かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:カバレフスキー ピアノ作品集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、カバレフスキーのピアノ作品集を取り上げていますが、今回はその第2集です。

私が借りてきているのはこの第2集までなのでここで終わりですが、じつはこのCD、続きがあります。調べてみると第5集まで出ているようです。

そして、その大部分を占めるのが実はバッハの作品の編曲なのです。この第2集ではBWV553、BWV538の二つが収録されています。

expiano.org

この二つの作品はバッハのオルガン曲で、おそらくいずれもこのブログで取り上げたことがある作品です。それをカバレフスキーはピアノへと編曲しているのです。そしてそれはかなり原曲を意識しており、そのうえでモダンピアノで弾くことも配慮したものとなっています。

しかし、あれ?と思うはずです。カバレフスキーと言えば、旧ソ連社会主義リアリズムバリバリの音楽を書いていたはず、ですよね?それがなんと、ピアノ曲に関してはバッハのオルガン曲の編曲を残している、ということなのです。しかも結構数多く、です。

本来なら、バッハを取り上げるなど、「宗教はアヘンだ!」と叫ぶソ連で許されるはずがありません。しかしこのように残っているわけ、なのです。上記ブロガーの方はそれを期待してこの全集をそろえていらっしゃるわけでもあります。そのことを、パヨクとか言われる方々はどのように解釈されるのでしょうか。

さらには、「さくらさくら」を主題として変奏曲まで。これは民謡の主題による変奏曲作品87の第3曲で、アメリカ、フランス、そして日本の各々民謡を主題とする変奏曲がまとめられているもので、1967年の作曲。その当時バリバリ冷戦ですよ。各々敵国です。しかし、このように主題として使っており、これも「さくらさくら」の和音階がまず忠実に奏された後、徐々に西洋音階もつかいつつ和音階にて変奏されていく様子は見事であり、なんと!社会主義リアリズムの作曲家に、日本の和音階が普遍性を持つことを教えられます。

そのうえで、そのあとに収録されている、カバレフスキー作曲の作品は主に子供向け。ですから平易な音楽がそこにはありますが、かといって「これならわかりやすいよね!」という安易なものは一つもありません。むしろ和声としては多少複雑なものすらあり、カバレフスキーの作品の多様性をこれでもかと見せつけるものです。

これは演奏する有森氏の方針だったのか、それともレコード会社の方針だったのかはわかりませんが、いずれにしても、私たちが持つ先入観をこれでもかと破壊します。そのうえで歌い上げる共感の歌。繊細かつ透明感のある演奏が、むしろ暴力的にすら聴こえます。あなた方の認識は間違っているんだ!という・・・・・

とはいえ、それは静かなものですが。その静謐さの中に秘められた想いが、ビンビン伝わってきます。ここでも私は、ハンマーで頭をガツン!と殴られたような感覚になります。なんと自分の認識は浅く、浅はかだったか!と。こういう資料を図書館が持つということが、今こそ非常に大事だと思うのはわたしだけなのでしょうか?

こういう気骨のある日本人が少なくなったなあと、さみしさの中でも、演奏の暖かさを噛みしめています・・・・・

なお、最後の「子供のためのピアノ小曲集作品27」は、通常と異なり曲順が後ろからになっていることを付け加えておきます。

 


聴いている音源
ドミトリー・カバレフスキー作曲
8つの小前奏曲とフーガ第1番ハ長調BWV553(J.S.バッハ作曲、カバレフスキー編曲)
トッカータとフーガ ニ短調(ドリア風)BWV538(J.S.バッハ作曲、カバレフスキー編曲)
4つの前奏曲作品5
ロンド イ短調作品59
日本民謡による変奏曲(民謡の主題による変奏曲作品87より)
子供のためのピアノ小曲集作品27
有森博(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。