かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:カラヤン、フィルハーモニア管によるベートーヴェン交響曲全集4

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、カラヤンとフィルハーモニア管によるベートーヴェン交響曲全集を取り上げていますが、今回はその第5集を取り上げます。

ということで、カラヤンが振る「第九」と言うことになります。端的に言って、私はベルリン・フィルのよりもこのフィルハーモニアとのもののほうが好きです。

全体的に強迫的な部分がなく、生命力にあふれ、作品が持つ「連帯と喜び」がそこかしこに普通に転がっており、さすがプロオケだと思います。

そしてこの演奏の特徴として、第1楽章でオケが付いていけず、アンサンブルが崩壊しかけているという点です。え、なら評価さがるんじゃないの?って普通は思いますよね?

実はそうなりません。それだけ、オケも指揮者も熱くなっているって証拠なんです。そして録音時多分一発勝負。録りなおしがきかない状態で、このようになったとすれば、よほどの事態がオケと指揮者に発生したと考えるのが自然です。

ですから、むしろとても微笑ましい!その後しっかりと修正するところなんざあ、アマオケの人たち必聴ですよ!

で、この演奏は全集の中では唯一ムジーク・フェラインで演奏されています。合唱団は楽友協会合唱団。明らかに録音セッションのために用意された組み合わせだとと思います。そのなかでよくぞ合わせたよなあって思います。またそれだけの統率力をカラヤンが持っているということを、天下に示した演奏だとも言えます。

その上で、私はこの演奏を変態演奏指定しまーす!ええ、そうです、あそこです、vor Gott!です。5拍しか伸ばさせていません・・・・・後の一拍は、残響です。ムジークフェラインでこれをやるのか!と目からうろこです。カラヤン、力入っているなあって思います。

多分、カラヤンの「生きてきた道」というのが、そうさせたんでしょうね。語れば長くなりますからそれは避けますが、こういった点を見ると、この第九と他の標題作品の演奏結果が異なっているのが、とても興味深い点です。

例えば、運命や英雄では空回りし、田園や第九ではいい演奏に仕上がっている・・・・・この点をどう考えるかは、聴き手にいい思考実験をさせてくれるなあって思います。で、私の結論は、カラヤンと言う指揮者は、時代の開拓者だった、ということです。

カラヤンが活躍した時代は、実は古楽演奏の勃興期に当たります。これを指摘する評論家が少ないんですが、明らかにカラヤンがこの演奏を録音した時代は、ホグウッドやアーノンクールバロックは元より、古典派もどんどん古楽によって演奏することをしていった時代です。その後にガーディナーが続く・・・・・そんな時代なんです。

この演奏では、カラヤン古楽演奏を念頭に入れながらも、それよりも前の時代の果実もしっかりと入れています。それは第4楽章において顕著です。実はとてもバランス感覚に優れた指揮者だったことが、演奏が語っているのです。

でもそれは、第九と言う作品が片足をロマン派に突っ込んでいるから、なんです。運命や英雄はどう見ても古典派の作品。それをモダンオケによって古楽風に快速に演奏したら、どうなるんだろうという実験を、カラヤンは死ぬまでやった人なのではないかと思います。それが、ベルリン・フィルにおける演奏に結実して行ったのでしょう。

そう考えると、カラヤンの演奏と言うものは、ベルリン・フィルの時代になっても開拓者のままだったのだと思います。であれば、例えば音がどうのとかそういう意見が出てくるのが納得なんですね。当然なんです、そういう欠点も明らかになるのは。時代の先駆者であれば、後から見れば足らない部分があって当然なんです。それがあっても前へ進むのが開拓者であり、先駆者なんですから。

私もこの演奏でもこれはという部分が全くないわけではないですし、それ以上をカラヤンで求めるのであれば、ベルリン・フィル来日公演の普門館ライヴを推します。決してベルリン・フィルハーモニーでの演奏ではないです。

今月のお買いもの:カラヤン ベルリン・フィル ライブ・イン・東京1977
http://yaplog.jp/yk6974/archive/948

しかも、巷で高評価の79年ではなく、77年の、です。私がカラヤンの第九で評価が高いのは、他は最晩年のベルリン・フィルのとでしょうか。ベルリン・フィルハーモニーというホールでの演奏はそれ一つだけかなあって思います、私が評価するのは。他はどうもって感じです。

この全集を聴いて思うのは、カラヤンと言う指揮者は、古楽演奏勃興において、モダンはどのような演奏を目指すべきなのかということを試行錯誤した指揮者だったのではないかなあってことです。だからこそ好きな人がいれば、嫌いと言うか拒否する人もいるのではないかって思います。要するに、好き嫌いがはっきり分かれてしまう、ということです。でもそれをしっかり引き受けて、数々の芸術を残したカラヤンを、私は距離はとっても嫌いにはなれません。

県立図書館がなぜベルリン・フィルとのではなく、フィルハーモニアとのものをライブラリとして選択したのか・・・・・この最後の第九から見えて来そうです。




聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
エリザベートシュワルツコップ(ソプラノ)
マルガ・ヘフゲン(アルト)
エルンスト・ヘフリガー(テノール
オットー・エーデルマン(バス)
ウィーン楽友協会合唱団
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
フィルハーモニア管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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