かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン ミサ曲全集2

今週の県立図書館所蔵CDはハイドン特集です。といっても順番でそうなっただけですが^^;

今回は、ハイドンのミサ曲全集から第2集、第1番「ミサ・ブレヴィス」と第11番「天地創造ミサ」です。指揮はサイモン・プレストンとジョージ・ゲスト、オケはエンシェント室内とアカデミー室内です。

つまり、このCDではなんと古楽とモダンのオケが同居するという、大変珍しい構成になっています。通常、これはやりません。なぜならば、ピッチが古楽とモダンでは微妙に違うので、聴き手が混乱するからです。

ところが、今聴いてみましてもその混乱を感じません。これは私としてもとても珍しく、確かに初めて借りて聴いたときにもそれは感じなかった記憶があります。

録音年代としてはモダンの演奏である天地創造ミサのほうが古いのですが、そんなことをまったく感じさせません。ただ、もしかするとそのあたりに気にならない、つまり混乱しない理由がありそうです。これを語り始めますとはっきり言いましてオーディオの話題になりますので、脇において・・・・・

今回は、ハイドン初期のミサ曲と晩年のミサ曲とが同居しています。時間配分のせいでしょうが、ハイドンの作品の変遷を簡単ながら聴くことができる内容になっています。

そこで私が感じましたのは、いやあ、本当にモーツァルトはすごい仕事をしたなあ、ということです。

え、ハイドンのミサ曲でしょ?って?そうですよ、今回はハイドンのミサ曲です。ただ、ここではミサ・ブレヴィスが取上げられていますね。以前、モーツァルトのミサ曲を取上げましたときに、時間のことを述べたと思いますが、実はハイドンはすでにミサ・ブレヴィスでモーツァルトが課せられた課題をいとも簡単にこなせて見せているのです。

ハイドンが宮廷音楽家なので軽く見る風潮もありますが、私はこのことはすごいことであると感じます。このハイドンのミサ・ブレヴィスほど楽譜が見たいと思ったものはありません。実際、とても簡素でありながら作品としてはきちんとまとまっていますし、これは楽譜を見たいなと思います。ヴォーカルスコアでもいいので、いつか見てみたいですね。

わずか13分ほど・・・・・モーツァルトがそれをこなすようになるには、かなりの苦労の末です。それを、ハイドンはいとも簡単にやってのけている・・・・・

このことを評価する向きは少ないですね。私はハイドンが宮廷音楽家だったからこそ、それが可能だったと思うのです。相手のオーダーにきちんとこたえる、それができたからこそハイドンは作曲家が虐げられた時代に、裕福だったのです。その上、音楽はすばらしい・・・・・

ただ、音楽性ということからしますと、もしかするとモーツァルトのほうがすばらしいかもしれません。しかし、このミサ・ブレヴィスのような構成の音楽もモーツァルトは同じミサ・ブレヴィスでも書いていますし、その点を考慮しますと、ハイドンのミサ曲はもっと評価していいのでは?と素人ながら私は思います。

その一方で、天地創造ミサでは45分ほどの堂々たるミサに仕上げています。つまり、ハイドンはながーいミサも、とても短いミサも、お手の物だったというわけなのです。その点はもっと評価していいのでは?と思います。

あまりにもモーツァルトの音楽性がすばらしいので、ハイドンがかすんでいるという側面はあると思いますが、だからといってハイドンを捨て置いてしまうのはいかがなものかと私は思います。この演奏を聴きますと、いっそうその思いは強くなります。

実際、私がハイドンのミサ曲が聴きたいと思ったのは、実はモーツァルトが原因です。彼はハイドンとは同時代ですし、実際御互いの音楽を聴いてもいます。当然、モーツァルトハイドンの曲を研究していますし、ハイドンモーツァルトの曲を研究しています。実はこの二人というのはそういう間柄です。

であれば、やはりモーツァルトだけ聴いているということほど、逆に偏向していることはないのではないか、という思いは数年前から持っていました。その望が実現されたのが、このCD群なのです。

確かに、モーツァルトのような派手さはないですし、音楽的にもすばらしい転調があるわけではありません。でも、冗長さというものがないのです。これはすばらしいことです。サリエリの時に多少冗長さは感じられますがと述べましたが、それがハイドンではないのです。

だからこそ、これは楽譜が見たい、そう思ったわけです。そういう作曲家というのは、なかなかいないのではないかという気がします。

ハイドンのこの作品が、逆にモーツァルトのすばらしさを引き立てていますが、それは実はハイドンの音楽性のすばらしさを証明するものでもあるのではと、私は思います。

CD店でもなかなかハイドンのミサ曲全集などがない昨今に、神奈川県立図書館視聴覚資料室が果たしている役割は非常に大きいのではないでしょうか。

追記:先日、山野へ参りましたら、宗教音楽全集という形で様変わりして国内盤が出ていました。うーん、それなら、欲しかったな・・・・・

まあ、また廃盤になるかもしれませんしね。だからこそ、図書館の果たす役割って大きいのです。



聴いている音源
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
ミサ曲第1番ヘ長調「ミサ・ブレヴィス」Hob.XX�U.1
ミサ曲第11番変ロ長調天地創造ミサ」Hob.XX�U.13
ユディス・ネルソン(ソプラノ、ミサ・ブレヴィス)
エンマ・カークビー(ソプラノ、ミサ・ブレヴィス)
エイプリル・カンテロ(ソプラノ、天地創造ミサ)
ヘレン・ワッツ(コントラルト、天地創造ミサ)
ロバート・テア(テノール天地創造ミサ)
フォーブス・ロビンソン(バス、天地創造ミサ)
オックスフォード大聖堂聖歌隊(ミサ・ブレヴィス)
ケンブリッジセント・ジョンカレッジ聖歌隊天地創造ミサ)
サイモン・プレストン指揮
エンシェント室内管弦楽団(ミサ・ブレヴィス)
ジョージ・ゲスト指揮
アカデミー室内管弦楽団天地創造ミサ)
(元CD:ロンドン 448 520-2)