かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:團伊玖磨 歌曲集「マレー乙女の歌へる」

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回は團伊玖磨が作曲した歌曲集「マレー乙女の歌へる」を取り上げます。

日本人作曲家の歌曲集といえば、戦前の作品が多いのですが、戦後にも素晴らしい作品が作曲され続けています。そんな一つがこの「マレー乙女の歌へる」だと思います。

このアルバムは2枚組になっていますが、今回一つとして一気に取り上げます。それはこの作品がそもそも一つのものだからです。イヴァン・ゴルの詩「マレーの歌」を堀口大學が訳したもの(「馬来乙女(まらいおとめ)マニヤナの歌える」)が歌詞となっており、それが「マレー乙女の歌へる」なのです。

堀口すみれ子さんのお話。
https://www.juca.jp/blog/2014/04/%E5%A0%80%E5%8F%A3%E3%81%99%E3%81%BF%E3%82%8C%E5%AD%90%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%A9%B1%E3%80%82.html

2001年ですから、戦後も21世紀の作品だということになりますから、これこそ現代音楽だと言えるでしょう。現代音楽により19世紀〜20世紀にかけての詩人が紡いだ世界を、日本語で表現されたものを音楽として表現する・・・・・こう書きますと複雑なように見えますが、和声以外はそれほど複雑ではなく、むしろ團氏はストレートに表現しているように思います。

特徴的なのは、時折和声としてマレー風のものが出てくる点です。これは戦前からの名家である團家ゆえかもしれません。マレーってどんな和声だっただろうかというときに、すっと出てくるというのはセンスですね。

團伊玖磨
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%98%E4%BC%8A%E7%8E%96%E7%A3%A8

堀口大學との親交だとかは、19世紀の音楽運動の影響を強く受けている作曲家だとも言えます。そういう理解が、日本の演奏家たちには少ないんですよね。だから歌詞をぞんざいに歌う人も多のかなって思います。この演奏は初演を収録したものなんですが、すこし固い部分があったのかなって思います。歌詞が聞こえにくくて、ヴォリュームを上げるとああ、こんな歌詞なんだなってわかるんですが、クラシック特有の発声が逆にわかりにくくしてしまっているなあって思います。

やはり、歌曲って歌詞がわかってなんぼですから。日本語なのに歌詞カードがないとっていうのも、どうかなあって思います。まだ最新の作品と言ってもいい作品ですから、演奏が重ねられればまた変わるのかなって思います。多分、西欧的なビブラート発声なので聞こえづらいんじゃないかって思います。東欧的なノンビブラート唱法のほうが、この作品は歌詞がわかりやすい分、世界を伝えやすいのでは?と思います。その点が残念です。歌唱はもう永井女史なので十分なのに。

なぜマレー風が時折出てくる程度なのかは、歌詞がわかればある程度推測できるもので、その意味では歌詞を書き写さなかったのは時間の関係上しょうがなかったとは言え、今にしてみれば残念に思っています。けれども、日本語で歌詞カードがないとというのもねえって思います。実際、私はおなじ小金井市立図書館でJpopも借りてきていますが、歌詞を書き写しておけばよかったと思ったことは一度もないからです。こういう点、ソリストの皆さんには念頭においてほしいなって思います。クラシックを聴くということは、芸術を楽しむという以前に音楽を聴くことであり、それは他のジャンルと市場においては同列なのだ、ということなのです。

ですから、歌詞がわからないとなれば、そのジャンルを避けるのは人間として当然で、芸術を広めるという看板を背負っているという自負を持ってほしいんですね。さすれば、表現は変わってくると思うんです。この演奏は半ば仲間内に対する演奏になってしまっているのが残念です。この作品を、これから演奏する人たちが、如何に日本語の歌詞を大切にしながら、相手に伝えるということを意識した上で、芸術として表現するのか。そこに期待したいと思います。




聴いている音源
團伊玖磨作曲
歌曲集「マレー乙女の歌へる」
永井和子(メゾ・ソプラノ)
大和田葉子(フルート)
小谷彩子(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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