かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:黛敏郎 「舞楽」・曼荼羅交響曲

今月のお買いもの、ようやく今年平成26年に購入したものをご紹介することが出来ます。今回は2月に購入しました、黛敏郎の「舞楽」と曼荼羅交響曲のCDをご紹介します。ディスクユニオン吉祥寺ジャズ&クラシック館での購入です。

黛敏郎の作品は、最近涅槃交響曲を取り上げました。

今月のお買いもの:黛敏郎 涅槃交響曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1117

この涅槃交響曲と双璧を為すのが、曼荼羅交響曲であり、それもあって即買いしました。値段が安かったこともありますし・・・・・

さて、まず収録されているのは「舞楽」です。バレエ音楽ですが、一つの管弦楽曲というほうが内容的には正しいのかなあ、と思います。

BUGAKU
http://ja.wikipedia.org/wiki/BUGAKU

ウィキではローマ字となっていますが、漢字、ローマ字どちらでも表記はあっています。もっと正確に書けば、「BUGAKU(舞楽)」です。このCDでは漢字表記となっています。黛さんがどちらを正式としたのかは定かではありませんが、このCDでは「舞楽(BUGAKU)」となっていて、どちらが先に来ても並列表記するのが正しいようです。

舞楽とは、雅楽における舞踊のための曲のことで、それを管弦楽曲として提示したのがこの作品だと言えるでしょう。踊れる部分もありますが、そうではない部分もあり、実際にはバレエ音楽であり、普通の管弦楽曲でもあるという作品です。その意味では、黛氏が委嘱者の要請に見事に応えた作品だと言えるでしょう。

この作品で雅楽での舞踊と同じように踊れるかといえば、難しい部分もあるかと思いますが、モダン・バレエであれば何とかなるかもという部分は多々あります。実際にニューヨーク・シティバレエでは何度か再演されているわけですし、バレエ曲として認識するべきなのだと思います。

次の曲が曼荼羅交響曲ですが、まず、曼荼羅がどういう意味かを説明する必要があるでしょう。曼荼羅と言っても幾つか種類があるのですが、この作品では両界曼荼羅をテクストとしています。

曼荼羅
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9B%BC%E8%8D%BC%E7%BE%85

両界曼荼羅
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%A1%E7%95%8C%E6%9B%BC%E8%8D%BC%E7%BE%85

様々な仏像の名前が出て来ますが、鑑賞に於いて、理解への一里塚はそこではなく、仏教における世界観を知ることだと私は思います。仏教に於いては、蓮華蔵世界観というのがあって、それを絵画で示したものが基本的に曼荼羅であり、それを二つの世界で現わしたのが両界曼荼羅です。つまり、仏教における蓮華蔵世界を絵画に表したものを音楽で表現したものが、「曼荼羅交響曲」なのです。

蓮華蔵世界 【レンゲゾウセカイ】
http://kotobank.jp/word/%E8%93%AE%E8%8F%AF%E8%94%B5%E4%B8%96%E7%95%8C

本来は胎蔵界金剛界の順番でいうのですが、この作品ではまず金剛界が先に来ます。その音楽を理解するには、一番手っ取り早いのは絵を実際に見てみることではないかと思います。

ウィキの両界曼荼羅における、金剛界曼荼羅の項目を見ていただきたいのですが、全体が9つに分かれているのがお分かりかと思います。そしてそのうちの8つは、さらにそれぞれの仏像が丸の中にあって、シンメトリーになっているのが分かるかと思います。

さて、これを見て、皆様は何を想像しますか?どんなことでも構いません。私は音楽から、黛さんは回転する様子を思い描いたのでは?と思っています。曲は様々に展開し、まるで猫の目のようです。それは私には回転を想像させるのです。

確かに、金剛界であればそんな想像も可能でしょう。円がくるくる回る・・・・・そんな様子がうかがえます。

一方、胎蔵界は、絵の中心に大日如来が鎮座し、それを他の仏たちが取り囲む様子を描いています。それからインスピレーションされた音楽が、第2楽章だと言えるでしょう。最初、原初の世界の様に静かに始まりますが、それはまるで赤子が母のおなかの中にいるかのような様子です。

勿論、何を受け取るかは個人の自由ですが、これは黛さんの一つの両界曼荼羅論であり、これこそ両界曼荼羅を表現していると決めつけるわけにはいきません。しかし、私はしっくりきます。よく考え抜かれて作曲されていると思います。

少なくとも、涅槃交響曲もそうですが、この曼荼羅交響曲でも、実際と観念の世界が交錯し、それを音楽で表現していると言えるように思います。金剛界曼荼羅では、仏の声のようなものすら、聴こえてきますし、胎蔵界曼荼羅では、深い闇の中から世界がせりあがってくるような印象もあります。

演奏しているのは指揮者は涅槃交響曲と同じ岩城宏之ですが、オケはNHK交響楽団N響がCDで登場するのは非常に珍しいように思います。勿論例がないわけではないんですが、数として非常に少ないのは事実です。このコンビで、二つの作品を真正面から向き合い、端正な演奏を提示しています。そのことにより、聴き手には様々なインスピレーションを与えるように徹しているように思います。

特に、曼荼羅交響曲では、様々な想像を聴き手にかき立て、受け取ることを念頭に置いているように思いますが、それでも、絵画から作曲者が受け取ったものを最低限聴き手につたえようとする姿勢が見えるようです。その上で、私たちはどう受け取るのかが、この演奏からははっきりしています。はっきりしたメッセージではなく、各個人のインスピレーションです。それは聴き手に委ねられ、様々に変化します。まるで、金剛界曼荼羅のように・・・・・・

一つのはっきりしたものを、不協和音を巧みに使って表現したこの作品は、私はとても聴きやすいと思います。それを、端正な演奏に徹することで、なおのこと、引き立てているように思います。



聴いているCD
黛敏郎作曲
バレエ音楽舞楽(BUGAKU)」
曼荼羅交響曲
岩城宏之指揮
NHK交響楽団
(DENON COCO-70506)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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