その時に、実はその前の年の演奏会を収録したCDを購入していまして、それが今回取り上げるCDです。

ダスビと省略させていただきますが、ダスビのCDは店頭では売っていません。年一回の定期演奏会の時以外は購入することが出来ません。ですから、このCDはとても貴重なものなのです。

通常、ある団体のコンサート会場へ行って、CDが売っていても店頭に並んでいるものがあれば私は簡単には買いません。予算的に余裕があれば買うことも有りますが、必ずしも余裕があるとは限らないからです。たいてい国内盤であることが多いからで、そのため予算をオーヴァーすることがしばしばなので、購入は余裕のある時へと先送りするからです。

私もダスビのCDは通販では売っているだろうと思い、会場のブースへ足を運びました。前半の演奏がとてもよかったからです。ところが、ブースで帰ってきた答えは、通販も行っておらず、年一回のコンサートの時のみの販売となっているというものだったのです。

これは悩みました・・・・・予算は実は、すでにほとんど使い切っていたからです。残り1500円ほど・・・・・それを、横浜関内プレミアムジークでの購入に充てるつもりでした。それを悩みつつ、レアであるダスビのCDの購入に踏み切りました。値段は3500円。2000円のオーヴァー。

しかし、結果的にはこの決断はよかったと思っています。ダスビの演奏は、再びまた聴きたいと思うほど、レヴェルが高いからです。遠方からもわざわざ聴きに来られる(そして、CDを買っていかれる)熱狂的なファンがいるのもうなづけます。

ダスビのCDのいい点は、常に演奏会の演目がそのままCDになっている点です。たとえば、以前取り上げた日立フィルなどは、CDの時間の都合上他の演奏会のアンコールなどをカップリングにしてしまうことがありますが、このダスビのCDは第18回の演目が演奏順に収録されていまして、まさしくコンサートが再現できるようになっているのです。

つまり、来年のダスビの定演へ行かれて、今年のCDを買えば、私が上記エントリであげたコンサート評との比較ができるというわけなのです。これは情報発信の担い手である私にとってもいいことであり、いい意味での緊張感と責任感を持って文章を書くことが出来ます。私のコンサート評がいい加減なものなのかどうかが、一目瞭然であるという点がいいのです。

それだけではなく、ある年行けなくても、翌年行ければCDで聴くことが出来るというのも、嬉しいことだと思います。この演目は聴きたかったのだけれど、予定が合わなくて・・・・・となっても、いいや、来年CDを買おう!となればライヴへ足を運ぶ気持ちになります。

マチュアなのに、自己満足だけで終わっていないという点がそうさせているのだと思いますが、アマチュアオーケストラでここまでやることを、是非ともプロも見習っていただきたく存じます。

さて、このCDは2枚組になっていまして、まず1枚目は前半の2曲が収録されています。まず1曲目はアニメ映画「司祭とその召使バルダの物語」の音楽 作品36から抜粋です。こういった作品を持ってくるあたり、さすがショスタコーヴィチ専門のオケだなあと思います。なぜなら、ショスタコーヴィチが手掛けたジャンルの中で重要なもので、映画音楽があるからです。

ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
映画音楽
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81#.E6.98.A0.E7.94.BB.E9.9F.B3.E6.A5.BD

ロシアはアニメでも秀逸なものが多いことで知られていますが、それも旧ソ連時代は体制に翻弄された歴史を持ちます。この作品もそういったものの一つで、音楽はショスタコーヴィチによって完成されたのですが、使われるはずだったアニメ映画は実は未完で終わっています。

ショスタコーヴィチ:アニメーション映画音楽<司祭とその下男バルダの物語>
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81-%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E6%98%A0%E7%94%BB%E9%9F%B3%E6%A5%BD-%E5%8F%B8%E7%A5%AD%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%B8%8B%E7%94%B7%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%80%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E/dp/B000FPWXBE
※全曲が載っているのがこのアマゾンのものしかないことが、いかにダスビが世界レヴェルのオケかの証明となっています。ネットに解説サイトやブログすらない・・・・・

