今月のお買いもの、9月に購入したものをご紹介しています。今回はナクソスから出ている日本作曲家撰集から別宮貞雄の交響曲第1番と第2番です。湯浅卓雄指揮アイルランド国立交響楽団の演奏です。ディスクユニオン新宿クラシック館での購入です。
このCDを買いました理由、それは別宮氏が母校の教授をしていたことなのです。
別宮貞雄
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%A5%E5%AE%AE%E8%B2%9E%E9%9B%84
私は履修していませんが、それは評判・・・・・というか、有名でした。20年ほど前ですが、私も履修したくていろいろ情報を集めていたら、サークルの先輩が「知らない曲ばかり聴かせるんだよ〜。ルネサンスとか、現代音楽とか」
当時はその時代、ほとんど興味がなかったのですが、今思えば履修しておけばなあと悔やんでいます。「後悔先に立たず」の典型ですね。
別宮教授は、主に一般教養を担当し、もちろん音楽です。しかし、私の母校には音楽に関する学科はありません。文学部の教授でしたが、あくまでも一般教養の担当だったのです。そういうこともあって、私は当時スルーしてしまったのですが・・・・・
意外なところで、別宮教授に出会います。それも、文章で。合唱団でモツレクを歌うことになったのですが、その楽譜で巻頭解説していたのが、別宮教授だったのです。いわく、「モツレクは和声的だ」。
いや、そうでもないぞと思っていましたが、今思えば、確かにおっしゃる通り、全体的には和声的なんですね。その点は、まいりましたと頭を下げざるを得ません。さすが、作曲家です。
そんな経緯がありまして、店頭でこのCDを見た時、ほとんど衝動買いに近い状態で購入しました。ちょうど、今年の初めに亡くなられたこともありましたし・・・・・・
一言で言いますと、生きておられる間に聴いておくべきだったと、悔やんでいます。作品があることは知っていたくせに・・・・・
ネットや本などで情報を拾いますと、別宮教授はベートーヴェンの影響を受けているとありますが、それは、シェーンベルクなどに代表される12音階などの否定という意味であって、けっして現代的な不協和音を否定しているわけではありません。その証明が、この二つの交響曲だと言えましょう。新ロマン主義とも言われますが、私は新古典主義的な部分も見て取れるように思っています。
それは、第1番は4楽章であり、第2番は3楽章であるという点です。しかも、それは様式的には古典的な交響曲そのもの(3楽章制はフランス風)です。その点に於いて、伝統を重視する姿勢がベートーヴェンに繋がるというほうが、別宮教授の音楽は理解しやすいのではないだろうかと思います。
その上で、旋律に日本風もありますし、それ以外も散見されます。それが織りなす、幻想的でまるで曼荼羅のような世界・・・・・
当時、もっと音楽史に詳しければ、古美術好きと相まって、教授の音楽は絶対に好きになったはずなのになあと、悔やんでいるのです。多分、学祭でBGMとして使うことに何のためらいもなかったはずなのです。仏像に似合うクラシックなど、そうそうあるものではありませんから・・・・・
その根源を探りますと、メシアンに繋がるのは面白いですね。私はメシアンの「トゥランガーリラ交響曲」を取り上げた時に、こう述べています。
「この作品がいきなり理解できるのは難しいでしょう。まずはスクリャービンやシマノフスキなど、現代音楽の歴史をなぞるように聴いて行った結果、たどり着くのが一番いいと思います。出来れば、東洋美術、インドの神々や日本の仏教美術に触れておくとさらにわかりやすいのではないかと思います。
オンド・マルトノが織りなす音はまるで妖怪が楽しそうに飛び回るような感じです。あるいは、私には両界曼荼羅が絵を飛び出し、まるで目の間に立体的な蓮華蔵世界が迫ってくるような気すらします。」
今月のお買いもの:メシアン トゥランガーリラ交響曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1024
これと、おなじような音楽がここには存在します。旋律自体はもっと保守的ですが、しかし、幻想的で様々な音の綾が存在する点には違いありません。
こう見てきますと、別宮教授が目指した音楽は、けっして古典的な音楽ではなく、現代にあった和声による古典様式の音楽であることに気が付かされます。その上で、日本的な部分も忘れていません。仏像のスライドのBGMとして流しても、たとえば第1番の第3楽章は全く遜色ありません。
いやあ、聴けば聴く程素晴らしくて、悔しいですねえ。何であの時、日本文化史を採用してしまったのだろう・・・・・まあ、それがそもそも私の専門というか、専攻というか、サークルにおける研究対象だったのですから仕方ありませんが、音楽もとっておけばという後悔は、このCDを聴けば聴く程、湧き上ってきます。
演奏面では、湯浅氏はナクソスのこのシリーズの常連ですが、とてもいいタクトさばきをされているように思います。全体的にはアンサンブルに支障はなく、それが音楽が持つ古典的な部分と現代的な部分、そして東洋的あるいは日本的な部分をしっかりと浮かび上がらせています。オケはアイルランドですが、日本の旋律を知っているかのような、自家薬篭中の演奏は、日本のオケがんばれ!と言いたくなります。
そう、こういった作品はこれからどんどん日本のオケもコンサートで載せるべきだと思います(このCDは世界初録音ですが、初演は日本なのですから!)。ネットで拾っただけでも、別宮教授の音楽が好きな人たちは少なからずいると確信しています。そして、私もその一人となりつつあります。
出来れば、教授が生きているうちにこのエントリを立て、学祭などで見かけたらお声をかけたかった・・・・・・そう思います。これからは教授の作品もできるだけ取り上げようと思うと共に、別宮教授のご冥福をお祈りいたします。文学部卒業生として・・・・・
聴いているCD
別宮貞雄作曲
交響曲第1番
交響曲第2番
湯浅卓雄指揮
アイルランド国立交響楽団
(Naxos 8.557763J)
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