かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:セルの第九

神奈川県立図書館所蔵CD、今回はセル指揮、クリ―ヴランド管弦楽団他の演奏する第九です。

世の中では、名盤と言われるものなんですが・・・・・

先日、ドホナーニ/クリ―ヴランドのものを取り上げましたが、実はそれと比較するため借りています。実はドホナーニを借りた時に、某SNSで「なんで借りたんですか?セルの方がいいでしょ?」と言われたのがきっかけなのです。

勿論、それ以前からセルのものは借りる予定でしたが、それはドヴォルザークの予定でした。しかし、その一言がきっかけで、では第九を借りてみましょうということになりました。

セルとクリ―ヴランドは、ググってみますと二つCDがヒットします。しかも、演奏者は同じという・・・・・

ですので、この演奏でもってセルの第九をすべて判断することはできませんが、少なくともこの録音に関して言えば、とても美しいがゆえに、第九の魅力をそいでいると言えるかと思います。

この音源は1961年のものですが、たとえば、hmvのサイトでは大絶賛なんですよね・・・・・でも、わたしはそれに異を唱えたいと思います。

確かに、第1楽章から第3楽章まで、素晴らしい演奏です。テンポはゆったりとしすぎずむしろきびきびしたものをもち、全体的に端正で、それが最上の美しさを生んでいます。しかし、「熱」がないんです。それが、第4楽章です。

スコアリーディングも素晴らしいです。第4楽章で私が常に言及するvor Gott!の部分、楽譜通りvorを一拍としてGott!を六拍で振っています。しかし、演奏自体からは「熱」というものが感じられないのです。どこか引いた感じです。

冷静すぎるんですね。その点から言えば、「情熱と冷静の間」が取れているとは言い難い演奏です。しかし、アンサンブルは最上です。

となると、hmvのレビューは多少差し引いて考える必要があるだろうと思います。第九はいったいどんな経緯で作曲されているのかを度外視して、純粋に音楽として感じるのであれば、それは素晴らしいだろうと思います。しかし、歌詞を読みますと、果たしてそれでいいのだろうかという疑問は沸いてきます。

そうなると、1967年の録音もきいてみたくなります。むしろ私はそのほうに興味が出ています。この61年盤は、それ以降にでたたとえばレコ芸推薦のものの中に含まれる演奏とそれほど変わらない演奏だと思っています。基本的にレコ芸などが推薦するものは名演ではなく、それに達するための入門編として上げていることが多いからです。

第4楽章は、それまでの音楽をいったん否定して、新たな音楽を奏でるという「構造」になっています。その点からすれば、セルの解釈はおなじ(つまり、否定していない)になってしまっているのですね。ただ、それはやむを得ないと私は思っています。セルは明らかに第九を古典派としてとらえているんですから。それでロマンティックで美しい演奏は素晴らしいのです。評価するべき点、つまり聴きどころはそこであって、「熱」ではありません。

ですから、私はドホナーニの指揮するものをとりあげたとき、こう述べたのです。

「セルとドホナーニとでは美意識が全く異なりますので、当然聴きどころが異なるんですね。」

神奈川県立図書館所蔵CD:ドホナーニの第九
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1082

このセルの演奏も、けっして悪いものではありません。ただ、情熱が欠ける部分が第4楽章ではある、ということなのです。私としては、ドホナーニが指揮した素晴らしい演奏の基礎を作ったのがセルのこの指揮であると思っています。セルがクリ―ヴランドを世界有数のオケに育てましたし、それは大方評価として間違っていないと思います。しかし、セルの指導が意味するものが花開くまでは、時間がかかったと言うべきでしょう。

その意味では、様々不都合がある中では素晴らしいレヴェルの演奏だと思います。特に合唱団のアンサンブルと情熱は素晴らしく、それに救われている演奏だなあと思います。もしセルがドホナーニの時に生きていたら、「そう、私がしたかった演奏がそこにある!」と言ったかもしれません。それを十分感じさせる演奏です。



聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
アドレ・アディソン(ソプラノ)
ジェーン・ホブソン(メッゾ・ソプラノ)
リチャード・レウィス(テノール
ドナルド・ベル(バリトン
クリ―ヴランド管弦楽団合唱団
ジョージ・セル指揮
クリ―ヴランド管弦楽団



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