かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:横浜シティ合唱団第16回定期演奏会を聴いて

久しぶりにコンサート雑感をお届けします。今回は平成28年8月20日に聴きに行きました、横浜シティ合唱団の第16回定期演奏会をご紹介します。

このコンサートへ行くきっかけになりましたのは、先日セタガヤ・クォドリベットさんのコンサートを、以前入っていた合唱団の旧友と聴きに行ったことがきっかけです。

たしか、その時パンフレットが入っていたように記憶しています。じつは8月20日は、別の団体を川崎に聴きに行く予定を入れていました。しかもそれは第九・・・・・

通常、第九が入っている場合、よほどのことがないと計画を変更することは、私としてはありません。第九は私にとって、霊的で魂の音楽だからです(かつホールは、歌ったことのある川崎市教育文化会館)。しかし、今回は第九を脇に置いてでも、この団体は聴きに行きたいと思ったのです。なぜなら、プログラムがバッハのロ短調ミサだったから、です。

ロ短調ミサといい、或は二つの受難曲といい、私にとってはベートーヴェンの次に魂が揺さぶられる作曲家と言えば、バッハです。ちょうど旧友が団長さんを知っているという事で、チケットがもらえるなら是非にと思ったのです。それは、どこの団体もチケットを売るのには苦労しているからです。同じ仲間として、何かお手伝いができればと思い、第九ではなくロ短調ミサを選んだのでした。

幸いなことに、チケットは余っており、旧友経由で手に入れることができました。ホールは、横浜みなとみらいホール大ホール。中大オケぶりのMM21地区です。

なぜ、この合唱団のチラシがセタガヤ・クォドリベットさんのプログラムに入っていたかと言えば、指揮者が一緒なのです。今売出し中のソリストで指揮者の、青木洋也です。

青木先生は指揮だけではなく、この日はアルトも担当しており、セタガヤ・クォドリベットさんと同じスタイルを横浜シティ合唱団でも貫き通しています。素晴らしいのは、セタガヤ・クォドリベットさんよりも団員数が多いにもかかわらず、アンサンブルが素晴らしかったことです。

アンサンブルだけではありません。オケは横浜シティアンサンブルで、BCJなど古楽オケで活躍するソリストが集まって編成されたオケです。ありていに言えば、古楽オケなのです。

普通のアマチュア合唱団が、古楽オケを使う時代になったかと、正直感心しきりでした。しかも、そのレベルが高い!

元々、横浜シティ合唱団さんは神奈川フィルを使うなど、モダンオケとの共演だったのですが、指導者が青木氏に代わってから、オケは古楽になったそうです。その決断は素晴らしいと思いました。通常、古楽のピッチを嫌う人も多いのです。ご多分に漏れず、横浜シティ合唱団さんも平均年齢は比較的高そうです。それでも古楽オケを選択した決断を、私は断固支持します。

横浜シティ合唱団
Yokohama City Choir
http://yokohamacitychoir.web.fc2.com/

最初のキリエもなんら問題なく美しく、全体的にどこかアラを探そうにも、何ら見当たらないほど素晴らしく、何を書いていいのか見当たらなくなりますが、この演奏会の特徴は、ソリストが合唱団と一緒に歌うというスタイルを採ったと言う点です。それはある意味、以前このブログでもご紹介した、ヘンゲルブロック指揮の演奏を彷彿とさせました。

マイ・コレクション:ソリストがいないロ短調ミサ
http://yaplog.jp/yk6974/archive/724

このエントリで、私はこう述べました。

「では相当演奏はひどいんでしょうねというと、その真逆です。ソリストがいるよりも私は断然この演奏が好きです。合唱団と器楽、そしてソリストのバランスが絶妙であり、この曲が本来持つ美しさというものをくっきりと浮き上がらせています。ソリストが別にいる演奏は、私はついそのソリストばかりに注目してしまうきらいがあるように思います。それは別に悪いことではありません。古典派以後はそういったヴィルトォーソを聴くということがもてはやされた時代ですし、それに適った曲が書かれているからです。しかしバロックはそういった時代ではないのです。その点からすれば、この演奏はとてもバロックを知り尽くした演奏ということもできるでしょう。

そう考える私なので、当然この演奏に並ぶものはBCJくらいしか浮かびません。バランスというものにこだわったこの演奏は、以後この曲がカール・フィリップを通して古典派以後の作曲家に大きな影響を与えたことを、しっかりと教えてくれています。」

