かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:別宮貞雄 交響曲第3番・第4番

今月のお買いもの、平成26年12月に購入したものを取り上げます。今回は別宮貞雄交響曲第3番と第4番。若杉弘指揮東京都交響楽団の演奏です。

別宮氏に関しては、以前エントリを挙げております。

今月のお買いもの:別宮貞雄 交響曲第1番・第2番
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1068

別宮氏は交響曲を5曲書いていまして、購入当時やはり全部欲しいと言う衝動に駆られまして、店頭で見つけて即購入を決めました。購入した先は、ディスクユニオン新宿クラシック館。

最近は実はユニオンの新宿クラシック館はあまり足を運んでいません。諸事情で少し足が遠のいております。ただ、ディスクユニオン自体はまた足を運びたいなと思っています。

さて、このCDは国内盤でして、当然ですが解説がついています。その解説が嬉しいことに、作曲者別宮氏ご本人なんです!

そしてさらに嬉しいことは、上記エントリで私が別宮氏の音楽を評したことが、基本的に間違いではないということが分かった点なんです。

上記エントリで、私はこう述べています。

「ネットや本などで情報を拾いますと、別宮教授はベートーヴェンの影響を受けているとありますが、それは、シェーンベルクなどに代表される12音階などの否定という意味であって、けっして現代的な不協和音を否定しているわけではありません。その証明が、この二つの交響曲だと言えましょう。新ロマン主義とも言われますが、私は新古典主義的な部分も見て取れるように思っています。」

実は、このアルバムではまさしく、それをご本人が述べておられるのです。解説を読んだ時、衝撃が走ったことは言うまでもありません。

まず、第3番「春」は第2番の不協和音的なものとは一線を画すコンセプトで書かれています。純然たる標題音楽であり、後期ロマン派そのものと言っても過言ではありません。長閑な春の訪れを、ロマン派的に表現してみせたと言えるでしょう。

一方、第4番「夏 1945年」は一転、不協和音使用も辞さない作品です。標題から見て明らかだと思いますが、日本の終戦を扱っている作品です。戦争からの解放をうたいあげたものです。

共に楽章数は3楽章となっており、私としてはフランス風だと思っていますが、作曲者はそこには言及していません。むしろ、第4番に関してはベートーヴェンの「英雄」を引き合いに出しているくらいで、やはり音楽的にはベートーヴェンなどドイツ音楽を念頭に置いています。

ですが、受け手の私としては、けっしてそれだけはないと思っています。ではなぜ3楽章なのかという問いに、回答が出ないことになるからです。みずからの想いを音の論理によってしっかりと構築するのが私の音楽とはっきり別宮氏は述べておられますので、単に気分だけで3楽章を採用するとは思えません。そこには意味が込められていると、私は感じるのです。

第3番は「春の訪れ」「花咲き、蝶は舞い」「人は踊る」というテーマがそれぞれの楽章につけられています。これはバロックのヴィヴァルディ「四季」に似ていると思いませんか?

四季 (ヴィヴァルディ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E5%AD%A3_(%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3)

曲の標題がヴィヴァルディ本人が付けたものではないにせよ、「春」のソネットと似ていることに驚かされます。フランスあるいはイタリアバロックを念頭に置いたとしても何の不思議はありません。それこそ、「新古典主義音楽」と私が判断するゆえんでもあるのです。

勿論、別宮氏の音楽そのものが新古典主義音楽にカテゴライズされるわけではありません。しかし影響を受けていることは間違いありません。それはブックレットでも氏は当時の様々な音楽に影響を受けていることを述べていまして、間違いない点です。

さて、第4番はと言えば、明らかに新古典主義音楽そのものと言えるでしょう。それは標題を見ても明らかで、「妄執」「苦闘」「解放」という標題が各々の楽章につけられています。作曲の動機は第1楽章に提示されており、それを根底として作品は出来上がっています。フランス風の3楽章制を採用している点も、氏の想いというものが伝わってきます。それは反戦とかそういう単純なものではなく、かなり複雑です。それはあの時代を生きた人でないと共感は出来ないかもしれないですし、氏もブックレットでは共感されないだろうし、されなくてもけっこうだくらいのことを述べておられます。

でも、わたしは共感するのです。あの時代を生きた人たちの苦しみが、戦後日本の復興の原動力だったのですから・・・・・

演奏は東京都交響楽団。第3番は思いっきりノー天気に、しかし冷静さを忘れずにしっかりと表現し、第4番では、氏の複雑な心境を、しっかりとしたアンサンブルで表現しています。このコンビはワイルの交響曲の時も取り上げていますが、ステディな演奏で私たちに作曲家の意図をしっかりと伝えてくれているなあと思います。

そしてこの演奏を聴きますと、ますます私は別宮氏の音楽が好きになります。日本のクラシック音楽を今まで聴いてこなかったことを、本当に後悔しています。しかし、今からでも遅くはないと、なにか励まされているようにも感じています。恐らく、アンサンブルの硬軟とコントラストがしっかりと表現されているせいもあるんだろうと思います。単に高揚させるのではなく、心に沁みる音楽を、きちんとつむぎだしている・・・・・

日本のオケだって、そんな演奏がきちんとできるのですよという、典型例のように思います。

機会がありましたら、ぜひ日本のオケで残る第5番もききたいなあと思っています。勿論、ナクソスだっていいですけどね・・・・・・



聴いているCD
別宮貞雄作曲
交響曲第3番「春」
交響曲第4番「夏 1945年」
若杉弘指揮
東京都交響楽団
(fontec FOCD2510)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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