かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ナヌート来日公演!紀尾井シンフォニエッタ東京との「運命」

今月のお買いもの、令和3(2021)年7月に購入したものをご紹介します。e-onkyoネットストアにて購入しました、ベートーヴェンの「運命」です。アントン・ナヌート指揮、紀尾井シンフォニエッタ東京の演奏です。

コアなクラシック・ファンなら、ナヌー!ナヌートだとお!ワイルドだろお~って叫ぶかもしれませんがー・・・・・・というのは、ナヌートという指揮者、知る人ぞ知る人だったようで・・・・・とはいえ、私は残念ながら初耳です。

ja.wikipedia.org

ベートーヴェン交響曲第5番は、ストーリーが明確なだけに、私自身が自分のストーリーを持ってしまっているため、好き嫌いが分かれやすい曲でもあります。そのため、今回はe-onkyoのサービスである試聴機能をフルに使って、これならばと判断しました。視聴した限りでは、どっしりとしつつも、特に第4楽章が美しいと感じたので、ポチリました。

私は結構、この曲の演奏を選ぶとき、第1楽章ではなく第4楽章に「期待して」選ぶことが多いのです。それは購入するときには特に顕著です。この音源を買うと決めたのも、第4楽章が決定打でした。そして全体の中で聴きますと、その美しさは説得力を持っています。私は第5番第4楽章を「勝利の音楽」と勝手に呼んでいますが、実は第1楽章第1主題のリズムが全体を統一していると言いますが、主に二つのリズムに分けられると私は思います。有名な「たたたターン!」と、もう一つがそのあとの「たりらりらりらら~」の二つです。そして、第4楽章ではそのあとのほうのリズムのほうが顕著になっていることに気が付かされるのです。

ナヌートはそういった繊細さすら、この演奏に秘めさせており、それは美しさですぐわかろうもの。ドイツ的な低音重視の演奏であるにも関わらず、室内オケという特色をうまく生かした、粋な解釈だと思います。

ですので、単に苦悩を突き抜けた歓喜、というだけではなく、もっと深い意味を、単にリズムとサウンドを工夫するだけで成しているんですね。これは息をのみます。

録音は2009年の紀尾井ホールですが、ちょっとだけ音が濁っているのが気になります。これはマイク位置の関係だろうと思います。そもそもCDで出たときはSACDハイブリッドだったようで、この音源はflac192kHz/24bitですが、本来はDSDのようですし・・・・・この辺りは技術に過信しすぎているような気がします。ライヴの音はもっとクリアなはずなんですよね(紀尾井ホールは何度か聴きに行ったことがあるので)。ただ、低音部重視のドイツ的美意識に裏打ちされたナヌートの芸術は、そんな不具合を乗り越えて、作品が持つ精神を存分に聴衆へと届けることに成功しています。

これは初めての経験なのですが、スピーカーで聴くのと、スマホでイヤホンで聴くのとの印象がそれまでと逆転し、スピーカーで聴いたほうが音が濁りつつもホールらしいクリアな音に近くなり、イヤホンで聴くほうが貧弱に聴こえます。一つは先ほど申しましたマイク位置、そしてもう一つが、ナヌートのドイツ的解釈に原因を求めることができるのではないかと思います。とはいえ不思議なことに、それでもこの演奏は聴き飽きないんです。こういう演奏こそ、名演と言えるのだろうと思います。なお、ソニー製のアプリを使っている方なら、DSEE HX(もしくはDSEE ultimate)を動作させると、もうすこしクリアな音質になりますので、192kHz/24bitであっても動作させてみるといいかもしれません。それはナヌートがなぜドイツ的アプローチを正々堂々したのかを理解するのに、近道かもしれません。

そして、カップリングの「プロメテウスの創造物」はむしろリズミカル!決して端正なアプローチだけではない部分を見せつけます。そしてよく耳を傾けてみると、やはりオケを存分に歌わせているのも好印象。ナヌートの祖国スロヴェニアの作曲家オステルツが作曲した「レリジオーソ」の静謐かつ讃美歌のような流麗さ!決してナヌートがドイツ的なかっちりとしたアプローチだけではなく、しっかりと歌わせることに重点を置いており、そのうえでのドイツ的な低音先行という解釈を第5番でしているとみるべきであろうと思います。なお、このアルバムはライヴ盤で、本来は同じベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲も演奏されたようなのですが、こちらはソリストが録音を好まなかったとのこと。それはそれで残念です。それこそ真にナヌートの芸術を楽しめたかもしれないのに、と思うのですが、仕方ありません。ですがそこに、どうやらこの音源の録音上の特質の原因も、見えてきそうです。

その点では、すでにナヌートが故人となってしまっているのは、誠に残念でなりません。ま、ほかの音源がハイレゾになるのを待つしかありますまい。

 


聴いているハイレゾ
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第5番ハ短調作品67「運命」
「プロメテウスの創造物」序曲 作品43
スラヴコ・オステルツ作曲
「オーケストラのための組曲」より「レリジオーソ」
アントン・ナヌート指揮
紀尾井シンフォニエッタ東京
(excl00037 flac 192kHz/24bit)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。