かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:Office Applaus サマーコンサートを聴いて

コンサート雑感、今回は令和元年7月15日に聴きに行きました、Office Applausサマーコンサートを取り上げます。

毎年夏になりますと行われていますこのコンサート。私が毎年聴きに行っているコア・アプラウスを運営しているオフィス・アプローズが音頭を取って行っている、ある意味音楽祭です。

副題に「M.Sunagawa Anniversary Series」とある通り、コア・アプラウスを振られる砂川稔氏の世界を見せるものでもありますが、今回はちょっとだけ趣向が違っていました。

まず1プロが、ブリテンの室内オペラ「小さな煙突掃除屋さん」。30分くらいで終わってしまうあっけない作品なんですが、実はそれは一部でしかありません。実はこの作品、正式な題名は「オペラを作ろう!」なんです。

さまよえるクラヲタ人
ブリテン オペラを作ろう「小さな煙突そうじ」
http://wanderer.way-nifty.com/poet/2013/10/post-95f7.html

オペラを作ろう!という作品の中の、実際のオペラがこの「小さな煙突掃除屋さん」で、第3幕になります。ただ、それをやってしまうと演奏会をすべてこれにせざるをなくなり、年末の蝶々夫人と合わせとても練習時間が取れないでしょうから、どうやらこの第3幕だけを持ってきたようです。

上記ブログでも触れらていますが、この作品は児童労働を問題として提起する作品であると同時に、子供たちの行動力や秘められた能力への賛美でもあります。子供を信じるとはこういうことなのかと、考えさせられる作品です。というのはこの作品、悲劇と思いきや上記ブログでも言及されていますが喜劇なんです。めでたしめでたし。

それじゃあつまらん!もっと内面性や英雄的側面を強調せよ!とかいう人が左右共にいるので困るんですが、この作品、十分英雄的です。自分たちと同じ年代の子供がいやいやながら労働に従事させられているのを、子供たちが知恵を絞って救い出す物語で、実際にサムを救い出すために子供たちは縄を引っ張るんです!音楽は実に楽しいものになっているので英雄的には見えないかもしれませんがこの行為を英雄的と言わずして一体何なのでしょうか?敵艦に特攻しないから英雄的行動ではないんですか?あるいは爆弾三勇士じゃないから?あるいは敢然と政権にむかっていかないから?

子供たちが英雄的行動に至る切っ掛けなんて、些細なものから始まります。設定の1800年代はまだまだ児童労働の規制が始まったばかりで、違反業者だってたくさんいた時代です。そんな時代に子供たちが救おうとすることは時として大人の反感を買う行動です。マララ・ユフスザイさんをさんざん罵倒した人がこの国にもたくさんいますね?それと同じ状況が1800年代のイギリスにいたのです。そんな状況の中での子供たちの行動のどこが英雄的ではないんでしょうか?

とっても楽しいオペラはあっという間に終わり、万雷の拍手!特に室内アンサンブルの生命力あふれる演奏は、ブリテンのどこが事実学なんだ!という演奏者たちの心の叫びにすら聴こえました。むしろ批判をするとすれば発声で、折角日本語で歌っているのにあまり歌詞がわからなかったことのほうが残念だと思います。これは平たい発音を恐れずもっと歌詞を大切にする発声を、特にソリストにしてほしかったなと思います。ただ、この1プロ、指揮者がいないんです。つまり、砂川先生不在。おそらくソプラノの稲見先生が先頭に立って引っ張ったんだと思います。こういう世代交代の時期に来ているのかなと思います。

次の2プロは、砂川先生登場。モーツァルトのピアノ協奏曲第21番。この曲、私は結構好きな作品で、特に第1主題がワクワクするんです。モーツァルトの27曲あるピアノ協奏曲の中で、これほどワクワクする協奏曲って実はないんです。21番って圧倒的に第2楽章の緩徐楽章が有名なんですが、私はそれよりもワクワクする第1楽章のほうが好きな作品です。ですが・・・・・

そのワクワク感が、あまり感じられなかったのが残念。ただ、しり上がりに熱くなってきているのは素晴らしかったです。ピアニストの倉地さんはもっとのびしろがある人だと感じました。オケと合わすためにどこか自分を引っ込めているように感じたのです。もっとオケを奮い立たせるつもりで第1主題を思いっきり入ってもよかったような気がしています。ある意味「人気協奏曲」のような感じになってしまうかもしれませんが、そこを恐れずやったらこれは素晴らしい演奏になったんだけどなあと、残念です。

最後の3プロはオペラアリア集。これが今回最も演奏者がノリノリだった舞台で、やはりソリストの皆さんは歌うたいなんだねえって思いました。それは指揮者の砂川先生も含め、です。もともとソリストですからね、砂川氏。特に今回、照明もうまく使って効果抜群!「小さな煙突掃除屋さん」でも、照明を使ってうまく場面設定をしていましたし、ロケーションである杉並公会堂という、オペラをやるとなるとちょっと不向きな会場を存分に使っているのは素晴らしかったと思います。その総仕上げとしてのオペラアリア集。それだけ歌えるんだったら日本語でもしっかり歌ってほしいよね〜っていうようなすばらしさ炸裂!これがモーツァルトでもやられて居たらなあと・・・・・

ただ、全体的には本当に楽しめた、お祭りにふさわしい演奏会だったと思います。これは年末の蝶々夫人は期待できる・・・・・かな?




聴いてきたコンサート
Office Appluas サマーコンサート
ベンジャミン・ブリテン作曲
オペラを作ろう!より第3幕 オペラ「小さな煙突掃除屋さん」
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
ピアノ協奏曲第21番ハ長調K467
オペラ・ガラ・コンサート
オペラ「道化師」よりプロローグ(レオンカヴァッロ)
オペラ「カルメン」より「ハバネラ」(ビゼー
オペラ「サムソンとデリラ」より「私の声はあなたの心に花開く」(サン=サーンス
オペラ「ホフマン物語」より「ホフマンの舟歌」(オッフェンバック
オペラ「コシ・ファン・トゥッテ」より「この心をあなたに送りましょう」(モーツァルト
オペラ「ルサルカ」より 月に寄せる歌(ドヴォルザーク
オペラ「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」(プッチーニ
オペラ「ナブッコ」より ザッカリアの祈り(ヴェルディ
オペラ「ドン・カルロ」より 我らの胸に友情を(ヴェルディ
オペラ「トスカ」より 歌に生き恋に生き(プッチーニ
オペラ「椿姫」より 乾杯の歌(ヴェルディ
稲見理恵(ソプラノ)
喜田美紀(メゾ・ソプラノ)
淀和恵(メゾ・ソプラノ)
青柳素晴(テノール
清水良一(バリトン
佐藤泰弘(バス)
グルッポ・ピッコリーニ(合唱指揮:稲見理恵)
倉地恵子(ピアノ、第21番)
新明知美(ピアノ、小さな煙突掃除屋さん)
千代田弥生(ピアノ、小さな煙突掃除屋さん)
砂川稔指揮
ウッドランド・ノーツ

令和元(2019)年7月15日、東京杉並、杉並公会堂

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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