今回のマイ・コレは、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲全集の第1集です。新ハイドン弦楽四重奏団の演奏です。
恐らく、某SNSの読者の方には重複するかと思いますが、ご容赦ください。と言っても、取り上げたのはずいぶん昔なので、もう忘れている方もいらっしゃるかもしれませんが。
これはナクソスから出ているものですが、これを買った10年ほど前、私は室内楽にようやく興味が向き始めていました。そこで、「アンダンテ・カンタービレ」が入っているチャイコフスキーからまず買おうと思い、購入しました。
そしてもちろんですが、全集をそろえるつもりで購入したのです。ところが、購入時よりも前に出ていたにもかかわらず、第2集がなかなか棚になかったため、此れもじつはそのまま放置されたものだったのです。
今では第2集も出ていますが、今回取り上げるのはこの第1集だけです。今では先に図書館で全集を借りてきてしまっています(其れにつきましてはまた別途ご紹介します)。
ナクソスにしては珍しく番号順となっているのも嬉しい編集です。まず第1番ですが、1871年に作曲されました。作品番号11というのが表わしているように、若い時の作品でして、モスクワ音楽院の教師に就任してまもなくに作曲されています。
弦楽四重奏曲第1番 (チャイコフスキー)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC)
これがロシアで初めての本格的な室内楽曲などと、だれが信じられましょうか。形式や様式、楽章数など、どれを見ても堂々たる作品です。たしかに、楽器間の会話という意味では、相互の語りあいが少なく合奏する部分が比較的多いのも特徴で、それゆえに駄作の烙印も押されることがありますが、しかし音楽が持つ温かみや、それでいて清潔感を有するのは決して習作とは言えません。急遽作曲されたなんて信じられないほどです。
恐らく、急きょで犠牲になった部分は楽器間の掛け合いだと思います。それ以外は全く私たち聴き手には問題ない音楽がそこに存在します。
しかし、ウィキでも触れられていますが、チャイコフスキーの室内楽は忘れられた存在です。実は私が好きなのは第1番よりも第2番なのです。
その第2番は1873年末から74年1月にかけて作曲されましたが、そのスピードにしては第1番よりも楽器間の掛け合いが多くなり、不協和音など和声に特徴があるものが多く、第1番よりも味わい深いものに仕上がっています。特に第1楽章冒頭の不協和音には驚くばかりです。第1番のとても温かい音楽とは打って変わって、まるで暗い心を覗いているような、全体的には寂しさすら漂うような作品になっています。
弦楽四重奏曲第2番 (チャイコフスキー)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC)
同時代にはスメタナなどもいるため、チャイコフスキーの弦四は調性音楽的すぎることから評価が低いですが、決してそんなことはないと私は思います。第2番などは時代の流行もとらえつつ、しかしモーツァルトなどの古典に範をとったチャイコフスキーらしく、決して調性音楽の範疇から出ることはありません。それでいて人の寂しさや悲しみ、喜びがきちんと表現されているように思います。
演奏面でも、それが顕著でしょう。特に、新ハイドン弦楽四重奏団の演奏は、過度にアクセントを付けないことで、かえって豊かな表情をつけています。ただ、短調部分ではもう少しアインザッツを強くしてもよかったかもしれません。
はじめはあまりこの演奏に不満がなかったのですが、ある時点から特に第2番を聴くにつけ、少し不満を持つようになりました。それが短調の表現だったのです。それがいつしか、第2集がなかなか手に入らないことで、図書館で全集を借りることに繋がっていきました。そのきっかけを作ったCDでもあります。
少なくとも、私にチャイコフスキーの室内楽だって素晴らしいものなのだよと教えてくれた演奏です。
聴いているCD
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
弦楽四重奏曲第1番ニ長調作品11
弦楽四重奏曲第2番ヘ長調作品22
新ハイドン弦楽四重奏団
(Naxos 80550847)
このブログは「にほんブログ村」に参加しています。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。