今回のマイ・コレは、バルトークのヴァイオリン協奏曲です。チョン・キョンファのヴァイオリン、サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団の演奏です。
チョン・キョンファは韓国出身のヴァイオリニストで、デビューからはデッカからCDを出していましたが、出産を機にEMIへ移籍し、これはそのEMIからの音源です。
チョン・キョンファ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A1
私はチョンのヴァイオリンは好きでして、以前デッカからのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と、EMIからのベートーヴェンヴァイオリン協奏曲を買っており、このコーナーでも取り上げています。
マイ・コレクション:チャイコフスキー・メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/326
マイ・コレクション:ベートーヴェン・ブルッフ ヴァイオリン協奏曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/389
不思議なものです。最初の、チャイコフスキーとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を取り上げたエントリで、私はこう述べています。
でも、これは当時買いたいCDではなかったのです。(中略)
確か、そのときのヴァイオリニストはパールマンだったと思いますが、その演奏がとても気に入ったので、それが欲しかったのです。ところが、これがとても人気でなかなか手に入らない・・・・・
その次善として買ったのが、この一枚だったのです。
でも、3つエントリを挙げるということは、3枚彼女でCDを買っているということになるわけです。
縁は異なもの、それもいいもの・・・・・♪
ル・クプルの曲ではありませんが、そんなことを想わずにはいられません。
さて、このCDを買ったきっかけは、チョンだということも有りましたが、そもそも、もちろんですが、バルトークだから、です。これは私の初バルトークのCDで、記念すべき一枚です。バルトークと言いますとちょっと音楽が難解というか、不協和音の使い方が独特なのですね。特に、このヴァイオリン協奏曲ではそれが顕著です。
バルトーク・ベーラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%A9
ヴァイオリン協奏曲第2番 (バルトーク)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF)
バルトークの音楽の特徴である、民謡からの独特の旋律はここでは完全な不協和音としての現代音楽となっており、民族色を見いだすほうが難しいくらいです。
古典的な3楽章制になっていますが、バルトークは当初1楽章の変奏曲にするつもりだったようです。そのせいか、調性がロ短調で始まりロ短調で終わり、全体的にも短調を貫くという構成になっていまして、聴き手に緊張感を強いるものでもあります。通常であれば、たとえば緩徐楽章で長調となる場合もある中で、全曲短調というのは、作曲者の意思を感じざるを得ません。
作曲が1937年から38年という時期も影響しているのかもしれません。ブックレットには、ナチスの台頭を上げていますが、確かに彼はアメリカへと亡命していますので、戦争や祖国滅亡の不安などの側面もあったのかもしれません。
一方で、カップリングされているラプソディの第1番と第2番は、どちらも明快な民族色が前面に出ている作品でして、バルトークがハンガリー民謡のオーソリティだったことを雄弁に語っています。急楽章のラッシュと緩徐楽章のフリッシュはそれぞれ伸びやかな音楽であり、ヴァイオリンん協奏曲とはまた違った側面を見せてくれます。
バルトークという作曲家はなかなか聴いても難しい作曲家だと思いますが、だからと言ってあきらめてはいけない作曲家だと思っています。彼は管弦楽と室内楽とではまるっきり違った作品を書きますし、またこのように同じ管弦楽曲でも全く違った作品を書きます。交響曲や協奏曲と言った、まるで論文のような作品では小難しい点がありますが、室内楽になりますと途端に親しみやすい曲になることがあります。
それをしるのは、また別の機会になりますが、それはその時に。
チョンはこの難解なバルトークを、縦横無尽に攻めています。決して勢いでは攻めていませんが、硬軟織り交ぜて、幻想的でまるでどこか違う世界へと通じるドアがあるかのように、私たちを「バルトークの世界」へと連れて行ってくれます。ある評論家が「形而上」と表現しましたが、確かにそういう表現もアリでしょう。しかし、私はそこにもっと人間臭いものを、この演奏からは感じるのです。人は、哲学的にもなりますし、野蛮にもなります。そういった人間の「表と裏」をバルトークが「現代的に」表現しているとすれば、私はバルトークの音楽にいろんな側面があるのも当然であろうと思います。
かくいう私もこのCDを聴いてすぐそこまでたどり着いたわけではありません。いろんな演奏を聴き、見聞し、本を読んだうえでここまでたどり着いたのです。バルトークとは、ちょっとそういった作業が必要な作曲家ではありますが、その世界を知ってしまったら、とても味のある作曲家であることは間違いないでしょう。それを気づかせてくれたのが、チョンだったのです。
ラトルとバーミンガム市交響楽団もいいサポートをしています。決して前へ出すぎず、しかしここぞというところでは前へ出て、チョンとセッションしています。こういった演奏はとても気持ちがいいですね。確かにラトルはいろいろ言われる指揮者ではありますが、こういったセッションが出来る指揮者は、私は素晴らしい音楽感覚を持っていると思います。独り相撲をとってしまうよりは、はるかにましであると思うのは私だけなのでしょうか。
聴いているCD
バルトーク・ベラ作曲
ヴァイオリン協奏曲第2番
ラプソディ第1番・第2番
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
サイモン・ラトル指揮
バーミンガム市交響楽団
(旧東芝EMI TOCE3382)
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