BCJではなく、なんと、アマチュア合唱団で現実のものとなるとは・・・・・

特にクレドの、まさにエントリで語った美しさが、そのままだったのです!何と素晴らしい・・・・・もう、絶句です。素晴らしすぎて。

そしてそれは、横浜シティ合唱団さんを通じて、ヘンゲルブロックが狙った意図を、私に明確化してくれたことでもありました。そもそも、上記エントリでご紹介したヘンゲルブロック指揮フライブルクバロック・オーケストラの演奏は、テレビで放送されたものの音声だけをCD化したものです。横浜シティ合唱団さんはそれを横浜の地で、再現して下さいました。それが、ソリストが合唱団と一緒に歌う、という事です。

実はこれ、簡単にできるようでできないんです。ソリストを入れるという事は、じつはトラを入れないということが前提になります。入れるにしても、バランスを考えることになります。

ソリストという「トラ(エキストラのこと)」が入るということは、それだけバランスが崩れることになります。さらに、パートがソリスト依存になることもあります。それを防ぐ唯一の方法は、合唱団のレヴェルを上げることです。つまり、横浜シティ合唱団さんはそれだけ、実力がある合唱団である、という事を示しているのです。

虎が入っているから上手なのは当たり前と思うかもしれません。でもそんなことはありません。自分の合唱団もそうでしたし、他の合唱団でも散々、トラが入っても何となくアラが見えてしまう演奏はいくらでも聴いてきています。その経験からしても、全く突っ込みようがない演奏なのは、横浜シティ合唱団さんのレヴェルの高さを意味するのです。

いやあ、合唱界のダズビと言ってもいいのではないかしらんと思ったくらいです。いや、それ以上かも・・・・・

バッハのロ短調ミサは前奏なしででる部分が幾つかありますが、その部分のアインザッツも抜群で、だからこそ、ソリストがトラで入ったとしても、何ら問題がないと言えるでしょう。

そして、ヘンゲルブロックの再現を横浜でやるという意味は、その合唱団の中に入ったソリストが、ではアリアやアリオーソではどう歌うのかと言えば、それぞれ前に出てくるんです。それを観ますと、ちゃんと音楽はその時間分用意されているんですね。バッハの作曲の手法を垣間見える部分です。単に聴くだけではなく、目で見て楽しめるコンサートになっていました。これはBCJに参加している青木氏ならではでしょう。こういう経験は素晴らしいですね〜。バッハの作曲手法を、自分たちで歌う中でっ経験できるなんて、そうそうあることではありません。こんな幸せな合唱団はなかなか他にはないではないでしょうか。

つまり、ヘンゲルブロックも、ロ短調ミサの各曲がどんな構造になっているかを、視覚化させたかったのだと考えれば、ソリストがなぜ合唱団員だったのかが明確になります。合唱団からソリストが出てくるのを見て、その間音楽を聴けば、判る人はわかるからです。あれ、これはもしや、ベートーヴェンの「英雄」のホルンと一緒か、と。

ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」の第1楽章には、ホルンを交換する部分があるのですが、近代的なバルブが付いたホルンではなんら問題がありません。ところが、ベートーヴェンが作曲した時代は、ナチュラル・ホルンしかないので、途中で交換する必要がありました。ベートーヴェンは主題展開部でホルンを休ませる部分を作り、ホルニストが交換する時間分を取っているのです。バッハも同様に、ソリストが前に出てくるだけの時間を前奏として作曲している、という事なのです。それが体感できるというのはなかなか他の合唱団では経験ができません。

本当に日本にはすごい合唱団が綺羅星のようにあるなあと思います。勿論、海外の団体も素晴らしいですが、日本の団体も素晴らしいですよ!横浜シティ合唱団さんはお勧めですし、また私自身、次の演奏会も行きたいと思います。

次回は来年11月4日、やはり同じみなとみらいホールで、メンデルスゾーンの「エリヤ」とのことなので、楽しみにしたいと思います。「エリヤ」は今、私が自分自身を重ね合わせている人物。そのドラマティックな音楽を、横浜シティ合唱団さんはどう表現するのか。私が持っているサヴァリッシュ/N響を超えるのか。興味は尽きません。




聴いてきたコンサート
横浜シティ合唱団 第16回定期演奏会
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
ミサ曲ロ短調 BWV232
清水梢(ソプラノ�T)
藤崎美苗(ソプラノ�U)
藤井雄介(テノール
中川郁太郎(バス)
青木洋也指揮、アルト
横浜シティ・アンサンブル
横浜シティ合唱団

平成28年8月20日、神奈川県横浜市西区横浜みなとみらいホール大ホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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