かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト弦楽四重奏曲全集7

今回の神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーは、モーツァルト弦楽四重奏曲全集の第7集です。

第7集では、第20番と第21番が収録されています。この二つはそれまでの作品とは時期があくことになります。ハイドン・セットの一番最後である第19番から第20番が1年7か月後の1786年8月19日、「プロシア王四重奏曲」の最初を飾る第21番が1789年6月で4年6か月ほどたっています。

そもそも、この二つの間でもほぼ3年の月日が流れています。この時期、モーツァルト弦楽四重奏曲に興味を示さなくなったのでしょうか?

そういった部分もあったようですが、一番の理由は、自らが主宰する自作発表のコンサートに、客が集まらなくなったというのが大きいのです。実際、この時期弦楽四重奏曲の断片も多く残されており、混乱ぶりが見て取れます。

ここまであまり断片というのは残されていなかったのですが、この1780年代後半になって、未完成の断片が多く残されています。特に多いのが、「プロシア王四重奏曲」を作曲した時期に当たるのです。

第20番は独立した楽曲です。これはハイドンにならったとも言われていますが、詳しいことは定かではありません。楽曲はハイドン・セットよりさらに深みがまし、より精神性に重きを置くようなものになっています。特に、低音楽器と高音楽器、つまりヴィオラとチェロ、ヴァイオリンとの関係がより複雑になっていまして、音楽が一つ確かに高みへと昇っているのがはっきりと見て取れます。

第21番になりますとそれはさらに透明感が増し、あたらしい時代を告げるかのようです。そう、時代は移り変わっていました。貴族が没落し始め、市民が台頭する時代へと、徐々にですが移り変わっていました。

フランス革命・・・・・これがもたらした影響はこういった音楽にも確かにあったということが言えるかと思います。このモーツァルトの状況を説明するのに、単にモーツァルトの音楽が飽きられたということだけで述べることはできません。この時期、ようやくベートーヴェンがデビューしたかしないかという時期(モーツァルトへ弟子入りしたのが1787年)です。いまだモーツァルトは衰えたとはいえ、それなりの人気を保っていました。にも関わらずコンサートで収益が得られないのは、聴きに行く人が単純に減ったからだと考えるほうが妥当です。

その上で、モーツァルト自身がフリーメーソン会員であったということも考える必要があるでしょう。フリーメーソンこそ、来る市民の時代を担った人たちだったのですから。

モーツァルトという作曲家は、当時実はとても微妙な立場であったとわたしは考えています。時代の移り目にあって、経済的な理由から体制側と反体制側どちらにもついた人であったということです。そのことが、特に「プロシア王四重奏曲」を作曲した時期に混乱や困窮という形になってしまったように思います。

体制側は没落していくため、当然お金が払えない。しかし、反体制側としては、フリーメーソン会員以外は体制の犬ですから、あまり聴かないため知名度が低い・・・・・そこで、難儀してしまったというのが実際であったように思います。

しかし、音楽はそんな時期であるのに突き抜けているのは素晴らしいと思います。本当にモーツァルトは「音楽バカ」、つまり音楽が心の底から好きだったのだなあと思います。そんな苦しい時に、美しい音楽を必死になって生み出していく。こんな素晴らしいことが出来る人はなかなかいません。苦悩と言えばベートーヴェンが言われることが多いですが、モーツァルトだって晩年は苦悩の連続です(健常者かどうかの差でしかありません)。

そんなことを伝えたいのか、イタリア四重奏団の表現はここでかなりアインザッツを強めにしています。特に第20番の第3楽章での強いアクセントなどは、それまでの番号の曲ではなかったほどで、この第7集に来ていきなりです。そうなると、イタリア四重奏団のメンバーがモーツァルト弦楽四重奏曲をどう「俯瞰」しているかが分かってきます。

そう、これも「発展過程」を重視したということなのです。ただ、私としましてはすでにハイドン・セットでこういった演奏をしてもいいのでは?と思うので「ここでようやくですか〜」という感想もあるのですが、時代背景までを考えてと言うことなのであれば、それはアリかなとも思います。

もしモーツァルトが長生きしていたとすれば、果たして次なる時代にどんな音楽を書いたのか、それを彷彿とさせる音楽であることは間違いないからです。




聴いている音源
ヴォルグガング・アマデウスモーツァルト作曲
弦楽四重奏曲第20番ニ長調K.499
弦楽四重奏曲第21番ニ長調K.575「プロイセン王第1番」
イタリア四重奏団




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