かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン交響曲全集20

神奈川県立図書館所蔵CDハイドン交響曲全集の今回は第20回目。収録曲は第64番から第66番の3曲です。第64番と第65番が「シュトゥルム・ウント・ドランク」期、第66番が「聴衆への迎合と実験」期の作品となります。

今回も以下のサイトを参照しています。

ハイドン交響曲
http://www.kanzaki.com/music/mw/sym/haydn

二つの期にまたがっていることもさることながら、さらに作曲年代が数年ずれているものが並んでいることになります。

まず、第64番です。
http://www.kanzaki.com/music/perf/hyd?o=Hob.I-64

作曲は1773年秋とされています。「時の移ろい」なんて気の利いた題名がついていますが、第2楽章にそんな雰囲気がありますがしかし第1楽章はとても軽快に始まります。それでいて気品もある、ちょうど次の時期を予想させるような雰囲気をもちます。それもそのはず、この作品は交響曲としては「シュトゥルム・ウント・ドランク」期の最後を飾る曲だからです。

サイトでは珍しく各楽章の主題の楽譜が掲示されていますが、それを見ても流麗なもので、ハイドンの音楽が明らかに変化をしていることが楽譜上からも見て取れます。それが実際音になりますと、それまでの軽妙さなどいったいどこへ行ったのかという雰囲気です。ハイドンがいろいろ悩みながら、新機軸を打ち出してゆくさまがこの曲にも現出しています。

解説の通りいろんな要素が入っていて楽しい上に、気品を湛えるその音楽は、新しいステージへハイドンが上がってゆくことを意味しています。

次に第65番です。
http://www.kanzaki.com/music/perf/hyd?o=Hob.I-65

第64番同様主調がイ長調なのですが、作曲年は少し古く1769年。4年の歳月は第64番と比べますとかなりの差となって表れています。第1楽章はやはり実験的なものがあり、まだ次のステージという感じはありませんが、確実に何かをつかんでいる音楽になっています。堂々たるものもありますし、モーツァルトに影響を与えていてもおかしくないだけの内容を持っています。

ハイドンモーツァルトと出会ったのは1780年代に入ってからだとされていますが、実際にはその前にお互いの音楽は聴きあっているでしょう。そんなことがお互い1770年代に入って、特に1773年以降ハイドンモーツァルトともに音楽に変化が現われることでそれを物語っていますが、その伏線としてこの時期のハイドンの作品は大いにモーツァルトの中にあったことでしょう。音楽的も流麗なこの曲は、確実にこの時期最後の第64番へとつながっています。

そういった作品群を後輩であるモーツァルトが眺めた時、圧倒されたことは、後年彼が弦楽四重奏曲ハイドン・セットを書き上げるのに2年かかっていることにも現れています。作品を早く仕上げることで天才的なモーツァルトが、です。宗教曲でもそんな点は現れていますし、明らかにこの時期のハイドンの作品をモーツァルトは意識しています。

次に第66番です。
http://www.kanzaki.com/music/perf/hyd?o=Hob.I-66

この曲は「聴衆への迎合と実験」期の作品で、1775年から76年にかけて作曲されたと考えられています。それだけにモーツァルトに確実に影響を与えたであろう作品群のうちの一つと考えていいと思います。

18世紀の交響曲:作曲時期の比較
http://www.kanzaki.com/music/mw/sym/yc?s=18c

こういった表で見比べますと、本当にお互いが刺激し合っていることもさることながら、特にハイドンモーツァルトに影響を与えていることがよくわかります。ちょうどハイドンでいえば「シュトゥルム・ウント・ドランク」期と「聴衆への迎合と実験」期に、モーツァルトは多くの交響曲を生み出し始めていることが分かりますし、特にハイドンの「聴衆への迎合と実験」期が終わるころ、モーツァルトの作品はいきなり高みへと昇っていることが、この表では見て取ることが出来ます。

特に第1楽章冒頭の動機は、ハイドンも高みへと昇っていることが分かるもので、こういったフレーズがモーツァルトへ有形無形の影響を与えているのだと感じます。もちろん、この曲自体がモーツァルトに直接影響したわけではないと思います。しかし、モーツァルトは必ずハイドンの作品のいくつかを楽譜で見ているはずです。

特にハイドン交響曲で評価されているのが、パリ交響曲以降であることを考えても、二人の作曲家が出会ったことが、その後ベートーヴェンの高貴で精神的な高みへと昇った作品へと結実したと考えていいでしょう。ベートーヴェン交響曲を本格的に作曲し始めたころ、すでにハイドンモーツァルトもほとんどの交響曲を書き上げてしまっていたのですから(モーツァルトは当然すべて、です)。

そういった歴史の流れを考えるとき、ハイドンのこの時期の作品はとても重要なのです。

そういった作品群を、ドラティとフィルハーモニア・フンガリカはとても丁寧に、かつ大胆に演奏して、端整かつ軽快な演奏に仕上げています。こういったモダンのいい演奏も、もっと見直していいと私は思います。ピリオドにモダンが負けてほしくないなあと思います。性能が良いだけに犠牲にしてしまった点もありますが、逆に性能がいいからこそ、表現できるものだってあるわけなのですから。

それをこの演奏は常に感じさせてくれます。それだけに、ピリオド演奏には、逆に番号順での収録ではなく、成立順での演奏を期待したいところです。



聴いている音源
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
交響曲第64番イ長調「時の移ろい」Hob.I-64
交響曲第65番イ長調Hob.I-65
交響曲第66番変ロ長調Hob.I-66
アンタル・ドラティ指揮
フィルハーモニア・フンガリ


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