今回の県立図書館所蔵CDは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番と前奏曲集です。ピアノはアシュケナージとリヒテル、コンドラシン指揮モスクワ・フィルです。
ステレオ録音初期のものですが、古臭さを全然感じません。
まず、ピアノ協奏曲第2番ですが、この曲はラフマニノフの出世作と言っていい作品です。交響曲第1番を作曲したのち、酷評故彼はうつ状態になり、精神的に不安定な状態が続き、やがて全く作曲できなくなります。その後、さまざまな治療ののち、回復した時に書き上げたのが、このピアノ協奏曲第2番です。
この曲を特徴づけるのは、なんといっても第1楽章冒頭のピアノ動機です。ロシア正教の鐘の音をモティーフにしているとだけあって、本当にまるで鐘の音のようで、それを表現するアシュケナージも素晴らしいです。そういえば、アシュケナージはラフマニノフ協会の長を務めるほど、彼を尊敬しているピアニストでもあります。
この第2番は一見しますと映画音楽と揶揄されますが、その点があるのは確かだと思います。しかし、技術的に高いものが要求されるうえ、その鐘の音から紡ぎだされる音楽をきちんと表現するのは並大抵ではないでしょう。私は第3番とともに好きな曲です。
激しさと穏やかさが同居する第1楽章は、とてもドラマティックで、メリハリをつけないと全体が崩れてしまいます。アシュケナージ、オケともにその緊張感を持続し続けていて、あっという間に時間が過ぎてゆきます。
比較的穏やかながら、後半ドラマティックに展開する第2楽章。ここでも鐘の音が鳴り響き、雄大な風景を描写しています。第3楽章では再び冒頭から激しい音楽へと変化し、目まぐるしくドラマティックに音楽が展開してゆきます。しかし、ピアノのまるで鐘の音のような音は全く変わることがありません。
詳しいことはウィキペディアが手っ取り早いように思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%8E%E3%83%95)
前奏曲集のほうは、彼が作曲したふたつの前奏曲集、作品23と作品32から合計5曲が取られていて、その演奏をリヒテルが担当しています。そのピアノのなんとドラマティックなこと!ベートーヴェンのピアノ・ソナタにも匹敵するのでは?と思うくらいドラマティックで、ピアノ協奏曲を聴き終えた後でも全く遜色がありません。
アメリカ亡命後はほとんど創作活動をやらなかったラフマニノフ。その理由の一端を、この一枚は示している・・・・・そんな気がします。きわめてロシア的である一方、音楽的にも形式的にも保守的(ロシア正教に題材をとるなど)な彼の音楽・・・・・それゆえに選択せざるを得なかった「亡命」という道。
それをどうしても感じざるを得ないのです。
かつてソ連はラフマニノフの帰国を歓迎しようとしましたが、しかし音楽が彼のきもちを雄弁に語っている・・・・・そう思います。
聴いている音源
セルゲイ・ラフマニノフ作曲
ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18
前奏曲第12番ハ長調作品32-1
前奏曲第13番変ロ長調作品32-2
前奏曲第3番変ロ長調作品23-2
前奏曲第6番ト短調作品23-5
前奏曲第8番ハ短調作品23-7
ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ、第2番)
スヴァトスラフ・リヒテル(ピアノ、前奏曲集)
キリル・コンドラシン指揮
モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団