神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はふたたびバッハのゴルトベルク変奏曲を取り上げます。グールドの快速演奏の後は、弦楽三重奏版です。
弦楽三重奏版は、ウィキにも出ている編曲なのです。
ゴルトベルク変奏曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF%E5%A4%89%E5%A5%8F%E6%9B%B2
と言っても、ウィキを見てこの音源を借りたのではないのですが・・・・・むしろ、某SNSにおけるイヴェントの、編曲ものからインスパイアされてと言うほうがいいでしょう。
本来、この作品はクラヴィーア(しかもチェンバロ)のための作品で、通奏低音とメロディの二つが存在するわけです。それを、あえて3つにしてみたらというのが、この編曲の面白さだと言えるでしょう。
その上、そもそもチェンバロという、弦をはじく楽器のための作品を、今度は弦を弓で弾くという行為の楽器によるものにしてみたらという、面白さもあるわけです。そこが、借りた時の注目点でした。
編曲者は、ドミトリ・シトコヴェツキー。旧ソ連出身のヴァイオリニストですが、編曲の能力も高いと言えるでしょう。
演奏時間はグールドと比べれば伝統的というか、原曲のチェンバロに近い80分ほどとなっています。やはり、弦楽器だとピアノ程快速にはならないってことになります。
ではなぜ、ピアノだと速くなるのでしょう?それは、ピアノが打楽器だからです。え、鍵盤楽器でしょ?というかもしれません。ええ、鍵盤楽器です。その一方、ピアノという楽器がどのように音が鳴るかという点に着目すれば、弦を叩くわけなので打楽器だとも言えるわけです。これは以前から申し上げている通りです。
ロックがなぜテンポが速いのかと言えば、通奏低音がドラムス、つまり打楽器だからという点もあるからです。だからギターは弦をはじくよりも、なぞっていくわけで、そうでないと速いテンポを弾きこなすわけにはいきません。しかも、殆どが電子ギター。速く弾けて当然の構造を楽器が持っているわけです。
しかし、この弦楽三重奏曲版で使用される楽器、ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラはそうはいきません。なぜか?弦の部分に盛りあがりがあるからです。では電子ギターは?そもそもギターは?ないんです。だから、指でなぞりながら所謂「てけてけてけ」と弾けるわけです。あるいはじゃらんじゃらん、かな?
盛りあがりがあると、その盛りあがりにそって弓を動かさないと音が出ませんから、どうしてもテンポは比較的ゆっくりにならざるを得ません。勿論、速くすることも可能ですが、それをずっとやるのは体力的には困難でしょう・・・・・
しかし、その80分という演奏時間は、なぜか退屈ではありません。むしろ、3つの楽器になったことで、様々な音がちりばめられていることにちゃくもするので、飽きが来ません。その上、そもそも舞曲も多用されているこの作品では、荘重な部分もありつつ、軽やかで喜びに満ちています。単なる練習曲ではなく、まさしくサロンにおける実用音楽であったことを、サロン音楽の一形式である弦楽三重奏で見事に証明しています。
そもそも、バッハの音楽というのは日本ではあまりにも宗教音楽の側面から語られることが多い(その上、あまりその内容には踏み込まない)ために、実は音楽的には宗教音楽も世俗曲もあまり変わりがないということに着目されることがありません。バロックでは使いまわしはしょっちゅうですから、カンタータで使った旋律を器楽作品でも使うなんてことはよくありますし、またその逆もしかりです。グールドはその点をしっかり着目したうえで、独自の解釈に至ったということは、グールドファン以外にはあまり知られていないのではないかと思います。
この演奏は決して快速演奏ではなく、テンポという点ではグールドの解釈にそってはいません。しかし、グールドの影響下にはあるのです。弦楽三重奏でも遜色ない作品を、チェンバロという楽器で作曲し、演奏したバッハという作曲家のすごさを、あらためて認識させられるものなのです。
聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
ゴルトベルク変奏曲(クラヴィーア練習曲集 第4部)
弦楽三重奏編曲:ドミトリ・シトコヴェツキー
ジュリアン・ラクリン(ヴァイオリン)
今井信子(ヴィオラ)
ミッシャ・マイスキー(チェロ)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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