東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。前回に続いてセルとクリーヴランド管弦楽団が1970年に来日したときの演奏を収録したアルバムをご紹介します。今回はその2枚め。後半のメインが収録されたものになります。
なんと、前半でモーツァルトの第40番を演奏しているのに、後半がシベリウスの第2番。交響曲2つって、お腹いっぱいなプログラムです、これ。
でも、聴いている聴衆の集中と、演奏の緊張感が切々と伝わってきます。シベ2と言えば、私はアシュケナージ指揮フィルハーモニアのものを取り上げたことがありますが、素晴らしい演奏なのですが、緊張感は少し足らないと以前は思っていた演奏です。今ではむしろ、ゆったりとしたテンポによって緊張感を高めている演奏で素晴らしいと思いますが・・・・・
このセルとクリーヴランドは、むしろ第1楽章はアシュケナージよりも若干速めに入っているように感じます。けれども多分、テンポとしてはさほど変わるものではありません。アシュケナージはオケに存分に歌わせているんですが、このセルは逆にさほど歌わせていません。けれども全体として、歌になっているんです。これがすごい。
第1楽章からだんだん畳み掛けてくるんです。アシュケナージが存分に歌わせた部分を、何かに追われているかのような強迫的演奏をすることによって緊張感を高めています。それは楽章を追うごとに顕著になり、第3楽章ではクライマックスを迎え、大円団の第4楽章となるのです。むしろ歌というよりはオペラに近いかも。
そう、一つのドラマになっているんです。この演奏、何かににていると思ったら、昨年夏に聞きに行った小平市民オーケストラの演奏にそっくりなんです。もしかするとと推測します。小平市民オケの団員の皆さんは小金井市民オケにも客演することがあり、相互に音源をレファレンスしているのでは?と。
東京の図書館は、都下においては他の市の市民が使える市立図書館があります。「相互利用」といい、例えば小金井市民は三鷹と西東京、武蔵野、府中の各市立図書館が使えるのです。もちろん、貸出OKで。この中でクラシックCDが充実しているのは府中だと言えるでしょう。そう、残念ながら小平は入っていませんが、小金井や府中、西東京などの団員からこんな音源があるけれどと、紹介されている可能性はあると思います。
もちろん、このアルバムは有名なものですので、私より年代が上の人であればよく知っているアルバムでもあります。ですから知っていてもおかしくないんですが、若い団員たちは知らない場合もあります。そんな中、セルとクリーヴランドのこの演奏はいいよね〜、なになにそれ?って話がはずみ・・・・・なんてことは、普通に考えられることなのです。
筋肉質の引き締まった演奏は、ともすれば冗長になってしまいがちのこのシベ2を、見事なまでにドラマにし、聞き手を引き込んでいきます。それはこのセルとクリーヴランド、そして小平市民オーケストラと共通しています。
コンサート雑感:小平市民オーケストラ第33回定期演奏会を聴いて
https://yaplog.jp/yk6974/archive/1748
多分、上記コンサート評を書いた時、このアルバムを参照し忘れていると思います。久しぶりにこの演奏を引き出してみれば、昨年聞きに行った小平市民オケさんの演奏がどんどんふつふつと蘇ってきます。このセルとクリーヴランドの演奏は、ライヴですから当然聴衆の反応があるわけで、その反応によってオケも高揚していく様子が手に取るようにわかります。それが畳み掛ける演奏やドラマティックさへとつながっているんだと思います。まさにアマオケで聴衆とオケとの関係に近いわけなんです。多分、日本のプロオケにはこれが足らないんだろうって思います。
それは、幸せなことではあるんですが東京に9つもプロオケがあることによって聴衆とオケとの距離が遠いのだと思います。この演奏のようにもっと近ければ、演奏は変わるのになって思います。素晴らしい演奏なんて、ほんのちょっとしたことで生まれるんです。けれどもその「ほんのちょっとしたこと」がそう簡単ではない。だからこそ練習しますし、想いもかける。少なくとも、日本のプロオケは、自分たちの技量を披露しようとすることをやめて、自分たちのメッセージを届けるんだという意識変革をして欲しいと思います。それだけで確実に名演はどんどん生まれるはずです。それはこのクリーヴランドの演奏や、小平市民オケの演奏が証明しています。
正直、私はこの演奏を聴いて、泣きそうになるのを抑えながら、原稿書いています・・・・・
聴いている音源
ジャン・シベリウス作曲
交響曲第2番ニ長調作品43
エクトル・ベルリオーズ作曲
「ファウストの劫罰」作品24より「ラコッツィ行進曲」
ジョージ・セル指揮
クリ―ヴランド管弦楽団
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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