かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ODE AN DIE FREIHEIT ベートーヴェン 交響曲第9番 1989年12月25日 ベルリン

今回のマイ・コレは、歴史的演奏を取上げます。バーンスタインがベルリンで第九を振った、あの有名な演奏です。

まあ、このCDは恐らく持っている人は多いと思いますので、その内容等を詳しく語るのはやめましょう。ただ一言、参加者の「気持ち」というものが伝わってくる演奏だ、とだけ申しておきます。

それ以上、この演奏は一体どういえばいいのでしょう。形容のしようがありません。かなり重々しい演奏であることは確かです。しかし、それが荘厳さを持ち合わせているのも確かです。しかし、そこに批評が分かれる演奏でもあろうかとおもいます。おそらく、プロの批評家の方は全く評価しない演奏でしょうし・・・・・

しかし、何度か第九を歌っている私としましては、音の最後の処理の仕方などから、演奏者がかなりこの演奏に関して気持ちを込めているというのが伝わってくる演奏だと思っています。それはこれを初めて聴いたときには気がつかなかった点をたくさん含んでいます。

やはり、この曲は歌ってみるものだと、今つくづく思います。

このCDを買ったきっかけは、やはりベルリンの壁が崩壊したことが一番です。父が当時とある電機メーカーの技術部門の取締役で、ヨーロッパへ出張したおり、ベルリンの壁をお土産に買ってきてくれたこともあり、とても関心を寄せていました。もともと、当時から時事には関心を持っていましたし、何よりもショスタコを買ってしまうくらいの青年でしたから、この演奏に興味がないはずはありませんでした。

この演奏は、実はその前にFMで放送されていて、私はそこで初めて聴いています。記憶が確かならば、それは確か生放送だったと思います。その興奮がCDになると聞き、即決で買ったのがこの一枚です。

ものすごくテンポが遅い演奏です。速いテンポで演奏するのがはやっていた当時とはいえ、70分前後では演奏していたものがほとんどだった当時でも珍しかったくらい遅く、今ではもう考えられない遅さでしょう。特に、第4楽章はほぼ29分かかっているのですから!

全体でも77分とほぼ80分になる演奏で、これを私はカセットにダビング(これも死語ですねえ、もう)したのですが、90分テープでも入らないので苦労しました。結局、これは110分テープというものでダビングしましたが、テープの特性上持ち歩けるものではありませんでしたので、今でも音質はかなりクリアです(テープがそれだけ劣化していませんから)。

この原稿を書いている今はCDを聴いていますが、今ならばmp3ですから時間もそれほど気にしなくても澄みます。しかしそれだけこの演奏は歴史になったといえるでしょう。

ベルリンの壁、崩壊・・・・・当時、私は20歳。一番多感な時期に、昭和天皇崩御も含め、ものすごい歴史的大事件に遭遇することになります。それは、青年の私をいやおうなしに政治や経済というものに興味を持たせることになりました。それがなければ、今までこのCDを持ち続けているか、果たしてわかりません。実際、これより良い演奏は山ほど聴いています。でも、どうしてもこの一枚は捨てられません。

勿論、全てのCDを捨てられるような人間では私はありませんが、それでもこのCDだけはどうしても捨てることができませんでした。これを捨てるのなら、それは私の命を取ってからにしてくれ!といいたいところです。

このCDの演奏のすばらしい点、それは寄り合い所帯なのに、オケのアンサンブルがすばらしいということです。この第九という曲に込めた、オーケストラの気持ちがそれで充分伝わってきます。

そして、合唱。フロイデをフライハイト(自由)に置き換えて歌われていますが、それが何とも音楽と合うのですね。勿論、ベートーヴェンはフロイデでリズムを作っているのですが、それがフライハイトでも合う・・・・・もしかすると、ベートーヴェンはもともとフライハイトで歌詞をつけたかったのでは?と邪推したくなるくらいです。

だからこそ、「自由」という言葉が響いてくる・・・・・そんな演奏です。やはり、プロはすごいです。

私も、買った当時は興奮で聴いていましたが、時間が経つにつれ、違う点に注目して聴くようになりました。それが、アンサンブルなのです。実際に自分が歌ってみると、それがとても大変だと感じるのが第九です。それを、寄り合い所帯のこの合唱団がいとも簡単にこなしている・・・・・

その後、私も何度も寄り合い所帯でうたうことがありましたが、そのたびにこの演奏を思い出すようになりました。また、この演奏を引き合いに出して合唱団員を鼓舞することもしばしばでした。彼らの集中力を、私たちも見習おう、必ずできる、と。

このCDと出会わなければ、恐らく私は合唱という世界に足を踏み入れることはなかったのではないのだろうか、と思います。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
ジューン・アンダーソン(ソプラノ)
サラ・ウォーカー(メッゾ・ソプラノ)
クラウス・ケーニヒ(テノール
ヤン=ヘンドリク・ロータリング(バス)
バイエルン放送合唱団
ベルリン放送合唱団員
ドレスデンフィルハーモニー児童合唱団
レナード・バーンスタイン指揮
バイエルン放送交響楽団
ドレスデン国立管弦楽団
ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団
ロンドン交響楽団
レニングラード=キーロフ歌劇場管弦楽団
パリ管弦楽団
(ドイツ・グラモフォン F25G 29131)