さて、その月に私が買いましたCDをご紹介する「今日の一枚」シリーズ、しばらく三月ほど前に10年来の友人より買いましたCDをご紹介していますが、今日はブルックナーの第4番「ロマンティック」です。
このCDはカール・ベーム指揮、ウィーン・フィルです。
実は、私はこの方からは既にFM音源でこの曲はいただいており、その演奏はチョン・ミュンフン指揮、フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団ですが、それと比べますと、なんとまあ速度が遅いことか!
どちらでもいえることなのですが、金管の鳴らし方がうまいです。こう聴いてみますと、やはり2番での違和感は、カラヤンの音楽性に基づくものではないかと思います。
いい例が、高校野球のコンバットマーチだと思うんですね。ちょうど、今年の高校野球が終わりましたが、例えば、バッターが打席に立っているときは、金管はそれほど強く鳴らしません。フォルテのままです。大きな音で聴こえるのは、金管ばかりになっているためです(普通のブラスバンドよりも人数が多い場合さえあります)。それが、ヒットで出塁!となりますと、それは一気にフォルティシモになるだけでなく、アインザッツが鋭くなります。
有名なのは、天理高校ですね。あのブラスバンドは全国的にも高いレヴェルで有名です(野球だけではないのです)が、その演奏を聴いていますと、バッターボックスにいる場合、出塁した場合、タイムリーが出た場合で微妙に表情が違うことに気がつきます。
特に、タイムリーが出ますと、フォルティシモでアインザッツを鋭くし、その上何回も繰り返します。あれは、相手選手にはショックでしょうね。一方、味方へは勇気を与えます。
では、バッターボックスでは?そう、選手に自身を与えるべく、神々しさを演出するためそれほど音は鋭くありません。やわらかい音をアインザッツをそろえることで、選手に「期待しているぞ!」というメッセージを送るのです。
私は、ブルックナーの金管はまさしく、その天理高校のバッターボックスに選手が入っているときの状態でのブラスバンドの応援の状態で金管を鳴らさないといけない、と思います。この演奏では、それが徹底されています。さすが、ベームです。勿論、オケがウィーン・フィルというのもありますが、私は実はこの曲を初めて聴いたのはチョンとフランス国立放送フィルの演奏でしたので、オケの優劣ではない、と思っています。まさしく、指揮者がどれだけ気を配っているかに尽きる、と思います。
特にそれが出るのが、第3楽章です。強く、しかし鋭くはしない。それが、まるで日の光が差し込むような、神々しい世界を作り出すのです。
もともと、このロマンティックは第1楽章が特に印象的ですが、それもホルンの印象的なやさしい音で始まります。単に弱い音でもないですし、また小さい音でもありません。やさしくかつしっかりとした、それでも小さい音を鳴らさなければいけません。そこが、指揮者の力量ではないか、と思います。
演奏としてはベームですから70年代ですが、そんなことはまったく問題になりません。デジタル録音でないのに世界の広がりを表現する力量に、ただただ敬服するだけです。
聴いているCD
アントン・ブルックナー作曲
交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(原典版)
カール・ベーム指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(CC-1074)