今回の神奈川県立図書館所蔵CDは、シベリウスの交響曲第3番と第5番。ベルグルンド指揮、ヘルシンキ・フィルの演奏です。
全くの順番なのに、このエントリがまるで追悼になってしまうことに、偶然のいたずらを感じます。慎んでベルグルンド氏のご冥福をお祈りいたします。
この音源を借りましたのは、2年ほど前。シベリウスの交響曲に興味が向き始めて、カラヤン/ベルリン・フィルのを借りた時からシベリウスの交響曲を全部聴こうと思い、他の物を借りつつ機会を狙っていました。
ベルグルンドと言いますと、まさしくシベリウスの曲の指揮で名声を得た人です。
パーヴォ・ベルグルンド
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%83%89
シベリウスといえば、コアなファンの間では、ベルグルンドがかなり人気です。そういったことを知っていたことから、この音源を借りることにしました。第5番がカラヤン指揮のものとダブっているにも関わらず・・・・・その理由は、このカップリングとシベリウスの交響曲の発展の関係にあります。
第3番と第5番はともに3楽章ですが、それは第2番からの発展によるもので、しかも音楽的にもとても似通っています。第3番作曲時はまだフィンランドが完全に独立していませんが、すでにあまり攻撃的な音楽は影をひそめています。むしろ、民族の音楽を堂々と鳴らす方向へと舵を切っています。楽章数やその構成、そして音楽ともに各々関連がこの二つにはあるわけです。
交響曲第3番 (シベリウス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC3%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9)
交響曲第5番 (シベリウス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC5%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9)
それは以前取り上げましたカラヤンでも同じことでして、第5番と第7番とがともに関連しているわけなのです。シベリウスの場合、必ずしも番号順に聴くのがいいわけではありません。第4番と第6番はともに4楽章制を採っていて、それも関連しています。シベリウスはそういった交響曲同士の関連性を抜きにしては語れません。
しかし、演奏を楽しむためにはあまり重視しなくてもいいと思います。第5番は聴き比べますと面白いです。カラヤンは各パートがはっきりと浮かび上がるよう演奏していることで、曲の構成が分かりやすくしていますが、ベルグルンドはそれよりも、堂々と音楽を鳴らすことに傾注しています。第3番と第5番の特に各々第3楽章では、オケに正確性が増す度に熱いものが混みあがってくる演奏になっているのが素晴らしいと思います。
それはなかなかできることではありません。「情熱と冷静の間」のバランスが完璧でないと難しい芸当です。しかし、それをベルグルンド/ヘルシンキ・フィルのコンビはいとも簡単に現出させています。
私たちはベルグルンドを「シベリウスの専門家」と考えがちなのですが、この演奏を聴きますと、そうではなく「祖国の大作曲家に対する大いなるリスペクト」の結果がそこに現われているにすぎないのではないかという気がします。その意味で、ウィキの「シベリウスの専門家としても知られているが、本人はそのことにあまりこだわっていない。」というベルグルンドに関する記述は間違いないように思います。
この演奏から沸き立つもの。それは、自然に湧き上ってくる、祖国への敬愛だと思います。特にアジテートすることなく、自然に熱い思いが音楽へと乗り移る・・・・・それは勢いよりも、丁寧さです。だからと言ってテンポが冗長なのではなく、引き締まったものも持っています。音も各パートがはっきり浮き上がるように聴こえつつ、それが混然一体となって、私たちの体を包み込むのです。
惜しい指揮者を亡くしたと思います。私はこの演奏ではっきりと、自分のシベリウス観の間違いを指摘されたように思います。私はそれまでシベリウスは国粋主義者と思っていた節がありました。しかし、この演奏でそれは間違いであって、自然な民族主義者であるということを、まるで頭を殴られるように教えられたのです。
合掌・・・・・
聴いている音源
ジャン・シベリウス作曲
交響曲第3番ハ長調作品52
交響曲第5番変ホ長調作品82
パーヴォ・ベルグルンド指揮
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
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