東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、クリュイタンスが指揮したベルリオーズの管弦楽作品を収録したアルバムをご紹介します。
アンドレ・クリュイタンスは主にフランスのオーケストラを指揮して録音を残した人ですが、ここではイギリスのフィルハーモニア管弦楽団を指揮した演奏が収録されています。それがベルリオーズの代表作、幻想交響曲です。
交響曲というよりは交響詩というほうが適切かもしれない、幻想交響曲。フランス管弦楽の代表選手ともいえるベルリオーズのこの作品を、クリュイタンスがフィルハーモニアというイギリスを代表するオーケストラを振って収録した、というところに注目のアルバムだと言えるでしょう。
こういう組み合わせは結構いい効果があることが通例なのですが、この演奏でも生き生きとした演奏が特徴で、どこかおどろおどろしい部分もありがちな幻想交響曲が、まるで夢の中で実際に体験したかのように表現されているのが特徴です。
その意味では、驚かされる解釈だとも言えるでしょう。わかりやすく言えば、RPGをやっていて実際にその世界に自分がいるかのような感覚です。自分の周りは現実なのに、その現実が仮想現実であるはずのゲームの世界であるかのように感じる、というような。
最後の最後まで、夢の世界を現実だと誤認識したまま、物語が終わるかのような感覚は、幻想交響曲をいくつか演奏を聴いたことがある私にとって、驚きの解釈でもあります。あくまでもこれは夢なんだ、現実ではないんだと思いつつも、実際には現実であると思わせるこの演奏は名演だと言えるでしょう。
録音は1958年。ステレオ初期なんですね。しかしそんなことは全く気になりません。むしろソニーのDSEE HXを動作させてハイレゾ相当で聴いていますと、空気感もしっかりあって、当時のレコーディングエンジニアの腕の良さを感じます。下手にいじくらず、自然に録音させるというのは当時としては勇気あることだったと思います。
一方カップリングの序曲2曲はオーケストラがフランス国立放送管弦楽団。生きのよさはフィルハーモニアとそん色なく、ベルリオーズという作曲家の芸術がいかなるものなのか、私たち聴衆に考えさせるものとなっているのも好印象です。どうもベルリオーズという作曲家は幻想交響曲のイメージが強すぎるきらいがあるように私は思いますので・・・・・
まあ、クラシック音楽の芸術の裏側を語れば長くなり、下手すればいずこからは怒られかねないような話題もたくさんあるのですが、ベルリオーズという作曲家はそんな話題に事欠かない作曲家でもある分、幻想交響曲という作品のある種の「毒」というものが依存性を持つだけに、そのイメージが強いのだと思うのですが、実際そんな「毒」が全てを占めているわけではないということを、私たち聴衆に気付かせる作品達、そして演奏だと思います。
クリュイタンスという指揮者が、しっかりとした視座を持った芸術家であったことを物語る録音だと言えるでしょう。
聴いている音源
エクトル・ベルリオーズ作曲
幻想交響曲 作品14
「ローマの謝肉祭」序曲 作品9
「海賊」序曲 作品21
アンドレ・クリュイタンス指揮
フィルハーモニア管弦楽団
フランス国立放送管弦楽団
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