かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:別宮貞雄の交響曲第5番他

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回は別宮貞雄交響曲第5番他を集録したものを取り上げます。

さて、別宮貞雄という名前は、このブログでも何度か出てきています。戦後日本のクラシック音楽に貢献した作曲家の一人であり、人に寄れば日本を代表するシンフォニストという評価もあります。

別宮貞雄
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%A5%E5%AE%AE%E8%B2%9E%E9%9B%84

別宮貞雄(1922-2012)
http://kukikei.sakura.ne.jp/sym-jpn-bekku.htm

特に今回のエントリを書くに当たり、上記2つ目のブログはかなり参考になりました。というのも、さすがのウィキにも第5番の説明がないからなんです。この場において上記ブログ主様に感謝いたします。

中央大学卒業の私からすれば、別宮「先生」なんですけどねー。講義はそれはそれはルネサンスあたりが出てきたりとか、クラシック音楽がロマン派中心で聴いていると面喰うようなものだったそうですが、別宮先生の交響曲はこう体系づけて説明されると、なるほど変な人だよなあ、でもそれが先生なんだなーって思います。必然と言うか。

で、今回取り上げられている第5番です。このアルバムは第5番だけではなく、一つの「別宮貞雄管弦楽作品集」とも言える内容を持っています。その中での第5番の位置づけと言うことになる訳なんですが、作品は別宮氏の悲しい時期に作曲された割には、明るく生命力を持っていると言えるでしょう。それを評論するものにはなっていません。むしろ、別宮氏の管弦楽作品を、時代順に並べてみた、というものです。

でもそこから浮かび上がってくるのは、別宮氏の類まれなる創造力です。フランスで学び、かのストラヴィンスキーよりも成績優秀だった別宮氏が残したものは、決してフランス風だけではなく、ヨーロッパのものを吸収しつつ、逢わない点にはしっかりと距離を取るという、自立した市民の姿です。それは生まれた家が持っていた環境だったのかもしれませんが、いずれにしても、さまざまな要素が一つに止揚していると言う点では、前回ご紹介したグラズノフにも通じるものがあります。

1曲目の「管弦楽のための二つの祈り」は作曲が1956年で、フランス音楽の影響を多分に受けたものです。その後、交響曲もフランスの影響を受けたものが多いのも、別宮氏が受けた教育を考えれば当然なのですが・・・・・

管弦楽のための二つの祈り
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E4%BA%8C%E3%81%A4%E3%81%AE%E7%A5%88%E3%82%8A

次のピアの協奏曲は、ヨーロッパ音楽全体をフランスと言う窓口で学んだ、別宮氏ならではという様式を持っていると言えるでしょう。色彩感覚あふれる上に、重厚さも併せ持つという、日本人という、非ヨーロッパ人だからこそできる技で芸術として昇華された作品です。

その上での、交響曲第5番です。第1番以来の4楽章ですが、他の3つの作品が書かれた時代を考えれば、交響曲は自然とフランス風になったと考えていいでしょう。1999年という、第5番が作曲された時代は、20世紀が終わり21世紀が始まるという時代において、別宮氏も妻の他界という悲しい出来事を経験したうえで、彼が尊敬する作曲家であるベートーヴェンを意識した作品なのではと思います。

聴けば、ベートーヴェンのような英雄的なものはなく、どこがベートーヴェンなのって思うかもしれません。しかし、作品がつらい時にあっても明るい(それだけならモーツァルトと同じなのですが、しっかり同時期にチェロ協奏曲でドグマを吐いています)ということは、別宮氏が当時、「苦悩を突き抜けた歓喜」ということを意識していたことをうかがわせるのです。これ、ベートーヴェン交響曲のある意味キーワードでもあります。

それを、別宮流で表現したのが、交響曲第5番であろうと、私は解釈しています。第5番が別宮氏の最後の交響曲となっていますが、その第5番というのは、ベートーヴェンでいえば「運命」。どこか運命と同じような構造が見え隠れする作品ですが、それよりも、不協和音の中にほのかに必ず明るさがあると言う点にこそ、別宮氏流の「苦悩を突き抜けた歓喜」かなあって思います。

演奏するのは、ピアノが神谷郁代。指揮は若杉弘、オケが東京都交響楽団。で、本拠地の芸劇なのかと思いきや、ピアノ協奏曲までがサントリーホール、最後の交響曲第5番さいたま市民会館おおみや。共に2001年の録音です。ピアノ協奏曲まではライヴ、交響曲第5番はセッション録音となっています。ピアノ協奏曲では残響がとても印象的なのですが、「管弦楽のための二つの祈り」ではそうでもないんです。サントリーなのに・・・・・でも、若杉氏がそれを知らないで振っているとは思えません。その印象こそが、作品が持つ生命力なのでしょう。なかなかやはり、別宮氏の作品は曲者ぞろいで、何度も聴いてくるとその魅力にはまってしまいます^^;

奏者は自然体なのに、自然とどこか熱を帯びているんですよね。強迫的でもなく、とても心地いいです。生命力にあふれ、喜びが湧き上がってくるのが分かるんです。その上で美しい。まるでわ(以下自己規制)

ちょっと複雑な別宮氏の作品ですが、何度も聴いていると味わい深いんですよ〜これが。若杉さんの職人気質もあるせいかもしれませんが、とにかく、当時の流行を斜に構えっていた別宮氏の作品が、本当に光を放つものであることを、プロだからこその表現力で示しています。斜に構えているからこその地に足着いた自立の精神からいずる美の結果を、同じ日本人として受け取れることは、まさに喜びであるのだと感じています。




聴いている音源
別宮貞雄作曲
管弦楽のための二つの祈り
ピアノ協奏曲
交響曲第5番
神谷郁代(ピアノ)
若杉弘指揮
東京都交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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