今月のお買いもの、最後の5枚目はナクソスから出ています、シューベルトのミサ曲全曲演奏シリーズから第1番と第3番です。
シューベルトのミサ曲に出会ったのは今から16年ほど前。アマチュア合唱団である混声合唱団「樹林」の定期演奏会で取り上げられたのがきっかけです。
実はこの合唱団と以前私が入っていた合唱団とは奇妙な縁がありまして・・・・・それは話すと長くなりますので割愛しますが、関係があったからこそ聴きに行ったのですが、もう一つの理由はシューベルトのミサ曲だったということです。
当時、シューベルトのミサ曲は正当な評価をされておらず、合唱をやられている人たちだけが素晴らしいと評価しているに過ぎないという国内の現状でした。そういった点があったため、私は是非その真偽を自分の耳で確かめてみたいという一心で聴きに行ったのです。その時に取り上げられていたのが第6番で、それをきっかけにCDを購入しています。
マイ・コレクション:シューベルト ミサ曲第6番
http://yaplog.jp/yk6974/archive/472
その後、まだ取り上げてはいませんが第2番を購入し、シューベルトはそのままになっていました。ぜひともシューベルトのミサ曲は全曲そろえたいなと思っていたのですがなかなか機会がなく、ようやく見つけたのがこのナクソスだったのです。
あとは第4番と第5番のみになって、ほっとしています。
さて、まず第1番ですが、1814の作曲で、彼の最初のミサ曲でありながらすでにシューベルトらしいロマンティシズムにあふれています。形式的にはモーツァルトの影響を感じるものですがそれは形式に注目して注意していないと見過ごすくらい、既にシューベルトらしさが出ています。
若書きのせいなのか、少しドラマティックな点に欠けるのが残念な点でしょうか。それ以外は本当にシューベルトらしい甘美で美しい音楽に満ち溢れています。特にクレドはゆったりとはじまるのはシューベルトのミサ曲の特徴でして、その点はかつてモーツァルトやハイドンの真似と批判されましたがそんなことは全くありません。
第3番もそういった点がより前面に押し出されています。1815年の作曲ですが、もしモーツァルトの真似というのであればこの第3番のほうがそういった分9息を持っています。動きの激しいクレドがそれを物語っていますが、しかしその音楽自体は物まねではなく、すでにシューベルトのロマンティシズムにあふれています。
そもそもそれを言ってしまうと、ではロマン派とはいったいどういった時代だったのかということに行きつかざるを得ないのです。ロマン派とは実は形式的には目立った新しいものが生まれた時代ではないのです。基本的に古典派までに成立した形式を、さらに自由に使い始めた時代です。恐らく形式的にはリストやサン=サーンスが使い出した循環形式くらいで、しかもそれももともと、ルネサンス期のミサ曲に源流を見ることが出来ます。
こういった作品を聴きますと、わたしは作曲者と年代とで時代区分をすることが果たして正しいのだろうかという気がします。もちろんそれでいい作曲家もいますが、たとえばシューベルトはある程度古典派の時代に作品を書いていますし、それはパガニーニにしても同様です。ウェーバーもそうです。ヴィオッティもそうですね。でも、彼らと同じ時期にベートーヴェンが第九や最後の弦四のグループを作曲していることも忘れてはなりません。
シューベルトのミサ曲を聴くということは、19世紀が始まった時期の音楽というものを考えさせられるだけのインパクトを実は持っています。第九だけでは見えてこない、ロマン派の扉を開いた人たちの音楽なのです。そして、改めて第九という曲の位置するところを教えてくれます。
その上で、作曲者がロマン派なのかそれとも古典派なのかという、「どういったスタイルの作曲家なのか」ということをむしろ考えるべきなのではないかと思います。そういった点に注目しますと、実はいかに19世紀初頭、時代が動いていたのかということに思いをはせることが出来るのです。
さて、演奏にも触れておきましょう。ナクソスですと演奏が・・・・・という人もいると思いますが、このシューベルトに関しては全く問題ありません。オーケストラもアンサンブルが素晴らしいですし、また合唱団もとても表現力豊かで、力強さと繊細さを兼ね備えています。心配せず購入していいでしょう。
聴いているCD
フランツ・シューベルト作曲
ミサ曲第1番ヘ長調D.105
ミサ曲第3番変ロ長調D.324作品なし141番
トリーネ・ウィルスベリ・ルント(ソプラノ)
ベッティナ・ランチ(アルト)
リ・ミンウ(テノール)
アシャフ・レヴィチン(バス)
イモータル・バッハ・アンサンブル
モルテン・シュルト=イェンセン指揮
ライプツィヒ室内管弦楽団
(Naxos 8.572279)
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