神奈川県立図書館所蔵CDハイドン交響曲全集の第22回目です。収録曲は第70番から第72番になります。
今回も以下のサイトを参照しています。
ハイドンの交響曲
http://www.kanzaki.com/music/mw/sym/haydn
さて、この第22集は昔の番号順の間違いが思いっきり出ている一枚となっています。第70番と第71番は「聴衆への迎合と実験」期の作品になるのですが、第72番は実はもっと前の、ハイドンの様式としては一番初期である「交響曲様式への模索」期のうち、エステルハージ家副楽長時代の作品になるのです。年月からしますとほぼ15年の月日が開いています。
作曲数が少ないベートーヴェンであっても、15年という月日はあきらかに様式に変化をもたらします。たとえば、第4番と第九に16年の開きがありますが、その差は歴然です。そういった差が、ハイドンにもあるわけです。
まず、第70番です。
http://www.kanzaki.com/music/perf/hyd?o=Hob.I-70
第1楽章の四分音符と八分音符を巧みに使った主題から展開される軽快な音楽は、新しい時代を感じ取りつつあるハイドンの意思を感じます。前衛作曲家とも言われるハイドンらしい作風だと思います。
次に第71番です。
http://www.kanzaki.com/music/perf/hyd?o=Hob.I-71
実は第70番と第71番はともに1778年から79年にかけての作曲ですが、特にこの第71番は気品と気高さが特徴です。特に第1楽章主題展開部の気高さは、ベートーヴェンへしっかりとつながっているように思います。その第1楽章は特に八分音符と長音のバランスが楽譜を見ますと絶妙で、この点におきましてはモーツァルトにもつながっているように思います。
恐らく、ハイドンはこの時期モーツァルトの存在は知っていただろうと思います。実際に二人が合うのは81年以降だと言われていますが、実際にはハイドンは楽譜等でモーツァルトの音楽に触れていた可能性は十分あるだろうと思います。そういったことが音楽に現われている可能性も否定はできません。まさしくモーツァルトはこの年に、第31番「パリ」を書いています。明らかにモーツァルトも音楽が変化していった時期と重なります。
そう考えますと、ハイドンとモーツァルトの関係というのは、ドイツ音楽がいかにあるべきかというスタンスを共有した関係だったともいえるように私は思います。当時はイタリア音楽が至上とされていたところに、ドイツ音楽の評価が高まっていた時期と重なります。その時代に、ハイドンとモーツァルトの存在があったことを考えますと、彼らの関係はもっと違った点から再評価されるべきに思うのは私だけなのでしょうか。
最後に第72番です。
http://www.kanzaki.com/music/perf/hyd?o=Hob.I-72
なんでこの曲が第72番とされてしまったのかが不思議な作品です。1763年8月から12月にかけて作曲された作品です。ですので、上記二つよりも15年ほど前の作品ということになります。この作品の面白い点は、最終楽章に変奏曲がある点です。この作品が作られた「交響曲様式の確立」期からすれば特段おかしなことではありませんが、かといって交響曲に必ず変奏曲があるというわけではないので、珍しいかと思います。ただ面白いのは、この様式はベートーヴェンにおいて第3番「英雄」で採用されている様式であるということです。ベートーヴェンも変奏曲を多用する作曲家として有名ですが、交響曲において変奏曲を使うというのは珍しいことです。彼こそ、交響曲の様式の完成者なのですから。その彼をして、先輩ハイドンと同じことをやっているというのが、注目点なのです。ただそのやり方はベートーヴェンとハイドンとでは明らかに違っています。
ハイドンはサイトの解説にもありますように協奏的変奏曲ですが、しかしベートーヴェンの英雄は、あくまでも交響曲としての様式の中で変奏されていくのが特徴です。
この第72番は気品を湛え、軽快さもある点が上二つの作品とおなじ時期とされてしまった理由かもしれませんが、確かに第1楽章のホルンなどを聴きますと、「聴衆への迎合と実験」期の作品としては、ずれているなと私は思います。
そういった点からしますと、もしかするとこういった番号順というのは、ハイドンにおいては彼のいろんな様式を一度にきける、いい機会なのかもしれませんね。
聴いている音源
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
交響曲第70番ニ長調Hob.I-70
交響曲第71番変ロ長調Hob.I-71
交響曲第72番ニ長調Hob.I-72
アンタル・ドラティ指揮
フィルハーモニア・フンガリカ
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