東京の図書館から、2回シリーズで取り上げております、グレン・グールドがピアノを担当するヒンデミットの金管ソナタの第2集です。
今回収録されているのは、テューバ・ソナタ、アルト・ホルン・ソナタ、トロンボーン・ソナタの3つ。アルト・ホルン・ソナタが1943年、トロンボーン・ソナタが1941年、そしテューバ・ソナタが1955年の作曲。ウィキペディアでヒンデミットを検索しますと、作品一覧ではアルト・ホルン・ソナタが出てきませんが、実はウィキペディアではアルト・サクソフォン・ソナタが該当曲です。アルト・サクソフォンのみならず、アルト・ホルン、ホルンでも代用可能なのだそうです。そのため、このアルバムではアルト・ホルンが使われているようです。
まあ、ソリストはフィラデルフィア管弦楽団のメンバーですから、アルト・サクソフォンでも良かったのかもしれませんが、ちょうどアルト・ホルンならいた、というところなのでしょう。しかも、録音年代は1975年と76年なので、オーマンディが音楽監督をしていた時代です。ピアニストのグールドだけではなく、金管楽器のソリストもまた、実力派ぞろいなんですね。
1曲目のテューバ・ソナタは、第1楽章冒頭が諧謔的。何かをあざわらうかのような雰囲気です。全体的にも諧謔的です。他の2曲は、その作曲年代をあまり感じさせない雰囲気で、不協和音が絶妙に使われており、生命力あふれる作品です。ヒンデミットとすれば、自由な創作ができることの喜びのほうが勝っていたのかもしれません。
グレン・グールドという才能と組むにあたって、たんに古典派を取り上げるのではなく、どこか人間の内面に鋭く迫るような雰囲気を持つヒンデミットのこれらの作品が選択されたのかもしれません。演奏からも、作品を存分に味わっている様子がうかがえます。それにしても、ヒンデミットは特色ある作品が多いですが、この管楽器のソナタも独自性が感じられ、つい引き込まれてしまいます。
以前の古典派を中心とする調性音楽ばかりを聴いていた自分がまるで別人のように感じられます。とはいえ、正確にはヒンデミットのこれら作品は一応調性音楽ですが・・・それでも、不協和音が支配する作品を、私は聴くようになったなあと思います。携帯音楽プレーヤーに入れてまではさすがにないんですが、しかし図書館で借りるときに全く嫌な感覚が亡くなりました。むしろ「どんな音楽なのだろう」とワクワクします。それはやはり、それぞれの演奏に魂がしっかり宿っているゆえであると考えます。食わず嫌いは本当にダメだよなあと、この演奏を聴いても痛感させられます・・・
聴いている音源
パウル・ヒンデミット作曲
テューバとピアノのためのソナタ
アルト・ホルンとピアノのためのソナタ
トロンボーンとピアノのためのソナタ
フィラデルフィア金管アンサンブル
エイヴ・トーチンスキー(テューバ)
メイソン・ジョーンズ(アルト・ホルン)
ヘンリー・チャールズ・スミス(トロンボーン)
グレン・グールド(ピアノ)
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