かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今日の一枚:ブルックナー交響曲第5番変ロ長調(原典版)

さて、今日はブルックナーの第5番です。ハインツ・レーグナー指揮、ベルリン放送管弦楽団です。シャルプラッテンから出ているCDで、つまり旧東独ですね。

旧東独というのは、特にベルリンの壁が崩壊する直前くらいにとてもいい演奏が続出していて、特にベートーヴェンでそれは顕著なんですが、このブルックナーもすばらしいです。

この曲につきましては、ウィキペディアの以下のページを参照ください。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC5%E7%95%AA_%28%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%BC%29
ここで、モーツァルトのレクイエムが出てくるのですが、確かに教会風なのはわかるのですが、スコアを見てみないと、どこにモーツァルトが隠れているのか、よくわかりません。ただ、ブルックナーが敬虔なキリスト教徒だったことを考えますと、宗教音楽において、モーツァルトを尊敬していたというのは特に不思議なことではありませんし、そもそも、和声学のオーソリティとして、モーツァルトの占める地位というのはヨーロッパにおいてはベートーヴェンよりも上です。

ベートーヴェンの音楽に感動すれば、おのずとモーツァルトへたどり着く・・・・・・それが、ヨーロッパにおいては常識なのです。

第1楽章を聴いて見ますと、これまでと比べますと短調への転調が多く、しかもそれがしめる割合が多いのに気がつきます。もちろん、今までも短調への転調は多くなされていますが・・・・・

ここまで教会風に聴こえる曲はなかったように思います。

とにかく、モーツァルト専門家でもあるアーノンクールが解説しているわけですから、私ももっと聴き込んでみようと思います。私もモーツァルトのレクイエムは大好きなので。

さて、この演奏は旧東独であると冒頭述べましたが、特に70年代まではクラシックにも東西冷戦の影が投影されており、その演奏の質を東西両陣営が競ったものです。その東側のひとつの頂点が、80年代東独における演奏です。それはもともとの高い教養と精神性が基礎となり、西側に負けずとも劣らぬ名演奏をつむぎだしました。

そもそも、この演奏がなされた1983年は、その後に起きるベルリンの壁崩壊へ向けてのいろんな伏線があった時期であり、演奏にも西側に兎に角対抗するというような堅苦しさがないのが好感持てます。録音はベルリンの放送局内になっていますので、宣伝の意味合いはかなり高いですが・・・・・

しかし、このようなブルックナーの音楽を演奏するということが、その後ベルリンの壁崩壊へつながっていったように、私には思えるのです。母国の作曲家を大事にするその姿勢が、やがて自由を求める運動へと昇華していきます。そして、東独はなくなり、統一ドイツが誕生します。

そういった時期をリアルで見ていますので、このような演奏には感慨を覚えます。

技術的にも、金管の鳴らし方も70年代のベームに負けないですし、レーグナーの意識の高さが見て取れます。そして、それに答えるベルリン放送管弦楽団の技量の高さ。

もちろん、このほかにもすばらしい演奏はたくさんあるとおもいます。コアなブルックナーファンからすればこの演奏はたいしたことではないのかもしれません。しかし、自由がない中で、自国の作曲家に対する真摯な姿勢は、特筆に価するのではないかと思います。

それは、演奏からびんびんと伝わってきます。かみ締めるほど味がある、そんな演奏です。


聴いているCD
アントン・ブルックナー作曲
交響曲第5番変ロ長調原典版
ハインツ・レーグナー指揮
ベルリン放送管弦楽団
(ドイツ シャルプラッテン TKCC-30616)