かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買い物:晴オケの第九

今月のお買い物、今回は令和5年6月に銀座山野楽器で買い求めました、晴オケが演奏するベートーヴェンの第九のCDを取り上げます。

そもそも、銀座山野楽器へCDを買いに行くこと自体、もうないと思っていました。CDを買うとしてもおそらくディスクユニオンだろう、と。はい、まずディスクユニオン新宿クラシック館へ行っております。そこでなかったんです、旧ナガノ・チェンバー・オーケストラのベートーヴェン交響曲第4番と第6番のCDが・・・・・

そのため、ならば銀座山野楽器へ行ってみようと行ったわけなんですが、そこでもなかったんです。実は、全集はディスクユニオンにありましたが、今そう簡単に12000円とか出せませんよ・・・・・その値段にも新譜で買うことを考えたら安いんですけどねえ。はあ・・・・・

ではなぜ分売で買おうと思ったかといえば、実はいくつかは府中市立図書館にあるから、なんです。すでに第1番と第3番、第5番は借りておりリッピングしてあります(第2番と第7番もあることになっているのですが、常に貸し出し中になっており、おそらく誰かが借りてそのまま持っていらっしゃる可能性が高いです)。それについては将来取り上げることとして。なのでそれ以外の曲をCDで買っておきたいなあと思った、というわけです。そもそもは第九をハイレゾで購入してあり、なら全集をと考えたのがきっかけなのですが、そのハイレゾも第九と全集しかないんです・・・・・orz

ということで銀座山野楽器本店まで来たわけだったのですが、そこでもなかったというわけなんです。ですが、体の調子もよくない中でせっかく銀座まで来たのですから、いいものがあれば買ってもいいかな、と思いました。そこでふと棚に目をやると、ベートーヴェン交響曲のところにあったのが、晴オケの第九だったんです。

まず、晴オケとは何かを説明しましょう。東京都交響楽団コンサートマスター矢部達哉が率いる室内管弦楽団で、東京都中央区にある第一生命ホールを本拠とするオーケストラです。プロオケというべきなのかアマオケというべきなのかは微妙ですが、プロがオーケストラの垣根を越えて集まった室内オーケストラになります。正式名称は「トリトン晴れた海のオーケストラ」です。

第一生命ホールは、生命保険会社である第一生命の集会室として始まり、戦後はクラシック音楽のホールとして発展、その後建物改修のため閉鎖、晴海へ移転してクラシック専門ホールとして生まれ変わりました。その場所を「トリトンスクエア」というために、オーケストラの名称にトリトンが入っています(さらに言えば、「晴れた海」といのは地名の「晴海」)。小さめのホールですが、しかし音響は素晴らしくプロからアマチュアまで広く使えるホールです。私も一度アマチュア合唱団のコンサートで足を運んだことがあります。

www.dai-ichi-seimei-hall.jp

このトリトン晴れた海のオーケストラ、略称して「晴オケ」ですが、指揮者がいません。日本版オルフェウス室内管弦楽団といってもいいと思います。なので矢部氏も指揮者ではなくあくまでもコンサートマスターにすぎません。第一生命ホールの公演案内を見ても、指揮者の記載は一切ありません。私もアマチュアオケで一つくらい聞いたことがあったかなというくらい、日本では見られない団体だと思います。その晴オケが、第九をやろうというのですから・・・・・

ですが、実はこのCDを見て比較的即決で買い求めたのですがそれには理由があり、この演奏、実はすでにNHKで見ていたからなんです。ドキュメンタリーも放送されましたし毎週日曜日の「クラシック音楽館」でも放映され、見たという方も多いのではないでしょうか。ですがテレビの音声というのはデジタルとはいえスピーカーも貧弱なため、ならばCDで聴いてみるのもいいなあと思い、買い求めました。

ですがその2日後、先日お話ししたようにPCの調子がおかしくなりネットが遮断、ついに回復しなかったのです。そのため急遽PCを買い替えたのですが、windows11だったことから、使う予定だったソニーのHi-Res Audio Playerが動作しません。そのためまずはついているメディアプレイヤーで聴いたのですが、音は以前よりも断然よくなりクリアになったのですが、どこか音の広がりがないんです。これだとテレビと大して変わりないなあと思い、いろいろ試したのですがうまくいかず。最終的にはflacリッピングの上TuneBrowserで192kHz/32bitにリサンプリングの上聴いています(実際は使っているスピーカーであるソニーのSRS-HG10が192kHz/24bitまでしか対応できないのでbitは24ですが)そのほうが細かいアンサンブルが聞き取りやすくなります。

そのうえで聴いてみますと、晴オケさんのレベルの高さを感じざるを得ません。プロだから当たり前だという意見もあるかもしれませんが、第九のような大編成の、しかも第4楽章からは合唱団も入るような作品で、指揮者なしでみだれることなくアンサンブルして、しかもアインザッツも強く秀逸というのは、そうそうあることではありません。練習から団員が相互でコミュニケーションしておかないと難しいんです。ドキュメンタリーを見られた方はご存じかと思いますが、本当に細かいところを意見を交わすことで一致させ、一人ひとりがおのおのの音を聞き取りながら演奏しているからこそ実現されていることなんです。

もっとひとことでいえば、団員同士で表現においてコンセンサスを得たうえで演奏している、ということです。指揮者がいないオーケストラにおいて、この「コンセンサスを得る」というのは非常に重要だと思います。いや、指揮者がいたとしても重要であり、いなければコンセンサスを得ることは絶対条件だと言えます。それを晴オケさんは当たり前のようにやっているからこそ実現した演奏であると言えます。

実際、テレビで見たときですら、そのレベルの高さに感動し、CDがあれば聞いてみたいとは思っていたのです。それが思いがけない形で実現しようとは・・・・・しかもです、この演奏、第4楽章vor Gott!の部分ではvor1拍に対しGott!は4拍しかありません。つまりは、変態演奏!なのに全く違和感ありません。むしろそれが自然に聴こえてしまうんです。ウィーン・フィルは指揮者ではなくコンサートマスターに弦の高さなどをそろえるといいますが、晴オケさんもまさしくコンサートマスターにそろえつつ、おのおのがおのおのの音を聴き、コンセンサスを得たことを実行していくという姿が豊かな「歌」となって鳴り響き、説得力を持つ演奏になっています。まさにベートーヴェンが第九という作品で表現しようとした「自由・平等・博愛」や連帯といったことを、演奏で実現させたと言えるでしょう。

今年の秋からは再びベートーヴェンツィクルスが、第一生命ホールで始まるといいます。おそらく千秋楽は再び第九となるでしょう。この演奏では合唱団である東京混声合唱団はマスク着用で歌っていますがそれも全く気になりません。ですが再びの千秋楽では、マスクなしの演奏が期待できることでしょう。その時はできれば聴きに行ってもいいかも、とは思っています。プロオケなので値段は張りますが・・・・・聴きに行きたいと思わせる、魅力的なオーケストラだと思います。

 


聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
澤畑恵美(ソプラノ)
榊美智子(メゾソプラノ
福井敬(テノール
黒田博(バリトン
東京混声合唱
トリトン晴れた海のオーケストラ
キングレコード KICC1591)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。