今月のお買いもの、12回シリーズで取り上げております、令和4(2022)年5月にe-onkyoネットストアにて購入しましたハイレゾ、イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるドヴォルザークの交響曲と協奏曲全集、今回は第7回です。交響曲第5番を取り上げます。
この第5番から、ドヴォルザークの交響曲には「鉄分」が多く含まれるようになると思っています。ここでいう「鉄分」とは栄養学で言うミネラルにあたるものではなく、その言葉を借りた「鉄道ファンらしさ」を意味します。鉄道ファンの間では自分の鉄道に対する思いを「鉄分」と言うのです。
現代の言葉で言えば「鉄ヲタ(鉄道ヲタク。筋金入りの鉄道ファンを指す)」と言えるドヴォルザーク。アメリカでのエピソードも伝えられていますが、この第5番から機関車が走っている様子を音を巧みに使って表現しているのが前面に出てくるようになります。その萌芽はすでに第4番の第4楽章にも表れていましたが・・・・・
この第5番では、第1楽章から第4楽章にかけてすべての楽章においてどこかしらに蒸気機関車の息吹が感じられるパッセージがちりばめられています。そのためなのか、ビエロフラーヴェクは多少どっしりとしたテンポをこの第5番では採用しています。そしてそのテンポが気にならないんです。むしろ適切でさえ思えてしまう、ビエロフラーヴェク・マジックとでもいうべきものが現出しています。
現代の鉄道はスピード重視。特に東北・北海道新幹線は最高速度が時速320キロ。しかし、蒸気機関車はせいぜい時速120キロ。しかもボヘミアの草原を走っていく列車であれば、100キロ程度でしょう。どっしりとしたテンポのほうがその風景にぴったりであるように思います。
日本であれば、C62よりは、中央本線を走ったD51のほうが、このテンポには適切であるように思いますし、ボヘミアも日本のように山間部もあることを考えれば、時速80キロ程度だったかもしれません。そのためどっしりとしたテンポを採用したように、私には思えます。それをうかがわせるのが、第3楽章スケルツォ。アレグロ・スケルツァンドと指示されていますが、それならもう少しテンポアップしてもいいように思います。しかし歩くようなテンポになっているということは、まるで草原の上り坂をゆっくりと蒸気機関車が昇っていくような風景が広がるようなテンポを採用しているということを意味するからです。
私自身も鉄ヲタなので、この楽章は時速何キロなんだろう?この楽章はもしかすると上り10‰以上なのかな?とか想像しながら聴いてしまうのですが、不思議なことにそれで違和感ないんです。ということは、ビエロフラーヴェクが譜読みをしたときに、ドヴォルザークが生きた時代の列車が走る風景を掬い取ったように思えるのです。
日本の風景を前述しましたが、中央本線、富士見の峠を越えるD51がけん引する貨物列車を描写したかのような、そんな演奏です。やがて峠を昇り切り、上諏訪の機関庫へと帰っていく・・・・・そんな鉄道がある風景を、この演奏からはどうしても想像してしまい、鉄ヲタとしては喜びと楽しさにあふれる演奏なのです。
実際に、中央本線で特に甲府以遠、富士見の峠あたりを普通列車に乗りながら聴きますと、この第5番などはピッタリなのは偶然なのでしょうか・・・・・
聴いているハイレゾ
アントニン・ドヴォルザーク作曲
交響曲第5番ヘ長調作品76
イルジー・ビエロフラーヴェク指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(Decca flac96kHz/24bit)
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