神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はストラヴィンスキーを一躍有名にした「春の祭典」、そして「ペトルーシュカ」を取り上げたみたいと思います。
ストラヴィンスキーと言えば、この二つが超有名ですが、私はこの音源を借りた時、交響曲第1番と一緒に借りた記憶があります。それはとてもよかったなあと思います。
なぜなら、この二つの、ストラヴィンスキーの出世作と言っていい作品への理解が深まったからです。
まず、皆さまこの二つの作品、火の鳥とペトルーシュカにある共通項って、わかりますか?それは、二つともバレエ音楽だという事です。
春の祭典
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%A5%E3%81%AE%E7%A5%AD%E5%85%B8
ペトルーシュカ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%AB
それぞれにストーリー性がある作品です。その上で、私は20世紀のバレエ音楽の幕開けを象徴するような作品だと思っています。
20世紀とは、音楽史においてどんな時代だったのかと問えば、様々な言い方ができるほど、じつは音楽史において非常に充実した世紀だったと言えます。その一つが、舞踊との融合だと言えます。
バレエだけではなく、モダンダンスように書かれた作品もあります。そういった作品の曠野が、この二つの作品、とくに「ハルサイ」、春の祭典だったことは間違いないでしょう。一番有名な第1部第2曲の「春のきざし(乙女達の踊り)」は、その題名に似合わず野性的で、生命力あふれる作品です。可愛い乙女たちというよりはむしろ、もっと性的魅力すらあるように思える女性たちがまるでその魅力で男性を誘惑しているかのような音楽は、それ以前の「舞曲」、特にバッハ以来の舞曲という概念を突破したと言っていいでしょう。
ペトルーシュカでも、それは一緒で、もう少しだけ「ハルサイ」よりはおどろおどろしくはなくなっていますが、実に生命力と、その源の人間のドグマがよく表現されている作品だと思います。多分、この点を押さえないと、これら二つの作品の魅力は語れないのではないでしょうか。
その点で、この演奏を指揮したドラティはまさしく満点と言えるでしょう。様々な演奏が名演として言われていますが、やはりドラティは格別な気がします。オケは交響曲第1番と同じデトロイト響。ともすれば、後に伊福部昭が映画「ゴジラ」で使ったオスティナートがふんだんに使われているこの二つの作品(特に、ハルサイの第1部第2曲)は、それだけ20世紀の作曲家に多大な影響を与えたと言えます。バッハ以来の音楽を突破した作品だからこそ、アメリカのオケがよく似合うような気がします。
ヨーロッパの伝統を踏まえつつ、しかし自分たちはそこからはじき出された人たちで、でも、今は国家として一つのコミュニティを形成しているアメリカという国家、社会を象徴する演奏だと思います。強いアインザッツによりその生命力の表現は頂点へ達していますし、素直なアンサンブルは作品が持つ人間の内面性を素直にえぐってくれています。
20世紀に入って、バレエ音楽は高い芸術性を獲得しますが、その背景には、私はこういったロシアの作曲家が果たした多大な貢献を見るのです。音楽的には、交響曲第1番に近いのがペトルーシュカ、カップリングに近いのが「ハルサイ」だと言えます。そう、一見古典的に見えた交響曲第1番は、じつはその後のストラヴィンスキーの活躍を、ものの見事に予見していたと言えるのです。
これら二つの作品だけでなく、交響曲第1番ももっと演奏されるべき作品だと思います。その点、有名作品だけでなく、渋い作品も選んで録音しているドラティ/デトロイト響のコンビは、やはり名コンビだと言えますし、じっさいに名演であり、さらに音楽史的にも意味深い録音だと言えましょう。
この二つの作品は是非とも、このように全曲版をお奨めします。組曲でもいいんですが、やはり、作曲者の意図を受け取るには、全曲版だと思います。オペラのように歌詞があるわけではないので、素直に耳を傾けていれば、受け取れるものはたくさんあるように思います。
聴いている音源
イーゴリ・ストラヴィンスキー作曲
バレエ音楽「春の祭典」全曲
バレエ音楽「ペトルーシカ」全曲
アンタル・ドラティ指揮
デトロイト交響楽団
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