ユーリー・ノルシュテイン
http://www.animations-cc.net/interview/i018-norstein02.html

原作はプーシキンという、とても上質の作品である上に、ショスタコーヴィチが作曲した曲の題名から私たちが見れば反体制とは言いがたいものが並んでいるにも関わらず、それでもこれは制作途中で上演禁止とされてしまうのです。1935年の作品で、ショスタコーヴィチがまだ20代。体制側の音楽を数多く書いていた時代ですが、こんなあたりからすでに検閲等でショスタコーヴィチが関わる作品が規制を受けていたことが分かります。それは、その後精神的におかしくなるだろうと思います。

ダスビはそれを知っていてなのか、その次の演目には弦楽四重奏曲第8番をルドルフ・バルシャイ弦楽合奏用に編曲した、室内交響曲作品110aを持ってきています。この曲の題名は「ファシズムと戦争の犠牲者の想い出に捧げる」であり、それはショスタコーヴィチ本人のことを指すと言われています。

弦楽四重奏曲第8番 (ショスタコーヴィチ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC8%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81)

ショスタコーヴィチ自身のイニシャルが音名「D-S(Es)-C-H」で織り込まれ、自身の書いた曲の引用が多用されることにより、密かに作曲者自身をテーマにしていることを暗示させている。」

1プロでコミカルな音楽を聴いて、2プロめでシリアスな音楽へと変わったと多分私もライヴで聴いたときにはそう考えてしまうことでしょう。しかし、調べながら聴きますと、ダスビがこの二つを並べたのは決して偶然ではなく、明確なメッセージを持っているとわたしは思っています。それは、依然として残るショスタコーヴィチへの政治的な評価です。

確かに、彼は体制側の音楽を数多く書きました。若いころは確かにそれは本心だったことでしょう。しかし、弾圧を受けるにつれて、彼は反体制へと舵を切っていきますが、それを決して悟られないようにするのに必死でした。橋下さんがよく言うキーワード「面従腹背」を貫いただけです。まだ橋下さんのように民主主義を理解している人ならショスタコも幸せだったことでしょう。問題はそれが旧ソ連では時として恣意的だったということです(これについては、数多く本が出版されていますので是非一度ご一読くださいますよう)。

これは服従するほうはたまりません。空気を読むより難しい「生き方」を強いられるのですから。しかも悲しいことに、ショスタコーヴィチは決して社会主義を否定しているわけではないのです。ただ、その中で本来認められるはずのものですらなぜ認められないのかということから、体制への不信感が募ってくるわけです。

ショスタコーヴィチの音楽やその人生からは、なぜソ連は崩壊したのかの一端が見て取れます。それがすべてではないですが、明らかに本音と建前があまりにも違いすぎたことから、国民の信頼を失ったということが見え隠れするのです。それはイデオロギーを超えて、資本主義である我が国の、現在の政治・社会状況を映す鏡にもなっています。

それを、ダスビは素晴らしいアンサンブルで表現しています。アマチュアオーケストラにありがちなアインザッツや出だしが合わないなんてことはありません。アンサンブルが崩壊しそうなことも有りません。プロオケを聴いてよくある、端整な音が空気の塊となって明らかに聴こえてくるのです。しかも、ppからffをきちんと演奏しきっていますし、ダスビに関してはプロオケと同じ土俵で評価してもいいくらいだと思います。だからこそ、ショスタコーヴィチがこの二つで訴えたいことを素直に音楽で持って私たちに伝えることが出来ているのではないかと思います。



聴いているCD
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ作曲
アニメ映画「司教とその召使いバルダの物語」の音楽 作品36より抜粋
室内交響曲 作品110a(弦楽合奏編曲:ルドルフ・バルシャイ
(原曲:弦楽四重奏曲第8番作品110「ファシズムと戦争の犠牲者の想い出に捧げる」)
長田雅人指揮
オーケストラ・ダズビダーニャ
(Traumhaus LMCD-1957)



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