今回の県立図書館所蔵CDは、モーツァルト全集からピアノ協奏曲第14番から第16番までです。ブレンデルのピアノ、マリナー指揮アカデミー室内管、つまり、旧盤ですね。
なんで旧盤が見当たらないのかと思えば、すべて小学館の「モーツァルト全集」に入ってしまったから、ということのようです。確かにマッケラスと新盤を収録していますから、それで十分ですし、私としてもそっちのほうが好きなものもありますが・・・・・
すべてがすべて、新しいほうがいいとは限りません。人間がすることですから、当然古いほうがいい場合もあります。
特に、ピアノは若いうちでないと弾ききれない曲もあり、一概に新しいほうがいいとは言えないのです。
ですから、本来はこの旧盤もピアノ協奏曲だけでも分売してほしいものです。実際、第17番は入っていないですしT0T
明らかに新盤誘導〜
そういう背景には、すでにぺライアで持っているこの第14番から第16番までが、実際はこのブレンデルのほうが素晴らしい、という点に尽きるからです。颯爽としたオケ、同様に飄々としつつしっかりと演奏しきるブレンデル。そして、何より軽い!
それは軽薄ということではありません。モーツァルトは少なくともイタリアやフランスといった地域の音楽を体で習得していて、それが音楽、とくに楽譜上では八分音符の多用という点で具現化されているからです。
ですから、その八分音符をどれだけ軽く表現できるかは、この時代の協奏曲が室内楽的であるという側面を考えた場合、非常に重要なのです。
それを、ピアニストとオケどちらもきちんとやっているこの演奏は、確かに名盤のほまれ高いと私は思っています。たしかに、それはマッケラスの新盤でも同様ですしそれで足りるということも言えますが、かといってこれだけ颯爽としていて、どれだけ進歩できるのかは聞いてみないとわからない話ですし、ですからできれば比較ができるようにしておいてほしいのですね。
ですから、この全集を持っている県立図書館の役割は、非常に大きいと私は思っていますし、それを開架で貸し出すというのはとても大切なことであると思います。
実際、わたしはこの演奏を聴いて、マッケラスとのものも聴きたくなっていますし、できればぺライアで持っているものも新旧ともにブレンデルで聴いてみたいと思い始めています。
いろんな演奏を聴き比べることは視野も広がりますし、それこそクラシックを聴く楽しみでもあります。それを販売側が奪って、今後売れない時代にどれだけ売ろうというのでしょう?
今後、ますます図書館で所蔵することが不可欠になってくるような気がしています。その意味では、クラシックCDも所蔵する「義務」を法的に負う、国立国会図書館が完全閉架でよいのか?という議論も必要になろうかと思います。
恐らく、今後はこの手の「名盤」が聴けるのは図書館だけ、という時代が来ると思いますので・・・・・・失ってからでは遅すぎます。
聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
ピアノ協奏曲第14番変ホ長調K.449
ピアノ協奏曲第15番変ロ長調K.450
ピアノ協奏曲第16番ニ長調K.451
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
サー・ネヴィル・マリナー指揮
聖マーティン・イン・ザ・フィールズ教会アカデミー(アカデミー室内管弦楽団)