今日の県立図書館所蔵CDは、ベートーヴェンのピアノソナタの第8集です。ピアニストはこれまで通り山根弥生子さん。収録曲は第28番と第29番「ハンマークラヴィーア」です。
これを借りたときの感慨といったらなかったです。やっと、「ハンマークラヴィーア」が借りられた、と思うと・・・・・
マイミクさんの演奏を聴いて以来、このブログでも何度も言及してきたのが、「ハンマークラヴィーア」です。今聴きましても、ベートーヴェンのピアノソナタのうちでも、頂点にふさわしい一曲のように思います。
勿論、これで最後ではなくさらにベートーヴェンは31番まで作曲するわけですが、規模および構成、そして音楽性ともにぬきんでているのがこの「ハンマークラヴィーア」であるように思います。もちろん、以後の3曲もすばらしいですが。
この曲ほど、一番最初に聴いた演奏に引きずられながらも、それにこだわることなく聴けるようになったものはありません。それはもしかすると、私にとっては山根さんのほうが好みだったのかもしれないな、と思うからです。
もともと、私はそれほど人口に膾炙する「名演」が好きなわけではないのです。職人気質というんでしょうか、そんな演奏の方がすきなのです。山根さんはそのストライクゾーンど真ん中だった、と今は感じています。
前に一曲ずつ書いた時にも述べたと思うのですが、淡々とした中で、壮大な世界が広がってゆく・・・・・彼女の演奏の魅力はそこに尽きると思います。第1楽章冒などは、何度か聴きますと派手さはないのですがそれがとても説得力をもってだんだん心に響いてくるという印象に変わってゆきます。まるで、その前の28番が前奏のような・・・・・
この一枚の構成は単に番号順というだけではないような気すらしてきます。第28番を前奏として、ハンマークラヴィーアを聴いて欲しいのかもしれません。勿論、このふたつはまったく別な曲であるわけですが・・・・・・
これも、全集の一つの聴き方ですし、また魅力であるように思います。
それゆえ、今私は他の演奏家はどう演奏しているのだろうかと興味も向いているわけです。これが、いわゆる「名演」といわれるものを最初に聴いてしまっていたら、恐らくそれで満足してしまって、それより先の進歩はなかったのではないかと思っています。
こういう演奏に私は出会う運命だった・・・・・そんな気がしています。
ダイナミックさという点においては、マイミクさんの演奏のほうがはるかにすばらしい演奏であったことは事実です。今でも思い出しますと胸が熱くなります。でも、それを思い出させてくれるのが、山根さんの演奏というわけです。それはそれですばらしいことです。
山根さんのような淡々とした中に感動を呼び起こす演奏は、さらにそこから広がりがあると私は生きてきて思っています。
また、どなたかのリサイタルで「ハンマークラヴィーア」は聴きたいですね。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノソナタ第28番イ長調作品101
ピアノソナタ第29番変ロ長調作品106「ハンマークラヴィーア」
山根弥生子(ピアノ)
(ADAM ACD0040)