かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ケンぺのチャイ5

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はルドルフ・ケンぺ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏する、チャイコフスキー交響曲第5番の演奏をご紹介します。

所謂「チャイ5」は、すでにシャイ―指揮ウィーン・フィルの演奏を取り上げています。そして今でもそのシャイ―のものが好きなのですが・・・・・

ちょうどこの音源を借りたころ、その演奏を聴いてはいけないという状況にありました。その演奏を聴いてしまうと、そのころ行っていた、人生の振り返りに支障が出る可能性があったからです。

とは言え、私にとってチャイ5は、ベートーヴェンの第九と共に、魂で共感できる作品です。聴けないのも、とても苦痛でした。そのため、他の演奏を聴いてみることにしたのです。その時図書館の棚で見かけた音源に、このケンぺとカラヤンがありました。

実は始めカラヤンを借りています。ところが、カラヤンの演奏が決して嫌いではない私でも、チャイ5に関しては美意識が違いすぎるという理由で、返却後音源を削除したのです。つまり、残さなかったと言うわけです。

カラヤンと言えば、快速テンポという点が、評価もされ批判もされるわけですが、チャイ5ではテンポがゆったりすぎ、カラヤンが何処に共感しているのかが分からなかったのです。そのため、当時はPCすらなかなか触れなくて、USBメモリに保存しているという状況だったので、削除したのでした。その代りにのこしたのが、このケンぺのだったのです。

実はテンポから言えば、カラヤンよりもテンポは幾分速めです。でも、シャイ―と比べると殆ど一緒。違うのは、小節を伸ばさず直ぐに次のフレーズに入っていくという解釈をしている点です。

これは最初正直言えば、シャイ―の演奏を気に入っている私としては面喰いました。しかし何度か聴きこんでいくと、これがケンぺのメッセージなんだなと解かってきたのです。だからこそ、残したのですが・・・・・

チャイ5は、チャイコフスキー交響曲第4番で成功した後、精神的には少し不安定な時期に作曲された作品ですから、例えば第4番のようなどこかでテンポアップするような場面と言うのがあまりないんですね。とはいえ、人は話す時にテンポが一定ではないことがあります。そういうときは、けっこういろんなことが頭に浮かび、整理できていないけれど何か伝えたいと思って、早口になったりもしますし、またゆっくり話したりもします。ケンぺの演奏はそんな人間観察からアプローチしたかのような演奏なのです。

その上で、作品として端正さも追及したものだと言えるでしょう。「情熱と冷静の間」をいかに取るかの、ケンぺなりの回答がこの演奏だと言えるでしょう。

ベートーヴェンでは激しさも魅せるケンぺですが、このチャイコフスキーでは激しさと言うよりも、作品に秘められた情熱を一定のテンポの中で、しかし揺らしながら表現したものだと言えるでしょう。それが分かると、がぜんこの演奏もいいなあって思うようになりました。

残念なのは、この演奏は古いものですから、残響などに色付けをしていると言う点です。PCやCDプレーヤーで聴きますと聴き取りにくいこともありますが、mp3プレーヤーでイヤホン聴きますと、如実に聞き取れることができます。それと、元々ステレオとは言えアナログでの録音であると言う事から、ダイナミックレンジが狭いという点もあります。その点は残念なのですが、それでもケンぺが伝えたいことはしっかりと私達聴衆に伝わってくるのではないでしょうか。

この演奏を聴いた時、いろいろ考えたことを思い出します。自分の恋愛経験や、人間関係、或はいじめの体験などが、走馬灯のごとく甦ってきました。それを整理して、振り返るのは結構大変でしたが、この演奏を聴きながら、重要なことは何だろうと取捨選択しながら、自分の来し方を振り返っていたのを思い出します。チャイコフスキー交響曲は第4番以降そういった作品が並びますが、特にこの第5番は静かにかつ情熱を内に秘めながら、チャイコフスキーが自分の内面を見つめる作品のようにおもわれ、どこかで自分とチャイコフスキーを重ね合わせて聴いていることがあります。このケンぺの演奏も、そういった私の内面を見つめ直すきっかけに、常になってくれています。

兎に角、このように複数の指揮者が振っている作品は、自分の好みで選べるのがとてもいいと思います。そして初めて図書館の音源を「削除」するという行為は、私にとって本当に図書館の存在を身近に感じた出来事でした。これがCDやレコードであったなら、その処分は大変です。図書館で借りてきてリッピングするからこそ、好きな演奏は残せて、嫌いな演奏は削除するということで解決されるわけですし、また複数の指揮者が振っているという事こそ、クラシック音楽の素晴らしい「ギフト」だと思います。





聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第5番ホ短調作品64
ルドルフ・ケンぺ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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