かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:リストのベートーヴェン・カンタータ

今回のマイ・コレは、リストが作曲した「ベートーヴェンカンタータ」です。カップリングがベートーヴェンの合唱幻想曲という変わり種。ヴァイル指揮、WDRカペラ・コロニエンシス他の演奏です。

リストはあまり知られていませんが声楽曲も書いていまして、宗教曲、世俗曲共にかなりの数を残しています。宗教曲は多少知られていますが、世俗曲となるとさっぱりでして、私ですら存在は知っていても歌ったことがありません。

そんな世俗曲の一つが、この「ベートーヴェンカンタータ」です。1845年に作曲された、ボンのベートーヴェン像除幕式のための作品です。ですので正式には「ボン・ベートーヴェン記念像除幕式のための祝典カンタータ」といい、サール番号67番が振られています。

昨年はリスト生誕200年でしたが、このベートーヴェンカンタータが話題に上ることはあまりなかったように思います。このコーナーは購入順にエントリを挙げていますが、何度飛び越して取り上げようかと思ったことか!

リストはピアノ曲がとくに有名ですが、管弦楽が好きな方であれば交響詩のジャンルを確立した作曲家としても知られている作曲家だと思います。そういったオーケストレーションの部分で、このカンタータは特に目を瞠るものがあります。特に、「大公トリオ」の一節をパラフレーズにして音楽を展開するという手法は、まるでそこにベートーヴェンがロマン派の衣をまとって降り立ったかのようです。

リストの功績として、ベートーヴェン交響曲をピアノ版へ編曲したというものがありますが、ここでは声楽を伴った管弦楽となって現われているのです。それは気高い精神と祝祭感につつまれ、気品を保ち、「そこにベートーヴェンがいる」ような感覚すら抱かせます。特に合唱団が歌う讃美の歌詞に含まれる呼びかけは、「そこに存在する」ことをはっきりと示しています。その点に、この曲がカンタータであるとはっきりと教えてくれます。

当時、ベートーヴェンはまさしく「楽聖」として崇め奉られる存在になっていました。リストもそういった考えを持つ一人でした。それが一方でベートーヴェン交響曲を全曲ピアノ版へ編曲することへつながり、一方でこの「ベートーヴェンカンタータ」を作曲することにもつながったと言えましょう。実際、リストは12歳の時にベートーヴェンと会っていますし、少なくとも、後のリストの作品(特に交響詩)に影響を与えた作曲家のひとりであったことは間違いありません。

そのテクストでこの作品を考える時、やはりベートーヴェンの二つのオーケストラと声楽のための曲を想起しないわけにはいきません。それは、「第九」と合唱幻想曲です。もちろん、ベートーヴェンだけではなく恐らくバッハも念頭にあったとは思いますが、ほとんどはベートーヴェンであろうと思います。場合によってはベートーヴェンカンタータ「静かな海と幸運な航海」もあったかもしれません。ただ、祝祭感ということからすれば、やはり第九と合唱幻想曲だと思います。

だからこそですが、このCDでは合唱幻想曲がカップリングされていると言えるでしょう。第九の第4楽章も同時に収録すればもっと分かり易かったとは思いますが、何分ヨーロッパには第4楽章だけを収録するということはあまりやりませんので・・・・・・

そもそも、このディスクは2000年に行なわれたボン・ベートーヴェン国際音楽祭でのライヴ録音です。そこで第九を演奏していないとカップリングは難しいでしょう。それは私たち聴き手に委ねられたと言えるかと思います。

ベートーヴェンの合唱幻想曲は第九の下となったとも言われている作品で、以前にもミサ・ソレムニスとのカップリングで取り上げています。1808年に作曲され、交響曲第5番と第6番とともに初演されていますが、実はメインがこの合唱幻想曲だったのです。

合唱幻想曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88%E5%94%B1%E5%B9%BB%E6%83%B3%E6%9B%B2

現代ではシンフォニストとしてとびぬけて有名なベートーヴェンがなぜこの曲をメインに持ってきたのかを考える時、いろんなベートーヴェンの特殊性、特に先見性が注目されがちなのですが、私はそれと同時にヨーロッパがいまだに持っている「声楽は至上の楽器」という考え方が色濃く反映されていると思っています。ふつうそれは宗教曲至上主義という形で現われますが、ベートーヴェンはそれをもっと世俗的な音楽で、しかし気高き精神を持ったもので実現しようとしたと思っています。その一つにミサ曲ハ長調の存在がありますし、それがミサ・ソレムニスへとつながり、やがて第九へと結実していくことになります。

それを受けて、ロマン派の時代を通じて、作曲家たちは宗教曲だけではなく世俗的な祝祭感あふれる曲も創作していったと考えることが出来るでしょう。その一人に、リストがいたわけです。そして、「ベートーヴェンカンタータ」は生まれました。

一年遅れで取り上げる、リスト生誕201年にふさわしい楽曲だと思います。



聴いているCD
フランツ・リスト作曲
ボン・ベートーヴェン記念像除幕式のための祝典カンタータS67
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
合唱幻想曲 作品80
ダイアナ・ダムロウ(ソプラノ)
イェルク・デルミュラーテノール
ゲオルク・ツェッペンフェルト(バス)
パウル・コーメン(フォルテピアノ
ケルンナー・カントライ
ブルーノ・ヴァイル指揮
WDRカペラ・コロニエンシス
(ドイツ・ハルモニア・ムンディ BVCD31005)



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