今月のお買いもの、今回はナクソスのシマノフスキ全集から、ストリージャ指揮、ポーランド国立カトヴィツェ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、シマノフスキ交響曲第1番と第2番です。
すでに、第2番に関してはEMIの輸入盤をご紹介しましたが、それを聴きまして、どうしてもシマノフスキは交響曲をそろえたい!と思ったのです。そこで、ネットで調べてみますと、どうやら第1番はこのナクソスしかないようで、第2番は重複しますが、買うことにしたのです。
まず、第1番ですが、1906年に作曲され、ワーグナーの影響が濃い作品です。確かにワーグナー的な音楽がそこには広がっており、後記ロマン派にさらにドグマが加わった音楽となっています。ただ、音楽的にはすでに不協和音がかなり使われており、シマノフスキの個性がそこかしこに現れています。
作曲者が「和声の怪物」と呼び、批評家から猛烈な批判をあびるだろうと発表時に本人がいうくらい、確かに和声は分厚すぎますし、その分おどろおどろしい音楽です。しかし、それをあえて作曲する点が素晴らしいと思います。ベートーヴェンに匹敵するくらいの自我の強さなのではないかと思います。
しかし、やはり時代は20世紀。その影響のほうがはるかに大きい作品です。上記でも述べましたが、ワーグナーですらパルシファルでようやく使い始めた不協和音を存分に使い、後期ロマン派というよりはもう現代音楽と言っていいほどの和声です。ただ、音楽がきちんと流れているんですね。だからこそ、この音楽からは血の通ったものを感じます。
とても哲学的で、形而上的な音楽が鳴っていますが、それでもあたたかみがある点がこの人の特徴だと私は思います。当時のいろんな作曲家から影響を受けていますが、それでいてこれだけ個性的な音楽を書くという点から、彼の一貫した姿勢が見て取れます。
しかし、いきなり2楽章形式という、ユニークなことをやってのけています。現代音楽の交響曲で4楽章が崩れるなんて別に珍しいことではありませんが、マーラーがその直前の作曲家であるということを考慮しますと、いきなり2楽章というのは本当にびっくりします。
演奏はとても熱の入ったものでして、祖国の作曲家だからでしょうか、フォルティシモはアンサンブルを一にして盛り上がってきますし、きいているこちらも熱いものが込みあがってきます。多少、ヴォリュームを大き目にして聴きますとそれがもっと体感できるのでは?と思います。
第2番はすでに持っているものと比べますと、あれ、こんなに現代音楽的だったかな?と思うくらいですが、どうやらテンポによってそれは印象が変わってくるようで、そこにもまたこの曲が本来持っている魅力があると思います。一応、第2番はスクリャービンの影響を受けているといわれますが、第1楽章は第1番とそれほど差を感じません。第1番を作曲した時から、ワーグナーだけでなくスクリャービンの影響を受けていると想像できます。ただ、第1番と比べますとより後期ロマン派の最後、つまりリヒャルト・シュトラウスなどの音楽に近いものを感じるのは事実です。
文化というものは面白いもので、本場からすこし離れた場所でいろんなものと混ざり合い、素晴らしいものができる場合があります。ポーランドもそうではないかと思います。少なくとも、今まで聴いてきた、ショパン、ヴィエニャフスキ、ルトスワフスキ、そしてこのシマノフスキともに、いろんな作曲家、特に挟まれているドイツとロシアという国の文化の影響を多大に受けながら、自分の自我を確立していくという点に、私たち日本人に共通するものをどうしても感じてしまいます。
おそらく、ポーランドが親日国であるというのはその点と密接に絡んでいるでしょう(もちろん、ロシアとの関係で言いますと日露戦争における日本海海戦もそうなのですが)し、私たちはもっとポーランドとの関係を考えてゆく必要があるのではないかという気がします。
そんなことすら、シマノフスキの音楽は考えさせてくれます。
当面、ポーランドの作曲家にはまりそうです。
聴いているCD
カロル・シマノフスキ作曲
交響曲第1番ヘ短調作品15
交響曲第2番変ロ長調作品19
カロル・ストリージャ指揮
ポーランド国立カトヴィツェ・フィルハーモニー管弦楽団
(ナクソス 8.553683)