神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、グラナドスのピアノ作品全集を取り上げてきましたが、今回はその最終第6集です。
第6集は、小品と「詩的な情景」が収録されていますが、グラナドスが新古典主義音楽を志したのではと私が思う曲が含まれています。それが軍隊行進曲第1番です。
だいぶおどけたというか、明るさだけが前面に押し出されている作品です。もちろん行進曲だと感じるのですが、勇ましさが薄いんです。ないわけではありませんが・・・・・
第2番もそんな感じで、おそらく、これで例えば陸上自衛隊が行進するとして、できるかなあ、と感じます。それは何も陸自と限らず、そもそも本国のスペイン軍もできるのか?と疑問に思ってしまいます。ですが、それがグラナドスが新古典主義音楽を先取りしたのではと判断する理由なのです。
そもそも、新古典主義音楽という運動は、後期ロマン派のうち国民楽派が、愛国心をあおったことを反省することから始まっています。本格的になるのはグラナドスの死後なのですが、先取りしているようにしか私には思えないのです。グラナドスが死んだのは1916年。しかも、ドイツのU-Bootによる雷撃によって、です。つまり、ドイツの敵性国家であったわけです、スペインは。
そんな国際情勢から、ドイツ音楽に対し、疑念を持ったとしても不思議ではありません。そして新古典主義音楽などという名称もつかぬまま、新しい音楽を模索していくうちに作曲したのが軍隊行進曲第1番と第2番だったとしても、何ら不思議ではありません。音楽史では新古典主義音楽の中には含まれませんが・・・・・
アメリカへ演奏旅行へ行き、雷撃を受け、祖国の土を踏まぬままこの世を去ったグラナドス。わが親戚も、太平洋戦争時、南洋諸島方面にて雷撃により戦死していることを思い起こすと、実に哀しさが湧き上がってきます。グラナドスのある意味渋さは、彼の繊細さの一面であることを鑑みると、グラナドスのピアノ曲に巡り合ったのは偶然ではないのかもしれません。
聴いている音源
エンリケ・グラナドス作曲
①即興曲 作品39
②6つの表情的練習曲
③軍隊行進曲
④練習曲 遺作
⑤エリセンダ
⑥風景 作品35
⑦軍隊行進曲第1番
⑧軍隊行進曲第2番
詩的な情景
⑨子守歌
⑩エバとワルター
⑪ばらの踊り
トーマス・ライナー(ピアノ)
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。