かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン弦楽四重奏曲全集16

神奈川県立図書館ハイドン弦四全集第16集は、第三トスト四重奏曲の第2番から第5番までに当たる、第64番から第67番までが収録されています。

そもそも、この「トスト」というのはヴァイオリニストであると第一をとりあげた時に言及したかと思いますが、実はハイドンとおなじ職場のような方なのです。というのも、彼はエステルハージ家のお抱えオーケストラのヴァイオリニストだったからです。

実は、そのトストにちなんだ曲が交響曲に存在します。それが、第88番「V字」です。

交響曲第88番 (ハイドン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC88%E7%95%AA_(%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3)

この「V字」の作曲が1787年で、第一から第三トスト四重奏曲はその翌年から成立しています。そう較べてみますと、納得のいく点が第64番に存在します。それは、V字の第一楽章第一主題と第三トスト第2番第4楽章第一主題がとてもよく似ているという点です。

ともにトストにちなんで(というより、弦四の場合はトストの要請で)作曲されたという経緯を考えますと、ハイドンの人柄をよく表しているとともに、その音楽性の高さにも驚かされます。

よく、ハイドンの弦四と言えば、ほとんど晩年と言っていい、エルデディ四重奏曲くらいしかという意見もありますが、私はそれには組しません。少なくともプロシア四重奏曲くらいからは珠玉の音楽が並んでいます。それは年表で確認してみればわかりますが、交響曲作曲家としても有名になった時期とも重なるんですよね。

つまり、ハイドンはとても努力して音楽を作っているわけで、なおかつその数はモーツァルトにも匹敵します。モーツァルトよりも長生きだったということももちろんありますが、それだけでは説明つかない、彼の類まれなる「努力する」という才能を、この「トスト四重奏曲」には感じざるを得ないのです。

第三トストの第3番から第5番までは、逆にそれほど特徴のある曲はないですが、しかし音楽としては気品を湛え軽妙さを備える、落ち着きと楽しさを持つ曲が並んでいます。この要件からすればBGMとしては最良のものだと思いますが、どう考えてもこれはBGMとして使われたのではなく、もっとアカデミックな場所での会合、つまり「サロン」で演奏されたものであるとしか考えられないわけです。

注目する部分と、そうではない部分とが混在し、メリハリがついている。そんな曲、弦楽四重奏曲というアンサンブルとしては非力な編成ではうるさい場所では音がかき消されてしまいます(今のようにスピーカーなんてないですからね)。もっと静かな場所での演奏会を念頭に置いているとしか考えられません。そして、そこで多くの方が気楽かつ真剣に耳を傾けるという場での演奏。となると、サロンしかないわけです。

ハイドンの音楽が軽視される理由として、これはあくまでも私見ですが、日本ではオーケストラ曲が好まれ、室内楽は隅に追いやられているという現状が底流にあるだろうと思っています。室内楽からオーケストラが発達したということをきちんと理解したうえで、オーケストラ曲の壮大かつ雄大な音楽が好きだというのではなく、まるでオーケストラ曲が貴く、室内楽は下品なものという意識がないだろうかという気がします。もちろん、そんな人たちばかりではないと思いますが、どうもそんな気が私はするのです。

例えば、バルトークにしても、私は少なくとも室内楽曲のほうに魅力を感じますし、いずれCDも買いたいと思いますが、どうも昔から交響曲が好きだった割には、バルトークに関してはシマノフスキ交響曲に出会った時のような感激がないのです。恐らく、それは私の美意識に合わないからだと思いますし、まずは室内楽をじっくり聞くべきだろうと思います。そういえば、県立図書館にもバルトーク全集がありますね。以前、それをごっそりと借りている方を見たことがあります。

そういう意味では、県立図書館は現代のサロンの役割の一端を果たしているのかもしれません。CD店ではなかなか取り扱いをしなくなったような、素晴らしい演奏が綺羅星のごとく存在する・・・・・その一つが、このハイドン弦楽四重奏曲のように思うのです。



聴いている音源
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
第3トスト四重奏曲作品64 第2集
弦楽四重奏曲第64番ロ短調作品64-2 Hob.III.68(第3トスト四重奏曲第2番)
弦楽四重奏曲第65番変ロ長調作品64-3 Hob.III.67(第3トスト四重奏曲第3番)
弦楽四重奏曲第66番ト長調作品64-4 Hob.III.66(第3トスト四重奏曲第4番)
弦楽四重奏曲第67番ニ長調作品64-5 Hob.III.63「ひばり」(第3トスト四重奏曲第5番)
エオリアン弦楽四重奏団



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