かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:チャイコフスキーとグラズノフのヴァイオリン協奏曲

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介しています。今回はチャイコフスキーグラズノフのヴァイオリン協奏曲のアルバムを御紹介します。

この音源を借りた来たのは、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲も聴きたいと思ったからですが、最も大きかったのはカップリングのグラズノフのほうなんです。グラズノフのヴァイオリン協奏曲が聴けるなんてこれはいいなって。

チャイコは、もういろんな演奏をその時すでに聴いていましたので、まあ、どんなもんかいなって感じなんです。でもグラズノフのヴァイオリン協奏曲は初めてですから、ドキドキして聴いたのを覚えています。

グラズノフのヴァイオリン協奏曲は、1904年と実は20世紀に入って書かれたものですが、グラズノフらしく、古典的な和声で表現され、哀愁と気品のある作品です。

ヴァイオリン協奏曲 (グラズノフ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%8E%E3%83%95)

その意味では、チャイコのカップリングとして十分な要素を含んでいると言えます。実はこの音源は、二つの演奏会をつなげたものなんです。ともにヴァイオリニストとオケ、指揮者が同じで、録音日が異なるというもの。恐らくロケーションも同じだと思います(モスクワ音楽院大ホール)。

面白いのは、チャイコのヴァイコンでもppからffまで存分に差をつけてロマンティックに演奏するものが多いのですが、この音源ではむしろそれはグラズノフのほうであり、チャイコではあまりppとffの差がついていません。せいぜいpとfです。それでも、ロシア的な哀愁もチャイコフスキーの作品ですから入っているわけなんですが、より哀愁を感じるのは和声から言ってもグラズノフですし、ソリストのトレチャコフもグラズノフのほうにより気持ちを込めて演奏しているように聴こえます。

それがとても興味深い演奏だと思います。私達日本人からすれば、それをチャイコでやってよ〜って言いたいところですが、トレチャコフや指揮者のフェドセーエフからすれば、うーん、どうしてもチャイコなんだよねって言いたいところではないんでしょうか。

録音が1984年と85年なんです。この時代、まだロシアはソ連です。ちょうどペレストロイカ直前って感じで、改革を指向しつつも、まだ風穴は空いていないという感じの希望と閉塞感が同居し漂うソ連社会の中で、チャイコフスキーという作曲家は実はとてもデリケートな位置にありました。チャイコフスキーの例えば「1812年」が改変されていたり、今わたしたちが聴いている形ではない楽譜で演奏されることもあった時代なんです。チャイコフスキーブルジョワだと非難されたことだってあるんです。

ですから、ソリストが自ずとグラズノフは気持ちを込めるけど、チャイコフスキー機械的に演奏するというのは、実に当時のソ連的な演奏だと思います。技術的にはしっかりしていますから聴いてはいられますが、どこか平坦な感じがして、私はカラヤンよりもこの演奏のほうがどちらかと言えばあまり聴いていたくない演奏です。むしろグラズノフのほうがよほどいいですしね。そっちだけを聴いていたいなって思います。でも、グラズノフだって決して所謂「革命」を支持していたわけではないんですが・・・・・

まあ、それがソ連という国家の、抑圧の、理不尽な点だったと言えるでしょう。そういった歴史を知っていれば、この演奏に目くじら立てることは、私はないです。まあ、いい演奏は他にもあるし、音楽ファイルなのだからどうしてもいやだとなれば削除すればいいだけ、と割り切っているので。でも、削除する気はないですけどね。取りあえず、グラズノフのヴァイオリン協奏曲はこれだけのはずなので・・・・・

いやなら、また他の音源を借りて来るなり、CDあるいはハイレゾを購入するなりすればいいだけですから。いやあ、図書館で借りるということを知っていて、本当によかったと思います。嫌な演奏だと囚われなくて済みます。これはあまり聴かないだろうなあで済みます。

その意味では、チャイコは残念ですけれど、グラズノフは素晴らしいって思います。ソ連崩壊後のフェドセーエフの生き生きとした爆演が、本来しっかりとした座標軸をもった芸術家であることを示していますから。その指揮者とオケとしっかりとアンサンブルするトレチャコフもいいです。時代がもっと後ならば、チャイコも哀愁漂ういい演奏だったろうになあと、多少残念な演奏です。




聴いている音源
ピヨートル・イリイチチャイコフスキー作曲
ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
アレクサンドル・グラズノフ作曲
ヴァイオリン協奏曲イ短調作品82
ヴィクトル・トレチャコフ(ヴァイオリン)
ウラジーミル・フェドセーエフ指揮
モスクワ放送交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村