かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:マッケラスが降るディーリアスの「海流」とフロリダ組曲

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、ディーリアスの「海流」とフロリダ組曲を収録したアルバムをご紹介します。

ディーリアスはたまーに取り上げることがこのブログでもあるかと思いますが、今回取り上げるアルバムはディーリアス特集といってもいいもので、サー・チャールズ・マッケラス指揮、ウェールズ・ナショナルオペラ管弦楽団ほかの演奏になっています。「ほか」ということはオーケストラ以外も参加しているということになりますが、第1曲目に収録されているのが、「海流」です。

「海流」はディーリアスが1903~04年にかけて作曲した作品で、管弦楽作品とカテゴライズされますが私としては合唱作品とカテゴライズしたい作品です。最初から独唱と合唱が参加し、オーケストラとの協奏になっているからです。

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テクストがホイットマンの詩集「草の葉」の一説「海流」で、インスピレーションを受けたのではなくそのものを音楽化したものなので、声楽が入って当然ともいえます。とても抒情的な作品で、歌詞がわかるほうがいいなあと思いますが、とりあえずどんな内容なのかは、上記ウィキペディアで何となくわかるかと思います。抒情的なので評価は真っ二つに分かれるかと思いますが、様々な音楽を取り込み統合したディーリアスならではの世界だと思います。以下にウィキからディーリアスのページを挙げておきますが、バックグラウンドとしてアメリカにおける農場での経験があることは、作品に強く影響していると思います。

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一方「フロリダ組曲」は、まさにディーリアスの農場経験が詰まった作品だともいえるでしょう。組曲となっていますが交響詩とも言っていいだけの抒情性を持っており、海を題材にした「海流」とは一転、陸上を扱ったものになりますが、ディーリアスがフロリダの農園にいた1884~85年以降の1887年に発表されたことを考えると、「海流」以上に強い動機となったことは間違いないでしょう。

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フロリダという土地は、農場がある一方で半島ですから、当然海にも近い場所です。特にディーリアスがいたプランテーションがあったジャクソンビルは港湾都市でもあり、まさに農場と海がある場所です。

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このジャクソンビルには、プランテーションで働く黒人がいたわけで、そこで聴いた黒人霊歌だったり、あるいはそのほかの音楽だったりが存在したわけで、そんなごちゃまぜのまさにアメリカらしい社会が、ディーリアスの芸術に深く影響していることが、この2つの作品を聴きますと明らかになります。その一方、ディーリアスはイギリス人であり、そのうえで血筋としてはオランダ系です。そういった自身のバックボーンの複雑さも、ディーリアスの芸術に与えた影響は強いだろうと想像します。

振っているマッケラスは、そんなバックボーンも考慮に入れつつ、オーケストラを目いっぱい歌わせます。故に合唱と独奏が入った「海流」では見事な抒情性が見られますし、「フロリダ組曲」ではまるで風景が目に浮かぶかのような演奏になっています。単に美しいだけではなく、その美しさを際立たせてもいます。ソロはトーマス・ハンプソン、合唱はウェールズ・ナショナルオペラ合唱団なので、まさに「歌い上げる」という表現がぴったり。なのにそこに精神性すら感じられるんです。なんなる表層的な感じがしないんですね。「海流」では詩の行間を歌い上げるかのようですし、「フロリダ組曲」では美しい風景を見た感動が音楽を持って私たちに伝わってくるかのようです。その意味では、この2曲がまさに標題音楽であり、ベートーヴェンの「田園」に通底するものを持っていると言えるのではと、マッケラスが言っているかのようですし、私自身はそのマッケラスの意見に同調するものです。これがプロの仕事というものでしょう。

 


聴いている音源
フレデリック・ディーリアス作曲
海流
フロリダ組曲
トーマス・ハンプソン(バリトン
サー・チャールズ・マッケラス指揮
ウェールズ・ナショナル・オペラ管弦楽団、合唱団(リーダー:ジョン・スタイン、合唱指揮:アンドリュー・グリーンウッド)

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